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2020年12月 アーカイブ

2020年12月28日

年末のご挨拶

データ部は本日が仕事おさめです。
昨年の今頃は、オリンピック・パラリンピックを楽しみにしていたというのに、まさか延期になるとは予想だにしておりませんでした。
新型コロナによる緊急事態宣言の影響で、このデータ部ログもしばらく休止せざるを得ませんでしたが、何とか再開してここまで更新できましたのは、皆さまの温かいご支援があってこそと思います。
本当にありがとうございました。

データ部ログの年内更新は本日が最後となります。
来年は、1月5日の火曜日から更新再開の予定です。
2021年は、何事もなく毎日更新できればと願っております。
皆さま、よいお年をお迎えください。

2020年12月25日

2020年の新設件名を振り返る~分類・件名のおはなし・107~

毎年恒例、12月の分類件名のおはなしは"今年新設した件名を振り返る"です。
(件名は、TRC MARCで件名標目を新たに採用したものという意味で用いていますので、NDLSHから採用したものも含まれています。)


離散数学
実験経済学
MaaS
フリースクール
ステレオタイプ
ロボット手術
アニマルウェルフェア

など、今年も多くの件名を新たに採用しました。
なかには

神棚

といったものも。
個人的に毎年ちょっと楽しみにしている動植物名では

じゃこううし
きばち
つのめどり
ガロアむし

パッションフルーツ
のらぼう菜

年々、件名に採用してはじめてどんな姿形かを知るものが増えています。


さて、今年はこの話題を避けては通れないでしょう。

新型コロナウイルス感染症

6月に新設しましたが、12月現在、実に313件ものTRC MARCにこの件名を付与しています。
医療・衛生の分類のもとだけでなく、他の分類のもとでも、例えば第1件名「租税特別措置」第2件名「新型コロナウイルス感染症」のように付与しています。


リモートワークに関する図書も多く出版され

遠隔会議

も新設しました。こちらは57件に付与しています。
ちなみに「テレワーク」は2017年に件名として使用を開始しましたが、今年になって67件のMARCに付与しました。

来年はどのような新主題の本が刊行され、どのような件名を新設することになるのか。
気持ちが明るくなるような件名もたくさん新設できることを願いながら過ごす年の瀬です。

2020年12月24日

荒野の果てに 夕日は落ちて

12月の木曜日は「いつも通りじゃなかった今年をふりかえって」をテーマにお届けしています。

毎年、翌年のカレンダーが発売される時期になると「早いなぁ!」と感じますが、今年はとりわけ早かった...。なんだか4月以降の時間がスッパリ飛んでいるような...。
でも、そう、思い返せば色々あったのです。ありすぎるほど。

とくに緊急事態宣言が出た4月から6月頃にかけては、毎日、毎週、変わっていく状況を見ながら対応を協議し、決断していく日々でした。会社でもテレワークが可能な仕事はテレワークで行いましたが、以前から本ブログでもご紹介しているように、MARC作成は「現物主義」が基本です。「実際に発売される本そのもの」を確認しながらMARCを作成するためには、どうしても出勤せざるを得ません。緊急事態宣言の間も新刊書の出版は続いていましたから、出勤人数をできるだけ少なくするように努めながらMARC作成を続けていました。

こうしたなかでは普段当たり前に思っていた「本が読者の手に届くまでの過程」に想いを巡らすことも多かったです。著者や編集者の手を離れたあと、印刷され、製本され、取次会社に搬入されたら在庫管理や出荷する人がいて、書店で販売する人がいて、それぞれの間には運搬する人がいる。本だけでなくネット通販で取り寄せる物も同じですが、多くの働く人の手を経て物が届くということの重みを実感した日々でもありました。

その後、夏から秋にかけて状況がすこし落ち着くなかでも、換気のための窓開けで虫に悩まされたり、一時期は落ち込んでいた出版点数も復調してきたけれどやっぱり内容はいままで通りではなかったり。マスク着用と毎朝の検温が習慣になり、仕事上ではオンライン会議が当たり前に行われるようになりました。また現在進行形で電子図書館の導入が急速に進んでいて、それに呼応して電子コンテンツのMARC作成が増えていることも大きな変化です。

そして気づけば12月。例年なら「師走だねぇ。慌ただしいねぇ」なんて言って過ごすのですが、もうずっと慌ただしく過ごしてきた今年は気持ちだけでも穏やかに過ごしたい...そう思って、今年の12月は「師走」ではなく「アドベント(待降節)」として過ごすことに決めました。気分を盛り上げるために紅茶のアドベントカレンダー(毎日違う種類の紅茶が入っている)と、お気に入りの洋菓子店のシュトレンも購入。日中はどうしても慌ただしく過ごしていますが、夕食後に、今日のお茶は何かな?とわくわくしながらゆっくりお茶をいれて、シュトレンを一切れ食べるのがホッと落ち着くひと時です。アドベントカレンダーは残り2日。今日と明日のお茶は何だろう?
そうしてアドベントのあとは、どうか多くの方が穏やかな年越しを迎えられますように。

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2020年12月23日

きょうのデータ部☆(12/23)

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手指消毒液が残り僅か...。
補充します。

2020年12月21日

和漢古書あれこれ ― 字書

こんにちは。AS 伊藤です。主に和漢古書を担当しています。

前回紹介した『爾雅』などは、字義によって分類した漢字の辞書ですが、漢籍の小學の書としては、このほかに、字形によって分類した「字書」と字音によって分類した「韻書」とがあります。
前者の代表格としては、以前にも紹介したことのある『説文解字(せつもんかいじ)』という書物があげられます。これは後漢の許慎(きょ・しん)の撰で、9353の漢字を、象形・指事・会意・形声・転注・仮借の「六書(りくしょ)」の原理によって、540部に分類して説明をほどこしたもので、漢字研究の最も基本的な文献になります。注釈書等も多く、「經部・小學類」のなかで「説文之屬」という、独立した属が設けられています。
この書物はもともとは15篇から成っていましたが、宋代に徐鉉(じょ・げん)という人が校訂して30巻としました。清代には段玉栽(だん・ぎょくさい)による詳細浩瀚な『説文解字注』(段注)が著され、漢籍整理の現場でよく見るのは、これに『部目分韵』『六書音均表』『説文通檢』『説文解字注匡謬』の4種を附刻したものです。
このほかにも、徐鉉の弟の徐鍇(じょ・かい)による『説文繋傳(せつもんけいでん)』40巻や清の朱駿聲(しゅ・しゅんせい)による『説文通訓定聲(せつもんつうくんていせい)』18巻などもしばしば目にします。

『説文』以外の字書は「各體字書之屬」に収められており、著名なものとしては『急就篇(きゅうしゅうへん)』『玉篇(ぎょくへん)』『大廣益會玉篇(だいこうえきかいぎょくへん)』『字彙(じい)』『正字通(せいじつう)』といったものがあります。このうち、『大廣益會玉篇』は、梁の顧野王(こ・やおう)原撰の『玉篇』を宋代に勅命を受けて改修したものですが、ワカチとしては「だいこう/えきかい/ぎょくへん」ではなく、「だいこうえき/かいぎょくへん」とすべきかと思います(「會」は「あわせる」「あつめる」の意)。

これらの字書類の集大成に位置づけられるのが、清朝の康熙帝の命で編纂された『康煕字典(こうきじてん)』です。これは47035もの漢字を214部に分けて配列したもので、現在の漢和辞典も基本的にほとんどみなこの部立てを踏襲しています。構成は、子集から亥集までの十二支名による12集をそれぞれ上中下に分かち、巻頭に等韻・總目・檢字・辨似を、巻末に備考・補遺を加えた合計42巻から成ります。
漢籍目録にはしばしば「康煕55年敕撰」と著録されていますが、実際の編纂者は巻頭の「職名」に列記されています。以前書いたように、通常こうした場合は、先頭の大臣などは名義のみと見なして採用しないことが多いのですが、『康熙字典』の場合は、筆頭の纂修者の「凌紹雯」ではなく、「總閲官」として先頭にあげられている2名のほうを採用して、「張玉書,陳廷敬〔等奉敕撰〕」とするほうが多数派のようです。
『康煕字典』は明治期にかけて和刻本も多数刊行されていますが、よく目にする江戸時代のものとしては、安永9年(1780)刊の、都賀庭鐘(つが・ていしょう)父子による『字典琢屑』『字典初學索引』を附した刊本があります。

2020年12月22日

これからの片づけ

本日は「週刊新刊全点案内」2020年最後の2190号の発行日です。
掲載件数は1246件でした。

*こんな本がありました*


集中できないのは、部屋のせい。

米田まりな(著)
PHP研究所(2021.1)


会社で仕事するのが当たり前だったのに、自宅でのテレワークを余儀なくされた-。今年はそんな労働環境の変化が日本中で生まれた一年でした。子どもたちは急に学校が休校になり、自宅学習に手を焼くご家庭も多かったのではないでしょうか。

集中しないといけないのはわかっているのに、家の中には誘惑がたくさん。
くつろぐための家でオンオフをつけて外と変わらずに働く/勉強するというのは、慣れるまではなかなか大変ですよね。

片づけノウハウ書は山ほど刊行されていますが、こちらの図書は「集中する部屋」をつくることにピンポイントで挑んでいます。近年流行りの「ていねいな暮らし」や「豊かな生活」を目指すのはひとまず後回し。気合で何とかしようとせず、効率的な片づけとシステム構築の合わせ技で、メリハリをつけてやるべきことに集中!
働きかたの変化に合わせて、片づけかたの見直しも求められている現代社会。年末の大掃除の時期に少し意識してみるのも、日常をアップデートするためのひとつの手かもしれません。

2020年12月18日

和漢古書あれこれ ― 小学書

こんにちは。AS 伊藤です。主に和漢古書を担当しています。

前々回前回、和古書の往来物についてとりあげましたが、漢籍では、「子部・儒家類・家訓勸學郷約之屬」の「少儀」というところに、初学者用の書物が収められています。代表的なものとしては、南宋時代に朱子が編纂した『小學』という書物があり、和刻本も多数刊行されています。これは四書の一つである『大學』に対し、日常の礼儀作法や聖賢の格言・善行などをまとめたもので、内篇4章と外篇2章から成ります。前回触れた辻原元甫は、これを翻訳敷衍した『大和小學』6巻という本も出しています。
ちなみに、「大学」「小学」のほかにも、「国語」「儀礼」「書」「詩」「方言」といったタームも、漢籍の世界では、特定の作品のタイトルになりますので、初歩的な勘違いをしないように注意しましょう。

「小学」は伝統中国の学術体系においては別の意味もあり、文字にかんする学問のことも、儒教の経学(けいがく)に対する補助学という意味あいで「小学」と言います。漢籍の冊子目録を見ると、四部分類の「經部」のところには個々の経書とその注釈書が収められていますが、その最後には「經部・小學類」というのが置かれており、NDCでは8類に入るような図書がここに収められています。
小學類の最初は「訓詁(くんこ)之屬」という属目になりますが、そのなかで一番先頭に置かれているのは『爾雅(じが)』という書物です。これは、漢代初期に成立したとみられる、経書(とくに詩経)中の文字をカテゴリ分けして配列した一種の類義語辞典ですが、唐宋に至って、他の経書と並べて『十三經』の一とされるほど重視されました。
歴代『爾雅』にならって、『小爾雅』『逸雅(いつが)』『廣雅(こうが)』『埤雅(ひが)』『駢雅(べんが)』『通雅(つうが)』といった辞書が編纂されていますが、このうち、『爾雅』『小爾雅』『逸雅』『廣雅』(隋代に煬帝(ようだい)の諱を避けて『博雅(はくが)』と改題されたことがあります)『埤雅』を合わせて『五雅』としたセットが明末に刊行されています。

日本でも、『爾雅』を模範として、平安期に源順(みなもと・したごう)撰『倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』といった辞書が編纂されました。江戸時代には、貝原益軒の甥の貝原耻軒(かいばら・ちけん)著『和爾雅(わじが)』(1694年)、新井白石著『東雅(とうが)』(1719年)といった書物も編まれています。後者はもちろん、「東方の国の爾雅」という意味の命名です。

2020年12月16日

きょうのデータ部☆(12/16)

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年末恒例、お預かりしている蔵書の箱が盛り沢山になってきています。

2020年12月17日

雄弁な空白

今月の雑記のテーマは「いつも通りじゃなかった今年をふりかえって」です。

データ部ログで毎週水曜日にお届けしている「きょうのデータ部☆」は、写真付きでその日の様子をお伝えする記事。季節感・空気感が詰まっていますので、ふりかえりには持ってこいです。左側のカテゴリーの「フォトギャラリー」からまとめてみることができます。

遡ってみると...季節の写真に混ざって、ありますね、今年ならではの写真が。
9月には、すっかり見慣れた手洗い励行の張り紙
7月は、換気のため開けた窓と虫対策の話
6月にはパーテーションが登場
そして、5月。
記事が無い。

そうでした。4月7日の緊急事態宣言を受けて、TRCデータ部も出勤人数を抑制することになり、4月9日から"しばらくの間"データ部ログ自体を休止していたのでした。
右側のアーカイブにも「2020年5月」が存在しません。

画面を眺めて、このことを思い出した時、当時の閉塞感や、いつ再開とも言えないくらいの先の見通せない感じが一気によみがえってきました。

実を言うと、私個人としては、この期間もデータ部ログは続けた方がいいのではないかと思っていました。
そのころ自分自身が、某球団マスコットのブログや某企業さんのツイートに癒しをもらっていたため、データ部ログも誰かにとってそうであったらいいな、と思ったこと。また、なんであれ日々の記録は後々何かの役に立つのではないかとも思ったためです。
(とはいえ、当時はそんなこと言っている余裕は全くなく...難しかったのが現実です。)

しかし、今こうして見ると「記事がない」ことが当時の状況をとても雄弁に語っています。
記録"されなかった"空白にこそ宿るものがあり、そこから読み取れるものも多いものですね...と、曲がりなりにも図書館界に身を置いている人間がこう書くのは、なんというかずるいですね。
やっぱり記録は残したい。残さなくては。

はてさて...
振り返ってみましたが、2020年という年や今年感じたことはまだ消化できるものではなく、このように全然まとまらない文章を書いてしまいました。
それでも。くだらなくても、たいした意味がなくても。
とりあえず、ブログを書く余裕がある年末でよかった。と思います。

2020年12月14日

はじめて買ったCDは?

12/15は週刊新刊全点案内2189号の発行日です。
掲載件数は1378件でした。

*こんな本がありました*

なんでも「はじめて」大全

スチュワート・ロス(著)
東洋経済新報社(2020.12)


ウェブサイトなどでIDとパスワードを設定する際、パスワードを忘れてしまったときの本人確認用に用意されている「秘密の質問」。いつでも思い出せ、表記違いがないもの...と思って私はいつも「親の旧姓は?」を選んでしまいます。
いくつかある選択肢の中で、よく見かけて気になるのが「はじめて買ったCDは?」というもの。
人生でたくさんある「はじめて」の中で、特にこの質問だけが「秘密の質問」によく採用されているのは面白いなあと思います。
「はじめて買った本は?」でも良いはずなのに......CDのほうが「はじめて」「自分で」買ったことを覚えていることが多いのでしょうか?
とはいえ、サブスクリプションが普及した今の時代、この質問は成り立たなくなってしまいそうです。

今週の新刊案内には、人類文明の様々な「はじめて」を網羅した1冊が掲載されています。
「人類はじめての電話」や「人類はじめての飛行機」ならなんとなく知っていますが、「人類はじめてのボタン」「人類はじめての靴」「人類はじめての窓」あたりは想像もつきません。考えたこともありませんでした。

最近の発明だと思っていたもののルーツが実は古代文明にあったりなど、予想外の「はじめて」を楽しめる1冊のようです。

和漢古書あれこれ ― 女子用往来

こんにちは。AS 伊藤です。主に和漢古書を担当しています。

前回とりあげた往来物ですが、女性向けのものも数多くあります。これらは「女子用往来」と総称されます。
著名なものとしては、前述の「今川状」に擬して書かれた『女今川』 や、貝原益軒(かいばら・えきけん)の『和俗童子訓』から抄録編集した『女大學』などの教訓書があります。これらのほかにも、『女諸礼集』『女重宝記』といった礼法書や、『女消息往来』『女用文章』といった手紙文例集などが数多く出されました。「女筆手本類」と称される、散らし書きなどの独特の形式の書道手本も数多く残っています。
また、『小倉百人一首』も基本的に女子用往来として刊行され、江戸期を通じて千種以上の版本があると言います。内題は無いことも多いですが、おなじみのカルタの絵札の図柄に頭書を付した50丁の冊子などはしばしば目にするところです。

女子用往来の早い時期のものとして、明暦2年(1656)刊の辻原元甫(つじはら・げんぽ)著『女四書(おんなししょ)』という図書があります。これは、明末に儒教の四書にならって編まれた『女四書(じょししょ)』という漢籍(子部・儒家類・家訓勸學郷約之屬)の翻訳翻案で、『女誡』『女孝經』『女論語』『大明仁孝皇后内訓』という4篇の女性向けの教訓書から構成されています(原本の漢籍では『女孝經』の代わりに『女範』という作品が入っています)。
このうち『女誡』は、後漢初の班昭(はん・しょう)という女性の著作ですが、このひとは『漢書』の撰者として著名な班固(はん・こ)の妹で、兄の獄死後に、未完成だった『漢書』を続修した才女として知られています。この班昭(曹氏に嫁いだので曹大家(そう・たいこ)とも称せられます)の伝記は、『後漢書』の「列女伝」に載せられていますが、そこにはこの『女誡』も全文が収録されています。

なお、「列女伝」としては、歴代の中国正史の列伝の一篇というだけではなく、独立した著作である、前漢末の劉向(りゅう・きょう)による『列女傳』7巻という作品もあります(史部・傳記類・雜傳之屬)。これは、太古から先秦にかけての賢母・烈婦などの伝記104話を集めたもので、こちらも東アジア世界で女子教育に広く用いられました。後代いろいろなひとによる『列女傳』が編まれましたので、劉向のものをとくに『古列女傳』とも称します。いずれにしろ、『烈女伝』ではありませんのでご注意を。
和刻本としては、17世紀半ばの承應年間に、『新刻古列女傳』8巻に明の黄道周(こう・どうしゅう)による「新續列女傳」3巻を附した挿図本が刊行され、その後も数度にわたって刷りを重ねています。また、この和刻本の刊行直後の明暦元年(1655)には、北村季吟(きたむら・きぎん)による『假名列女傳(かなれつじょでん)』8巻という翻訳本も出ており、その後も影響を受けた『本朝列女傳』といった伝記集などが数多く生み出されています。

2020年12月11日

和漢古書あれこれ ― 往来物

こんにちは。AS 伊藤です。主に和漢古書を担当しています。

和漢古書の整理にあたって、よく目にするものとして、庶民の初等教育のための教科書があります。これらは「往来物(おうらいもの)」と総称されますが、これは往復書簡―手紙の往来―の体裁をとったものに淵源があるためです。代表的なものに、室町時代に成立した『庭訓往来(ていきんおうらい)』があり、これは一年12ケ月の各月の往信・返信プラス単信1通の計25通で構成されるかたちをとっています。
この『庭訓往来』は江戸時代には寺子屋の教材として広く用いられ、300種以上もの刊本があると言います。そのほかにも『商売往来』『百姓往来』『江戸往来』『諸職往来』といった多種多様な往来本が刊行されましたが、かならずしも往復書簡の形式をとらないものも多くあります。

往来物全体では刊本だけでも数千点が刊行され、『小野篁歌字尽(おののたかむらうたじずくし)』などの「字尽」、手紙の文例を集めた「用文章」、『童子教(どうじきょう)』『実語教(じつごきょう)』といった児童用の修身書など、いろいろな種類のものがあります。鎌倉幕府の法令集である『御成敗式目』(貞永式目)なども、手習い用に何種も刊行されており、これらは用途からすると「法律」より「教育」に分類しておいたほうがよい場合も多いのではないかと思います。

往来物には複数のコンテンツから成るものも多く、とくに昔からの著名人の手紙とされるものを集めたものは「古状揃(こじょうぞろえ)」と称されます。それらに収録されている書状としては、『腰越状』『熊谷状』など『源平盛衰記』などの軍記物から採録した武将の書簡、『今川状(今川了俊愚息仲秋制詞條ゝ)』『手習状(初登山手習教訓書)』といった教訓状、室町期に作られた『弁慶状』『曽我状』といった擬古状等々があります。関ケ原合戦の年に、上杉家家老・直江兼続が、徳川家康宛に上杉家の立場を論弁したものとされる『直江状』や、大坂冬の陣の開戦直前の徳川家康と豊臣秀頼とのやり取りという体の『大坂状』などといった擬作もしばしば目にします。
総合タイトルがなかったり、「○○往来」という書名をつけられているものでも、中身をよく見るとこれらの古状や教訓書を寄せ集めたものであることもよくありますので、内容細目としてきちんと記録しておいたほうがよいでしょう。

こうした往来物の各種版本・写本の書誌情報と収録内容については、「往来物倶楽部」というwebサイトにたいへん詳しく載っており、往来物の書誌作成をする際にはこちらを参照することが必須です。往来物は全国の大学図書館や公共図書館にも比較的数多く所蔵されており、デジタルアーカイブシステムADEACでも、「三次市立図書館/「往来本」デジタルアーカイブ」といったコレクションを公開しています。

2020年12月10日

本でふりかえる2020年

今月の雑記のテーマは「いつも通りじゃなかった今年をふりかえって」です。
今年はまったくもっていつも通りではありませんでした。主に悪い方向に。
1年を普通に振り返ると暗い気持ちになるので、何かポジティブな話題を...ということで、2020年に出版された本の中から「いつも通りではなかった」ものをみてみようと思います。

今年は何といっても働き方が大きく変わった方が多いのではないでしょうか。「テレワーク」や「Web会議」などの言葉を多く耳にしましたが、それぞれ件名の「テレワーク」を付与した本は61冊※、「遠隔会議」を付与した本は40冊でした。
また、今年は三島由紀夫の没後50年ということで関連本を多く目にしました。昨年は三島由紀夫の件名を付与した本は6冊でしたが、今年は25冊も出版されました。
明るいニュースと言えば、漫画・映画ともに絶好調で一大旋風を巻き起こしている「鬼滅の刃」。漫画の考察本はなんと20冊もありました(去年は0冊)。
そして最後に、「新型コロナウイルス感染症」に触れないわけにはいかないでしょう。今年この件名を付与した新刊書籍は...279冊でした。医学的な観点だけではなく、政治・経済・教育・労務など、様々な観点から新型コロナウイルスについて語った本が出版されました。

1年の世相を本でふりかえってみました。今年は色々残念だったけれど、来年はどんな年でどんな本が出版されるのか、考えるとちょっと楽しみになってきます。

※この記事の出版点数は、2020年の現時点で『週刊新刊全点案内』に掲載された冊数です。

2020年12月 9日

きょうのデータ部☆(12/10)

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3Fよりテラスを見下ろす窓。
左側が薄~く開けられるようになっています。
今日はちょっと寒いですが、暖かい日は換気優先で。

2020年12月 8日

100年経っても

本日は「週刊新刊全点案内」2188号の発行日です。
掲載件数は1201件でした。

*こんな本がありました*
発売前から話題になっていたこちら、ついに入荷しました!

ドラえもん 1~45
(100年ドラえもん)

藤子・F・不二雄(著)
小学館(2020.12)

小学生のころ、歯抜けで持っていたてんとう虫コミックスの「ドラえもん」。
早々にジャケットはどこかへ行き、表紙や裏表紙に折れあとが付き、しまいにはぬり絵としても活用し、ボロボロにしてしまいました。
中学生までは本棚に並べていましたが、高校を卒業する頃、「もうマンガも卒業しなくては」と思い立ち、「ブラック・ジャック」や「あさきゆめみし」などとともに捨ててしまいました。
その後、捨ててしまったことを何度も後悔しました。

今回のドラえもんは全45巻ハードカバーの布装、さらに背のタイトル等は金の箔押し!
天の部分を見ると、全巻金色に輝いています。
豪華にするためかと思いきや、小学館のホームページによるとこの装丁は「天金」というもので、『本文の湿気を防ぎ、ホコリからもガードすることで、シミ等の発生を抑制します。』とのこと。
名前の通り、100年先の未来までも保存が可能であろう装丁です。
特典のタイムふろしき柄風呂敷や、どこでもドア型本棚購入権利などに心惹かれましたが、物であふれる我が家には置くスペースもなく...
残念ながら予約は見送りました。

2020年12月 7日

ADEAC としまひすとりぃ

今回はADEACで公開している機関の中から、
東京都豊島区の「としまひすとりぃ」についてご紹介いたします。

豊島区 としまひすとりぃ
「としまひすとりぃ」は豊島区制施行90周年に向けて新たな豊島区史の編さんを進めるにあたり、豊島区の平成史を以下のようなコンテンツからご覧いただけるデジタルアーカイブです。
様々なコンテンツがありますが、その中から特に豊島区ならではのものをピックアップしてご紹介いたします。

ひと街×ひすとりぃ
さまざまな分野で平成期を中心に、豊島区で活動してきた女性へのインタビュー記事コンテンツです。
インタビュアーも区民の方によるもので、区民の視点でのエピソードを読むことができます。
現在第2回まで公開されており、今後随時更新の予定です。

わが街ひすとりぃ
豊島区の20地区について、それぞれの地区の移り変わりを各地区に長くお住まいの方からお話しをお聞きした動画コンテンツです。
現地を歩きながら撮影したロケ動画をはじめ、豊島区広報番組のインタビュー動画を公開しています。
名所や名店、昔の街並みの思い出や、その地域ならではエピソードが次々出てきます。

平成とぴっくす
平成期の豊島区のさまざまな出来事のレポート記事コンテンツです。
その当時、係っていた区役所の方による行政目線によるレポートです。

平成ぐらふぃっくす
豊島区広報課が制作したビデオ映像を公開しています。
今後随時更新の予定です。

この他にも豊島区史年表など、大変見ごたえのあるコンテンツです。
今後毎月1回更新を予定しておりますので、ぜひともご注目ください。

2020年12月 2日

きょうのデータ部☆(12/2)

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みかんの季節ですね。
おすそ分けでいただきました。

ビタミンを採らねば。

2020年12月 4日

あんな本 こんな本

久しぶりのデータ部紹介、図書館蔵書編です。

ここでは「流通している新刊本以外で、明治以降に刊行された図書」を対象に、図書館の蔵書をお預かりしMARCを作成しています。行政資料、地域資料、遺跡の発掘調査報告書、沿革史・社史、展覧会の図録、ごくごく少数しか流通しなかった本など顔ぶれもさまざま。

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どれもご返却後は二度と目にすることができない可能性が高いものばかりです。

2020年12月 1日

1年中クリスマス!

本日は「週刊新刊全点案内」2187号の発行日です。
掲載件数は1024件でした。
今月の表紙はこちら。

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12月はやはり、迷わずクリスマスという事で
クリスマスツリーのイメージです。

あら、なんだか帽子の様にも見えて来る・・・。
星をあしらったクリスマスの帽子・・・?
いや、いや、やっぱり、クリスマスツリーです!!

(Juri)


*こんな本がありました*
今日から12月、街のディスプレイはすっかりクリスマス。
安定の色遣いとデザインが、冷えた心をぬくめてくれる...。
クリスマス素人はこの程度。
「クリスマス・マニア」の坂田先生は
「私、1年中クリスマス!」だそうです!


坂田靖子のクリスマス★マニア!

坂田靖子 (著)
河出書房新社(2020.11)

キラリと光る豪華なカバーに、頑丈な表紙、厚さと重さ。
クリスマス短編漫画を21編収録。
手に取るだけで愛が伝わってきます。
巻頭には、クリスマスマニアは12月25日のそのあとも
まだまだクリスマス、のようにあり
お正月になっても桜が咲いてもクリスマスに思いを馳せられる
というのは凄いなぁと感心しきりです。

巻末には「坂田靖子クリスマス全作品リスト」もあり、
この本の収録作21編がその半分にも満たないことがわかります。
画業45周年とはいえ、こんなに描けるものなのか...!
展覧会も開催中です。


デビュー45周年記念 坂田靖子 メリー・メリー・クリスマス展


2020年12月 3日

注文の多い毎日を楽しく元気に

2020年もあと少し。日に日に寒さも増す12月の雑記のテーマは、
いつも通りじゃなかったこの一年を振り返って。

 年初、今年はオリンピックもあって、大好きなアイドルグループは残念ながらあと一年で活動停止だけれど、きっと沢山イベント等あるだろうな。子どもの中学校も2年目で流れもわかってきたし、受験そしてじきに訪れる親離れ前に少し遠くに出かけたりしようなどと思い描いていました。偶数年にはインフルエンザに罹らないという我が家ジンクスでスキーにも沢山行くぞーと話していた頃、騒がれはじめた新型コロナウイルス。
 インフルエンザとは違うから罹るかも知れない気をつけようと、スキー計画を少し縮小し何度目か行ったところで、休校そして緊急事態宣言に。仕事は在宅でできるものと出勤して行うものに分け、出勤するメンバーを減らせるよう努めました。
 私は出勤する業務があり感染対策に悩むことに。通勤時のリスクを減らし、自身はもちろん職場のメンバーや家族がウイルスに感染しないよう、手洗い、うがい、マスクの徹底、ソーシャルディスタンスを保つこと等気を付けました。ちゃんと対策できているのか不安な中、帰宅後すぐにお風呂に入り着替えればウイルスが家の中に入りにくいという話を聞き、これなら安心と、以来帰宅即風呂生活を続けています。
 今まで無かった部屋着が増えて洗濯物は増えましたが、サッパリしてから晩酌するのは気持ちいいものです。が、同じことを家族に求めると賛成派と反対派に分かれました。
 ・帰宅後荷物は玄関近くの決めた場所に片付ける
 ・ウイルスを落としてからくつろぐ
 毎日伝え一悶着していると、どこかで聞いたことのある話に思えてきました。「どなたもどうかお入りください」と大歓迎されて入ると「泥を落としてください、荷物を置いてください」と話が進む「注文の多い料理店」です。
 反対派も楽しく帰宅即風呂生活に参加してくれないかと、それっぽい貼紙をしてみましたが効果は...。私含め一部メンバーが風呂上がりの保湿クリームまでのひととき、注文の多い料理店に行った気分を味わっています。
 なかなか落ち着かず、気を付けることの増える毎日ですが、できる対策を、できれば少しでも楽しく続け元気に新しい年を迎えたいものです。

2024年3月

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