« グルメガイドを探したい~TOOLiで探そう~ | メイン | 変化してます »

和刻本漢籍(「和装」「和本」「和書」(3))~ASで作成するデータについて~

こんにちは。データ部AS・伊藤です。主に和装本を(和古書・漢籍を、というほうが正確ですが)を担当しています。

さて前回、『日本目録規則』1987年版改訂3版の「用語解説」の
漢籍 中国人の編著書で,かつ中国文で書かれたもの。主として1911年(辛亥革命)以前に刊行されたものをいう。日本等で刊行されたものをも含む。
和古書 日本人の編著書で,かつ日本文で書かれ,日本で書写・出版された和書のうち,主として江戸時代まで(1868年以前)に書写・刊行された図書をいう。
という規定について、ちょっと問題がある、と書きました。いったい何が問題なのでしょう。

1911年より後のものでも(一番狭い意味での)漢籍になるものや、1868年より後のものでも和古書になるものがあるということでしょうか? いえ、NCRにはちゃんと「主として」書いてあります。漢籍にしろ和古書(国書)にしろ、出版年代がひとつの区切りになるといっても、現実の出版・造本のあり方が、ある年でスパっと切り替わるわけではない、というには当然のことです。ですので、このことについては、それ自体はまた後ほど取り上げるとして、「大きな問題」ではありません。

「問題がある」のはこういうことです。1868年から1911年の間に日本で刊行された「漢籍」の扱いはどうなるのでしょうか?
「漢籍」の規定のところで明記されているとおり、「日本等で刊行されたもの」も漢籍に含まれます。前回書いたとおり、「国書(和古書)」「漢籍」の区分は、あくまで日本語で書かれたものか中国語で書かれたものかという区別で、出版地は関係ありません。実際に、日本で刊行された漢籍というのは相当な量にのぼります。これらを「和刻本」と言います。「刻」はこの場合「刊」と同義で、「日本で出版された本」ということです。
当然ながら国書(和古書)も「日本で出版された本」なわけですが、「和刻本」といった場合、基本的に国書(和古書)は指しません。というのは、日本で目にする漢籍の場合、日本で出版されたものと中国で出版されたものとが半々か、むしろ前者が多いくらいで、大別する必要があるのに対し、国書(和古書)は当然ながらほぼ100%出版地が日本なので、ことさらに言う必要が無いのです。

「和刻本」の漢籍については長澤規矩也著『和刻本漢籍分類目録』(汲古書院刊)という基本的な工具書があり、医書・仏書以外はほとんど網羅されています。ただし、この場合の漢籍は、「内容の成立年代が清以前」の「中国語で書かれたもの」という本来の原則のとおり、出版年が明治以降のものも含まれています。
しかし、NCRの規定ではカテゴライズの要素として「刊行年」があることは明記されていますから、ではNCRにおいて明治以降の「和刻本漢籍」はどういう扱いになるのでしょうか? 和刻本であっても「漢籍」なのですから、素直に読めば、1911年(辛亥革命)以前に日本で刊行されたものは、「漢籍」として和漢古書特有の規定を適用させるべき、ということになります。偶然にも1912年は大正元年ですので、ちょうど明治と大正との区切りと一致することにもなります。

しかしながら、果たしてそれでよい・・・のでしょうか? NCRで「和古書」「漢籍」に特有の規定を設けたのは、現代書とそれら和漢古書とで、本のありようそのものが大きく異なり、同じ規則で目録を作成することに無理がありすぎるからでした。「本のありよう」の一番大きな違いは、近代的活版印刷により、大量複製が可能になったか否かという点です。江戸時代以前では一度に刷られる図書の部数は最大でも数百部、同じ刷りの中で現存する部数は数点から数十点というのがふつうで、だからこそ蔵書印や書き入れなど、個別の図書現物ごとの記録が必要になります。それに対し、装丁が和装であろうと内容が古いものであろうと、何千部も刷られ何百部も残っている図書について、一点ずつ別物扱いする必要があろうはずがありません。
そうした印刷方法、というかメディアの様相が変わったのが、日本では明治維新、中国では辛亥革命を起点とする時期、ということなのです。日本で明治から大正に変わる時点で、そうは大きな変化が起こったわけではありません。
この大転換の時期はあくまで、物理的存在としての図書の製作地が日本か中国かによって決まってくるので、内容が日本語か中国語かということはまったく関係ありません。ですので、明治維新以降の「和書」が現代書扱いされるのに、まったく同じような体裁で刊行された明治期の「和刻本漢籍」が現代書扱いされない、というのはやはりちょっと不合理とも言えるのです。

ということで、1868年から1911年の間に日本で刊行された「漢籍」については、和書と同様にむしろ、原則は現代書扱い、ただし場合によっては和漢古書扱いも可、とすべきという考え方もじゅうぶんありうるわけです。ではこの「用語解説」でそのことを示すとしたらどうすればよいか、それは次回で。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://datablog.trc.co.jp/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/2108

コメントを投稿

(投稿されたコメントは、TRCデータ部の営業時間内にアップいたします。投稿から掲載までお待ちいただく場合がありますがご了承ください。なお、メールアドレスはTRCデータ部から直接ご連絡する場合にのみ使用いたします。第三者への公開・提供はいたしません。)

2019年3月

          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

アーカイブ

全てのエントリーの一覧

リンク