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2017年8月 4日 アーカイブ

2017年8月 4日

和漢古書の書誌的巻数

こんにちは。AS 伊藤です。主に和漢古書を担当しています。

前回、和漢古書における「~篇」「~輯」などの「巻より大きなまとまり」について触れました。その「巻」ですが、現代書では「巻」は「冊」と基本的にイコールとして使われますが、以前述べたように、和漢古書ではまったく異なるものを指しますので、これはきっちり理解しておきましょう。
元来からすれば、中国や日本においても、図書は基本的にもともと巻物として誕生したわけで、巻物の場合当然ながら、「○巻」というのがイコール物理的にいくつある、ということを示していました。ところが、巻物から冊子に図書の主流が変わってきた際、この「巻」というのは物理単位と直接かかわらなくなりました。すなわち、もとの巻物の何巻分かを1冊に綴じることもありましたし、1巻分を複数に綴じ分けることもあったわけです。
そのようにして、「巻」は物理単位としては使われなくなったのですが、ただ著作のなかのまとまりを示す語としては使われつづけました。現代書で言えば、ちょうど「章」のようなものですね。
ただ「章」などとはやはり意味合いが違い、たとえば『類聚歌合』(るいじゅうたあわせ)という同じ書名で10巻本と20巻本とでまったく内容が違う、といったようなことも多々ありますので、和漢古書では、「全体が何巻から成っているか」というのは非常に重要な情報として、書名の一部として記録する慣習になっています。
NCRではこれを「書誌的巻数」と呼称しており、87年版改訂3版では「2.1.1.1A(古)和古書,漢籍については,書誌的巻数を,本タイトルの一部としてその末尾に,スペ-スに続けてアラビア数字で記録する。」と規定しています(改訂前はカンマ,スペ-スに続けて記録していました)。例示にあるように、「古今和歌集 20巻」などと書くほか、本体の通巻と別に「附録」とか「補巻」とかがある場合は「八家四六文註 8巻補1巻」といったぐあいに書きます。

前回触れたように、各巻の書名が途中で変わっても、合集や合刻でないならば、1書誌として扱い、全体の巻数を記録します。すなわち、タイトルを「遍照發揮性靈集 10巻」と記録した上で、「第8-10巻の巻頭の書名:續遍照發揮性靈集補闕鈔」と注記する、という具合になります。
逆に、巻数の表示が連続していても、合集あるいは合刻として扱うならば、それぞれの書名と巻数を数えて記録します。たとえば『儀禮經傳通解』『儀禮集傳集注』の合刻本で、版心の巻数は第1から第37までの通巻だったとして、タイトルの記録としては「儀禮經傳通解 23巻」「儀禮集傳集注 14巻」となります。

「巻」と同じ意味で、「輯・集・編・篇・回」などが使われている場合、そのまま同様に「4集」「10編」のように記録します。中国の明清のころの白話小説(章回小説)にその例が多いですが、「~巻~回」などとなっている場合、ともに巻数として「平山冷燕 4巻20回」のようにつづけて記入します。
「~集~巻」のように、巻より大きなもとまりを表わすものについては、前回見たように原則として書名の一部として扱うか、あるいは巻数と連動する部編名として扱い、「和説假名論語 前編3巻後編3巻三編3巻」という具合に、数字があっても漢数字のまま記入します(なお、この例は「和説假名論語 3編9巻」と書くことも可能です)。

巻頭の書名について述べたときに書きましたが、書名の記録において共通部分の抽出を行なった場合、「杜律集解 五言4巻七言2巻」のように、非共通部分は巻数と連動させて表記することができます(現物は『杜律五言集解』4巻と『杜律七言集解』2巻)。このとき、全体の巻数を記録する必要はありません。
同様に、巻数と連動する部篇名は「東華續録 咸豐朝100巻同治朝100巻」のように巻数の前に記録します。

全体の巻首・巻末に、内容のあるまとまった分量の記事が本文の巻数と別個に入っている場合、「首~巻」「末~巻」と記録します。もっとも、序・凡例・目次・跋のように本来存在して当然なものは、たとえ目次や版心に「首巻」「末巻」などと記されていてもふつう記録しません。ただし、それらが2巻以上ある場合、また複数冊のもので1冊がまるまるそれらに充てられている場合などは、「目録2巻」「序目1巻」などと記録します。
図版・表などは、内容のあるまとまった分量のものが本文の巻数と別個に入っている場合も、「圖~巻」「表~巻」と記録します。ただし、目録もしくは版心などに明記されていなければ、とくに必要が認められないかぎり記録しなくてよいです。
なお、現物では「附録」や「表」などが本体より前にあったとしても、書誌的巻数の書きかたとしては、あくまで本体の巻数を最初に書き、「桂洲先生文集 50巻首1巻年譜1巻」のように記録します。

本文に付随する性格のものが本文の巻数と別個に入っている場合は、「坿~」と記録することができます。「疇人伝 52巻坿近代疇人著述記」のような具合に書きますが、このとき、「近代疇人著述記」は内容著作として改めて注記しておいたほうがよいでしょう。上にあげた「図」「表」「附録」などで、それらが固有のタイトルを持つ場合なども同様です。
なお、「桂洲先生文集 50巻首1巻年譜1巻」のような場合も、「桂洲先生文集 50巻首1巻坿年譜1巻」のように「坿」を用いる書きかたもあり、どちらでもかまいません。冊子目録などでは、年譜のような伝記資料が含まれている場合、索引に副出するために「坿」を用いていることが多いようです。
また、本体と別個のものがひとまとまりとして付随している場合のほか、各巻末に「音義」とか「校勘記」とかいったものが附されているようなケースでも、「坿」を用いて「九章算術 9巻坿音義」のように書くことができます。

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