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2016年8月 アーカイブ

2016年8月31日

きょうのデータ部☆(8/31)

部屋の奥で待機しているブックトラックたち。

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これがない仕事風景は考えられないほど毎日役に立ってもらっています。
今日もこれからどんどん活躍してくれることでしょう。

〆切

8/30は「週刊新刊全点案内」1977号の発行日でした。
掲載件数は1800件でした。


*こんな本がありました*

〆切本」

左右社編集部(編)
左右社(2016.9)

 もう終わっている学校もあるようですが、8月の月末と言えば「夏休みの終わり=夏休みの宿題の〆切」という方も多いのではないでしょうか。
 我が家でも○十年前の自分を見るような、宿題に追われる子どもたち。作文のネタがない、感想文の本が分厚くて読み終わらない、8月の天気は?(毎日の日記に必要で、今はネット等調べる術がありますが、かつては律義そうな友だちを頼って見せてもらいに行ったものでした)などと、必死になるここ数日です。

 それは作家さんたちも同じ! 夏目漱石、谷川俊太郎、吉本ばななら、明治から現在にいたる90人の書き手たちによる、泣けて笑えて役に立つ〆切にまつわるあれこれが収められています。

 自分だけじゃない、そしてなんだかんだで何とかなるさと勇気がわく一冊です。
 でも、期日は守らなくてはいけませんよね。

 

2016年8月29日

呪文?「歳舍柔兆涒灘」―和漢古書の出版事項(12)

こんにちは。AS 伊藤です。主に和漢古書を担当しています。

前回まで出版者について見てきましたので、つづいて出版年について見ていきましょう。

和漢古書では、刊記・奥付見返し・扉に出版年の記載があることが多いですが、基本的に「文政七年」などと「年号+年次」で記載されている場合のほか、「文政甲申」といった具合に「年号+干支」となっている場合もよくあり、どちらも出版事項としては「文政7 (1824)」のように西暦を付記して記録します。後者のパターンもごくふつうにありますし、干支は60年でひとめぐりなので、年号と組み合わせればまずユニークなものとして決定できますので、とくに注記とかする必要はないかと思います。
もっともダブってしまうケースが一つだけあり、中国清代の「康煕壬寅」は「康熙元 (1662)」の場合と「康煕61 (1722)」の場合と両方あるのですが、まあ60年も離れているので、たいていはその他の傍証からどちらなのか見当がつきます(なお、「元年」とか「紀元」とかあるのは「元」と記録したほうがよいと思いますが、「1」に置き換えて記録しても間違いということでもないと思います)。ちなみに、康熙帝の孫にあたる乾隆帝は、60年できちんと(?)譲位してくれています。

ただ、年号がなく干支しかないという場合もありますので、この場合は「刊記に「戊辰三月中旬」とあり」などと注記し、推定できれば出版年を補記で記入することになります。洒落本や黄表紙といった「読みとばし系」の本はこのパターンがしばしばありますが、十二支のほうしか書いていないことも多いです。黄表紙では、内容といっさい関係なく絵題簽に牛やらイノシシやらの絵があったりして、それから干支が推定できたりなどということもあります。
また近代の漢籍(唐本)では、辛亥革命(1911年)後も共和制を認めたくない清朝の遺臣が「民國○年」など意地でも使わず、干支のみを記しているのもよく見ます。時に「宣統甲寅」(=1914年)などというありえない年記にお目にかかったりします。
なかなか興味深いのは清代に相当する時期の朝鮮王朝の図書で、冊封(さくほう)体制下でおとなしく「雍正三年刊」などと宗主たる清朝の年号を使っているものもありますが、やはりどうもイヤなのか、干支のみにしたり、「王之十一年」のように王様の即位後何年と書いたりしているものもよくあります(こういうのは注記した上で「[純祖11 (1811)]」のように記録します)。さらには、中華の正朔(せいさく)は奉じるとしても、夷狄(満洲人)の王朝なぞ絶対に認められるものかと、明の最後の元号を使って「崇禎二百四年」(=1831年)とか「崇禎後三戊子」(=崇禎元年(1628)後の3回目の戊子の年=1768年)などといった具合に書いているものもあり、この気合っぷりには恐れ入りましたという気分になります。

干支についてもう一つ知っておいたほうがよいこととして、歳陰歳陽というものがあります。これは、木星の公転周期がおよそ12年であることから、木星(歳星)あるいはその天球上の対称点に仮想された太歳(たいさい)という星の位置を十二支に配当して年を記録する「太歳紀年法」という方法が古代中国にあるのですが、この十二支(歳陰)および十干(歳陽)のそれぞれに「困敦(子)・赤奮若(丑)・攝堤格(寅)・單閼(卯)・執徐(辰)・大荒落(巳)・敦牂(午)・協洽(未)・涒灘(申)・作噩(酉)・閹茂(戌)・大淵獻(亥)」「閼逢(甲)・旃蒙(乙)・柔兆(丙)・強圉(丁)・著雍(戊)・屠維(己)・上章(庚)・重光(辛)・玄黓(壬)・昭陽(癸)」と名前をつけたものです。
これを使って「歳在閼逢攝堤格(=甲寅)」「歳次昭陽作噩(=癸酉)」などと年を表している図書があります。太歳が○○の位置に在る年、ということです(「次」とか「舎」とかは「やどる」という意味になります)。ごらんのようにふだん絶対目にしないような文字が羅列されていますので、何かの呪文かとびびってしまいそうになりますが、慌てずに干支に置き換えてください。ちなみに「柔兆涒灘」(じゅうちょうくんたん)は「丙申」となり、今年平成28年のえとになります。

和漢古書では現代書と違って月まで入力することはありませんが、月の別名なども知っておくとよいでしょう。よく目にするのは、春夏秋冬にそれぞれ「孟(=長男)」「仲(=次男)」「季(=末子)」をつけて、4月を「孟夏」、12月を「季冬」のように書いているものですが、ほかにも「青陽(=1月)」「林鐘(=12月)」などと言った別称があります(ちなみに正月とかこの林鐘とかが出版月となっていることが多いですが、これらはたぶん名義上だけの日付でしょう)。和書の場合は、「睦月」とか「霜月」とかのようなものもよくあります。
また月を十日ごとに分けた言いかたとして、今でも使う「旬」のほか、「浣(かん)」や「澣(かん)」もよく見られる表記です。「二十」「三十」が「廿」「卅」と書かれていたりするのは知っているひとも多いでしょうが、「二十○日」を「念○日」と書いていたりするのもしばしば目にするところです。

年号の後には西暦を付記しますが、厳密に言うと西暦と旧暦の年は若干ずれているので、年末の日付とかではほんとうは違うことになりますが、年単位での記録ですから目をつぶってよいと思います。なお、日本では年内でも即日に改元するので一年のうちに二つの年号があることはよくありますが、中国では「踰年(ゆねん)改元」といって、代替わりがあった翌年の正月に改元しますので、そうしたことは基本的にありません。
西暦自体が書いてあることはもちろんほとんどありませんが、近代のキリスト教の布教書などだと「耶蘇降生一千八百八十年」などとあることもあったりはします。清末以降の中国や朝鮮半島の本では西暦の影響でつくられた「孔子紀元」というのもまれにあったりしますが、じつは「神武紀元」(皇紀)というのは、和漢古書では案外とお目にかかりません。

2016年8月26日

後ろからか、前からか―和漢古書の出版事項(11)

こんにちは。AS 伊藤です。主に和漢古書を担当しています。

前々回前回、出版者の役割表示について見てきましたが、今回は同じ役割の出版者が複数いた場合、どのように扱うべきか、見ていきたいと思います。

和漢古書の出版においては、今までも何度か触れてきましたが、共同刊行ということがよくあります。とくに日本では、商業出版が盛んになるにつれ、相合版(あいあいばん)といって複数の書店が資金を出しあって出すというかたちが増え、江戸後期には刊行物の相当の割合のものがそうなっています。1書肆あたりの経費が抑えられたり、共同刊行者どうしのネットワークで全国に流通させられたりといったメリットがあったようです。
ちなみに相合版の場合、原則としては、版木自体を、それぞれの版元が出資割合に応じた枚数で所有・保管することになっており、これを留板(とめいた)と言います。お互いが勝手な増し刷りをできないようにというためですが、単純ながら効果的なやり方で、「版木」という物理的存在ならではの話ですね。

共同刊行者は、基本的に刊記や奥付に連名で表示されます。もっとも、これらの情報源の特性から言って、版木の権利が移動する以前の名前が残ったままだったりすることもしばしばあります。あるいは出版そのものにはかかわっておらず、たんに流通販売で提携しているだけの場合も実態としてはよくあるようですが、そのあたりの区別はなかなかむつかしいですので、とりあえずあまり気にしなくていいかと思います。
共同刊行者は十数肆になることも珍しくありませんので、カードや冊子目録ではスペースの関係から、代表者のみを記録したり、「代表者〔ほか〕」としていたこともよくありました。しかしこれについては、中村幸彦氏が「和本書誌のしるべ」(『著述集』15所収)というコラムで「(代表者のみを記録するのは)不親切で、私は従いがたい」とし「(複数の書肆のうち)代表を選ぶことは事務的では無理である。むしろ多くとも全部記入する方法が、事務向きである」と書いておられるように、可能なかぎりすべて記録することが望ましいと思われます(たんなる店頭での売り捌き書店は除く)。
NCRでは、これまでの慣習を引き継いで、2.4.2.1D(古)で「和古書,漢籍については,出版地ごとに出版者を記録する。一つの出版地に2以上の出版者等の表示があるときは,顕著なもの,最後のものの順で代表とする一つを選択して記録し,他は「[ほか]」と補記して省略する。」としていますが、とくにオンラインデータベースでは、有効な検索結果集合をつくるという観点から、やはり省略せず、別法2(古)に「記録する出版者等の数は,書誌的記録作成機関において,その必要に応じて定める。」とある規定を採用し、「全部必要」と考えていただいたほうがよいと思います。もちろん、システムの制限で入力できる出版地や出版者の数に制限がある場合は仕方がないので、出版事項として記録できなかったものは注記に記録することになります。ただしその場合でも、三都の出版者はできるだけ、出版事項として記録するようにしたほうがよいでしょう。

代表的なもののみ記録するにしても全部記録するにしても、出版者が複数存在するわけですので、どの順番で記録していくかが問題になります。この問題については「刊記書肆連名考」といった専門の論文もあったりするのですが、刊記・奥付から採用する場合、原則として「後ろ(左)から順番に記録する」というのがスタンダードなやり方です。
共同刊行者のうちだれが主版元かということは、ほんとうは当時の出版記録などで確認しなければならないのでしょうが、跋文の内容を読んだり、あるいは見返しや版心に一人だけ記載されている堂号と照らし合わせたりしても、たしかに奥付の最後のひとがメインだと判断できることが多いです。広告や出版目録が附されている場合も、奥付の最後のひとと一致することがわりと多いと思います。
といって、もちろん例外はしばしばあるので、たとえば京都の植村藤右衛門(伏見屋)という出版者の奥付の場合、いちばん右に本店を書き、支店を左に記していくスタイルになっています。また、往々にして奥付の主版元の下には「梓」とか「版」とか一文字追加されたりしているのですが、たいていは最後のひとであるものの、時々真ん中あたりのひとにそうした字が附されていたりすることもあります。また、主版元のところに朱印が捺されていたりすることもよくありますが、ただしこれについては、たんにそのひとの店頭で売っていた場合に捺しているようなケースもあるようなので、一概には言えません。
なお、見返し・扉に複数の出版者名(ふつうは堂号です)が列記されている場合は、刊記・奥付とは逆に前(右)からの順になっているのがふつうです。

ということで、「顕著なもの」が明きらかである場合以外、基本的に出版者は刊記・奥付の後ろから記録していればまず問題ないと言えるでしょう。もっとも、『日本古典籍総合目録データベース』の「書誌一覧」では、「出版事項」の欄は前から転記していたりするようです。ただ、これはこのデータベース(ちなみに出版者は独立した検索対象になっていません)において、それぞれの欄の内容はまとまって一つのものとして表示するようにしているからであって、NCR等の目録規則ではやはり、最初に記録する出版者と2番目以降に記録する出版者とでは意味づけが違ってくるかと思います。実際の図書館システムでも、簡略表示では最初の出版者のみ示すようになっているものもよくあると思いますので、主版元を選定してそれを最初に記述するようにすることはやはり必要だと思われます。

この主版元を一番後ろに記載するやり方は明治に入ってもしばらくはつづきますが、途中から現代風に、主要な出版者を前(右)から順番に記載していくように変わってきます。この切り替えはだいたい明治10年代くらいに進んだようですが、この前後のものははたしてどちらの方式なのか、それぞれの図書ごとに注意して見ていく必要があります。傾向としては、奥付に著者と並んで記されている場合や、異なる役割の出版者が列記されている場合は、現在と同じく前から記録したほうが適切なことが多いように思われます

2016年8月25日

山の匂い?

8月の雑記のテーマは「山」。

我が家は母が山好きなこともあり、夏休みはよく山に行きました。
最初は箱根界隈でしたが、
そのうち乗鞍、御嶽、妙高、八ヶ岳など結構本格的に。
(本当は行ったというよりは、連れていかれたといった方が正しい表現)
朝に弱いので、御来光を見るための朝3時起きがとにかく苦手で
日の出前からトレイルランニングかっ!というスピードで登っていく妹が恨めしかったです。
山頂で見た朝日は素晴らしいものでしたが、
何度行ってもあの早起きだけは慣れませんでしたね。

登山に欠かせないのが地図です。
家では昭文社の「山と高原地図」のシリーズが定番でした。
昔は独特な防水加工の香りが
おそらく今よりも強かったように思うのですが、
雨に濡れると当時小学生の鼻には一層強烈でしたねぇ...。
でも霧に包まれても雷雨の中で開いても、全然破れないところは
さすが防水加工!と感心したものです。

数年前に標高2500mの山で高山病にかかってから
私は山登りを卒業しましたが
今も他の家族は登っているので、
実家の書棚では「山と高原地図」が一角を占めています
ガラス戸を開けてあの独特の香りを嗅ぐと
懐かしい山登りの記憶が蘇ってきます。

2016年8月24日

きょうのデータ部☆(8/24)

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TRC本社1階ショールームでは、写真のように本が展示されています。
この中の一部は、バーコードなどが貼られており、実際に社員に貸し出しをしたりしています。
私はまだ借りたことがないのですが、毎朝ここの前を通る度に、何か読んでみたいなぁという思いに駆られます。
今度連休が来た時、借りてみたいです。

2016年8月23日

偶然の...

本日は「週刊新刊全点案内」1976号の発行日です。
掲載件数は1001件でした。


*こんな本がありました*

「偶然短歌

いなにわ せきしろ(著)
飛鳥新社(2016.8)

偶然短歌とは、ウィキペディアの文章の中で、偶然に短歌のリズム(5・7・5・7・7)になっているものをプログラムで見つけ出したものだそうです。
いくつか紹介してみましょう。


「フクロウが鳴くと明日は晴れるので洗濯物を干せという意味」
「空洞になっているため、大きさを支えきれずに壊れてしまう」
「小説を書き始めるが、そのことで、大事なものを失っていく」


ウィキペディアの文章なので本来は単なる解説文のはず。それを機械的に抽出したものが、なぜこんなに意味深長なのでしょうか。
3つめの偶然短歌なんて、ここから作者の苦悩の物語が始まっていきそうです...。

自分でも文章を書いて気が付くと5・7・5調に偶然なった、ということがあります。やはり5・7・5(7・7)のリズムは日本人に心地よいものなのでしょうか。

2016年8月22日

蔵版と製本―和漢古書の出版事項(10)

こんにちは。AS 伊藤です。主に和漢古書を担当しています。

前回、出版者を示す様々な役割表示について見てきましたが、列記した以外で、版木(あるいはその所有権)を持っていることを示すものとして「藏版(ぞうはん)」「藏板」「藏梓」「貯板」などといった表示があります。たんに「藏」とあるのもこの意味です(なお、これに対し、たんに「版」「板」「梓」とあるのは動詞句と見るべきであって、版木に加工した意であり、蔵版者のこととは見なさないほうがよいです)。
江戸時代には著作権という概念は基本的に存在しませんでしたが、版権に相当する概念はあり、「板株(いたかぶ・はんかぶ)」の権利として、幕府から統制と保護が加えられていました。この権利は文字通りには「板木」の権利なので、逆に写本というものには原則として幕府の統制は及ばず、したがって実録物とか猥本とかいった類のものはもっぱら写本で流通していました。興味深いことに、活字印刷のものは写本扱いとなり、したがって版権というものは生じませんでした。たしかに半永久的に残る整版と違って、活字をいったんばらしてしまえば「版」としてはそれっきりですからね。
ということで、この「板株」の権利はほんらいまったく即物的なものであったわけですが、時代が下がるにつれ、たとえば焼けてしまっても権利は残るなど、かならずしも版木の所在それ自体に即したものでもなくなってきました。この板株を所有し出版する権利を有していることが「蔵版」であり、和漢古書における特徴的な存在と言えます。

蔵版者には、著者自身など、基本的に商業的出版活動を行っていない「素人蔵版」の場合と、営利出版者がそれになっている場合とがあります。前者の場合、著者やその家塾がいわば私家版のかたちで刊行し、売れ筋となったら営利出版者に発行者となってもらって広く流通経路に乗せる、というのがありがちなパターンです。後者は、そうした版木の権利を買い取ったケースのほか、あるいは当初から出版者の企画商品として版の作成から販売にいたるまでを行う場合もあります。
それらの版木あるいはその権利は何度も転売されるようなこともあり、版木あるいはその権利の移動があったことを示すものとして「求版(きゅうはん)」「購版(こうはん)」「買版(ばいはん)」「蘄版(きんはん)」などといった用語があります。

蔵版者は、他の出版者(発行者等を含む)がある場合は、原則として注記に記録します。他の出版者がない場合(発売者のみある場合を含む)は、注記した上で、書店や官公庁(藩)の場合は出版者として記録してよいですし、個人・私塾の場合も補記括弧に入れて出版者として記録してよいと思います。
ただし、刊記・奥付において現代の市町村に対応するレベルの地名以下の地番・街区とともに表示されている場合は、基本的に営利出版者であり、「蔵版」とあってもふつうの出版者として扱ったほうがよいです。
この蔵版者というのは漢籍(唐本)でも存在しますが、中国の場合も、公的機関や家塾のほか、書店であることもよくあります。「本衙(ほんが)蔵版」(「衙」は「役所」の意)のようにあって蔵版者を特定できない場合は、注記にそのまま「封面に「本衙蔵版」とあり」などと記録し、出版者は不明としておきます。

「蔵版」のほかに注意したい表記として、「製本」があります。現代書では印刷・製本者ということで、出版者としてはふつう記録しませんが、明治前期を含む和漢古書においては、そうした存在と判断してしまうとまずいことがあります。和漢古書における「製本所」は、『日本古典籍書誌学辞典』に「本屋以外の素人蔵版の書籍の製作を請け負う書肆について、版元と区別するために製本所の称をもって刊記に記す場合も多い」とあり、要するに発行者のことなのです。実際、「製本發兌」といった役割表示もしばしば見られます。もちろん、製本者と発行者が異なる場合もあり、その場合は製本者=出版者、発行者=発売者となります。
ということで、「製本」「製作」「調製」あるいは「印行」なども、他に出版者がなければ、現代書とは違って、「出版者」として記録するほうが適当です。ただ、他に出版者がある場合、とくに製本者が発売者より後に記されている場合などは、これらや「刻字」「剞劂(きけつ)」などは、まさに現代の「印刷・製本」とほぼ同じ、すなわち製作者として扱ってよいでしょう。

以上見てきたような多様な役割表示は、幕末から明治期にかけてはまさに過渡期ですので、意味が重なり合いながら微妙にずれてもいるようであったり、一概にこう、と言えるものはありません。実際「出版」「版主」「版元」などと表記があるのは、完全に蔵版者の意味で使われていたりする場合もあり、「出版人」とあっても注記にまわしたほうがよいことだってあるのです。
といった具合に、これらの表記の意味するところとそれぞれとの関係は、きわめて複雑多岐な、ほとんど怪奇的なまでの様相を呈しており、整理するのは容易ではありません。すくなくとも明治以降のものについては、現代書として扱うことも多いですし、ほんらいならば、日本の目録規則でこそきちんと規定しなければならないはずのところだろうとは思いますが、現実にはなかなかたいへんなことかとは思います。

2016年8月12日

データ部ログ更新お休みのお知らせ

いつもデータ部ログをご愛読くださり、ありがとうございます。

TRCデータ部は、8月15日(月)から19日(金)まで、夏季休業となります。
ブログの更新もお休みさせていただきます。

近くの公園では、信じられないほどの音量で蝉の声が響いています。
なんだか足を踏み入れられないくらいでした。

まだまだ残暑厳しい日が続くようです。
みなさまには、どうぞお健やかにお過ごしくださいませ。

2016年8月10日

きょうのデータ部☆(8/10)

テラスの花もさすがに全部散ってしまったかな...と思ったら、一つだけ。


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残念ながら、詳しくないために名前はわかりませんでした。
この暑い中元気に咲いているので、自分も負けずに頑張ろうと思います。

2016年8月 8日

出版者の役割表示―和漢古書の出版事項(9)

こんにちは。AS 伊藤です。主に和漢古書を担当しています。

「和漢古書の出版事項」の前々回前回、出版地のことを見ましたので、今回からは出版者のことを見ていきたいと思います。

NCR87R3の2.4.2.2A(古)には「和古書,漢籍の出版者は,記述対象に表示されている名称をそのまま記録する。個人名のみの場合はそれを記録し,屋号のあるものは屋号に続けて姓名の表示等をそのまま記録する。」とありますので、基本的に刊記・奥付のものを図書にあるとおりに記載します。ふつうは「屋号+通称」か「名字+通称」になっていますが、例示されているように「伊勢屋額田正三郎」といった具合になっているものもあれば、「上坂勘兵衞兼勝」のように諱(いみな)があるものもあります。堂号も付されていることもありますが、同じ字の大きさでつづけて書かれているのでなければ、検索上はむしろ含めずに記録したほうがよいと思います。

さて、和古書・漢籍において、刊記見返し等に現れる「出版」を示す語は、きわめて多様です。実際の出版流通過程の順を追って考えれば、以下のようなものがあげられます。
まず、原稿をもとに版木に文字を彫る行為を示すものとして、「刊行」「栞行(かんこう)」「板行(はんこう)」「彫刻」「彫板」「上木(じょうぼく)」「鏤版(るはん)」「剞劂(きけつ)」「刻字」など。とくに彫り始めたことを示す語として、「開版」「開鐫(かいせん)」「開彫」「肇彫(ちょうちょう)」「發槧(はつざん)」など。彫り終わったことを示す語として「刊成」「刻成」「鳩功(きゅうこう)」「功成」などがあります。
このとき、版木の材質に由来する語として「上梓」「梓行」「發梓」「鋟梓(しんし)」「繍梓(しゅうし)」「綉梓(しゅうし)」「壽櫻(じゅおう)」「鐫棗(せんそう)」などがあります。すなわち「梓」の木を使うのが歴史的にはオーセンティックなのですが、これは中国での用語で、日本では版木の材料としてもっとも適していたのは「やまざくら」なのだそうで、それで「壽櫻」といった言葉があります。石版印刷の場合は「上石(じょうせき)」などと言います。
活字印刷の場合は、「活板」「排版(はいはん)」「排活」「集字」「聚珍(しゅうちん)」と言った用語を使います。「排」とは「並べて置く」という意味です。「聚珍」は、「活字」という言葉がどうも俗っぽいということで、中国清朝の乾隆帝が考案させたもので、「珍書を聚(あつ)める」という意味あいになります。

さてまた、完成した版木を印刷することを示すものとして、「印行」「摺印(しゅういん)」「刷印」「承印」などが、印刷したものを本のかたちに製本することを示すものとして「製本」「製作」「調製」「調進」などが、製本されたものを世に出すことを示すものとして「發行」「發兌(はつだ)」「發市」「發客」「頒布」「頒行」などがあります。とくに対価を取って売ることを示すものとして「發賣」「發販」「販賣」「賣捌(うりさばき)」「賣弘(うりひろめ)」「代售(だいしゅう)」「弘通(ぐつう)」「經銷(けいしょう)」などがあり、一方、社寺などの「配り本」であることを示すものとして「施本(せほん)」「施版」「施印」などがあります。費用を募(つの)って出版したことを示す「募刻(ぼこく)」「募刊」「捐刊(えんかん)」といった表記も見ることがあります。

実際の図書においては、出版者や出版年につづけて、これらのもろもろの語で用いられる各々の字を「刻」「梓」「版」など単独で動詞句として用いたり、各々の字を組み合わせたりしていることも多いですし、動詞句に対して「謹刻」「敬刻」など謹慎の意を表したり、「合刻」「同刻」「仝刻」「雙梓」など複数での出版の意を表したり、「新刻」「三刻」など回数を示したりするような副詞句を加えたりすることも、しばしばあります。
また上記のほか、「刊印修」のところで見たような何らかの書誌的来歴をともなうことになる表記として、一度印行されたものを同じ版木を使って再び印刷したことを示すものとして「重印(じゅういん)」「後印(こういん)」「再印」「後刷」など、もとの版木の一部を補修して刷ったことを示すものとして「補刻」「後修(こうしゅう)」など、版木をもう一度彫り直して複製したことを示すものとして「重刊(じゅうかん)」「重刻(じゅうこく)」「再刻」「後刻」など、内容にも修正を加えたことを示すものとして「改刻」「改正」「修刻」「訂刻」「校刊」などがあります(最後のものは責任表示とすべき場合もあります。前述)。
以前書いたように、原本をそっくりそのまま敷き写した場合には「覆刻」「景刊」「摸刻」「影摹(えいも)」など、敷き写しではない場合、とくに中国で出版されたものを日本で再版した場合には「翻刻」「翻刊」「繙刻」「反刻」などといった言葉が使われます。

これらの語は、ほんらいはそれぞれ異なったニュアンスを持っており、たとえば「再版」は同じ版元による彫り直しで、「重版」は別の版元による彫り直しのことだと言います。しかしながら、現物においてはあまり厳密に区別されることなく用いられていることも多いですし、同じ出版者のはずなのに刊記と見返しとで役割表示が違ったりすることも多いですので、まあ細かくはあまり意識しないでもよいでしょう。

基本的にこれらの語をともなうものはすべて出版者になりうると考えてよいですが、ただし、「發賣」「發販」「販賣」「賣捌」「賣弘」「代售」などはやはり頒布者(発売者)として記録したほうがよいと思われます。といって、全国の書店名が列記されている場合など、たんに書店として店頭で実際に売っていることを示しているのみであれば、記録する必要はありません。
また「發行」「發兌」「發市」「發客」「頒布」「頒行」などは、他に出版者があるのならば、頒布者(発売者)と見なしますが、そうでなければ出版者でよいと思います。ただし前の場合でも、出版者が著者と同一か、もしくは著者とのあいだに血縁または版権継承関係がある場合、発行者・発兌者を出版者として扱ったほうがいい場合もあります。このあたりは、「版元」「板主」などといった表記ともからんで、どのように解釈し記録すればよいのか、頭を悩ますところです。

2016年8月 9日

夏の風物詩

本日は「週刊新刊全点案内」1975号の発行日です。
掲載件数は1137件でした。

*こんな本がありました*


金鳥の夏はいかにして日本の夏になったのか?

金鳥宣伝部(編)
ダイヤモンド・ビジネス企画(2016.8)

ものすごく迫力のある主婦が登場したり、俳優やタレントがびっくりするような格好をしていたり...
金鳥のCMはなんともシュールな面白さがありますが、その裏側に迫っています。

白川まり奈妖怪繪物語

白川 まり奈(著)
Pヴァイン(2016.8)

もう一冊、今の時期らしい本を見つけました。
妖怪や怪談の本は他にもたくさん出版されていますが、この本の絵を見た時、怖さで背筋が寒くなりました。
著者は漫画家としてカルト的人気を博していて、妖怪の研究はライフワークだったそうです。薄い和紙のような紙質の部分もあり、古い絵巻物のような不思議な雰囲気を醸し出しています。

2016年8月 4日

山の日

こんにちは、新刊水谷です。
今年から祝日になった8月11日、国民の祝日「山の日」にちなみまして、8月の雑記のテーマは「山」です。

山の日。内閣府のホームページを見てみると、「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」日とのことです。

同所に「国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)」が載っていたのですが、冒頭に
「第1条 自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞって祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを「国民の祝日」と名づける。」
とありました。

...国民こぞって...。そうですね。なにしろ国民の祝日ですものね。

...しかし私、これまで、自発的に山に近付いたことはほとんどありません。

伊吹山を遠くに望む平野に生まれたものの「わー伊吹山が白くなってきたわー寒い寒い」と眺めるにとどまり、ほど近い金華山もお城を見上げるだけ(標高329m、ロープウェーで山頂まで3分なのにもかかわらず)。大学に入って引っ越した先は周囲に山の見えないこちらも平野の中の街。
まあ、山が見えないことをさみしく感じた、ということは多少なりとも山に親しんできたということで...。
...。

ブログのお題にはたと悩み、山、山、山、とぶつぶつ言いながらたどり着いたのがこの本です。
ある意味、究極の登山かもしれません(とこじつけてみる)。


類推の山(河出文庫)」

R・ドーマル(著)
河出書房新社 (1996.7)

シナイ山、オリュンポス山、須弥山、蓬莱の山...シンボリックに、世界の中心としてイメージされる山は各地の神話や伝承に現れます。その、世界の中心たる山に登ろうと企てる人々のお話です。
モデルになった地図上の山とかではなく、「類推の山」と呼ばれるまさに「その山」に、「実際に」登ろうとする、というのがミソです。
ちょっと聞くとスピリチュアルな自己探究の話かという感じですが、そういう高揚とはやや外れた、ほんのりユーモラスでチャーミングな物語です(残念ながら未完)。
尾崎翠の作品にも似た雰囲気がある、といったら少しは伝わるでしょうか...。

古い文庫ですがまだ本屋さんで買えるようです。もちろん図書館でも。
よかったら手に取ってみてください。

2016年8月 3日

きょうのデータ部☆(8/3)

いつの間にか蝉の鳴き声も当たり前な季節になりました。
ついこの間梅雨入りをしていたような気がしていたのに、日の流れは早いものです。

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テラスに出てみると、昨晩降った雨の水たまりがまだ残っていました。
もともとの床の色で分かりづらいかもしれませんが、青空が映り込んでいます。
なんだか今日の天気の良さを象徴しているようでした。

2016年8月 5日

和装本の置き方

今、みなさんが普段、目にする本棚は、本の背を表に見せた縦置きではないでしょうか。
しかし、この縦置きの文化は西洋から入ってきたもので、江戸時代までの本は横にして置かれていました。もし、時代劇で本が縦に置かれていたら、つっこみをいれてもいいと思います。

江戸時代の冊子は、「小口書き(こぐちがき)」といって、現代書で「地」と呼ぶ位置に書名を書き、横積みでもすぐにどの本なのかがわかるようにしていました。そのため、この小口書きが見えるように配架するのが一般的です。

ところで、我が家には和装本(といっても、高価でも由緒正しくもない、持ち主に相応なものです)があります。これを、普通の棚にデッドスペースを作らないように入れようすると、どうしても何冊も重ねて配架することになります。同じセットのものが重なっているのは構わないのですが、異なるセットや一冊物が横積みになっていると、取り出すのが厄介です。縦置きの本棚から1冊取り出すのとは違い、上に重なった本を移動させなくてはならないのですから。

ものぐさな私は、横積みの間から本を引き抜くのが面倒で、棚板がたくさんあればいいのでは?...と、思いはじめました。しかし、既製品に都合のよいものはみつからず。ただ、棚は見つかりませんでしたが、うまい方法に気づきました。我が家にはDIYの大好きな父がいたことを!

「こんな棚、作れる?」と父に言ってみると、作れるところを示したかったようで、家族総出の作業の末、写真の棚が完成しました。

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高さ180cm、幅180cmの大作が出来上がりました! こうやって、200点(500冊くらい)を一度に並べてみると、ちょっと名のある蔵書家の書庫のように見え、安かった本もお高いように思えてくるものです。

※ちなみに、それぞれ1冊目から舌のように出ている白い紙には、書名・出版事項などが書いてあります。小口書きの位置になるように、差し込むようにしています。

(AS 小野澤)

2016年8月 2日

夏バテにメキシコ料理

本日は「週刊新刊全点案内」1974号の発行日です。
掲載件数は1344件でした。

今月の表紙はゴーヤ。
通勤途中のおうちのグリーンカーテンにもわんさかなっています。
食べきれるのかな? なんて余計な心配をしてしまいます。

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*こんな本がありました*


メキシコ料理Tepitoレシピブック

滝沢久美(著)
パルコエンタテインメント事業部(2016.7)

こちら、じつは小松の好きなお店の初のレシピ本です。

夏本番、食欲が湧かなくなることはよくありますね。
そんな時は、酸味や辛味のあるお料理で目先が変わると食が進むかも。
韓国料理、タイ料理...。、メキシコ料理も辛くて刺激的なイメージがあります。

この本にも、そんな刺激的なお料理の数々がのっている...かと思いきや。

じつは著者の異色の経歴のためか(典拠ファイルを作成しているとこんなところが気になります)、普通のメキシコ料理のレシピ本とは一味違っているようです。

著者の滝沢久美さんは、茶道家で懐石料理を修業した方。図書のコラムによれば、メキシコ出身の音楽家を伴侶とされて、ご主人に故郷の味を食べさせたい一心でメキシコ料理を作り始めたとのこと。

なるほど~。

レシピを見ていくと、彩りはふんだんですが、おだやかで家庭的な味が想像できるものばかりです。エキゾチックな香りと彩りが食欲をそそって、食べてみれば体に優しくて、気持が休まる。そんなお料理がたくさん紹介されています。

掲載されているレシピの中で小松が好きなのは、店名を冠した「テピート風チキンスープ」。トリガラと鶏のむね肉、クズ野菜から丁寧に作る鶏のだし汁を使って、少量ずつ違う種類の具が入った、不思議に優しい味のスープです。だし汁のレシピもしっかり掲載されています。

今年は、この本で自宅でメキシコ料理にも挑戦してみようと思います。
皆さまも、体に優しい異国のお料理で、暑い夏を乗り切ってみてはいかがでしょうか。


2016年8月 1日

動物界のキラキラネーム~新設件名のお知らせ2016年7月分~

明日発行の『週刊新刊全点案内』は、巻頭に「新設件名標目のお知らせ」を掲載しています。
新設件名は、TRC MARCで件名標目を新たに採用したものという意味で用いていますので、NDLSHから採用したものも含まれています。

2016年7月は2件の件名を新設しました。
ただ、どちらもブログで取り上げるのは地味すぎる法律名...ということで、今回は学習件名での新設件名についてご紹介しようと思います。

学習件名は、子どもたちが学習課題や自分の興味で何か調べようとするとき、調べようとすることがら(件名)が「どの本」の「どこに」書かれているかをあらわした、いわば「子ども用の件名」です。子ども向けのノンフィクションを対象に付与しています。
基本的には1ページ以上の記述があれば採用しているので、一般件名にはないような、かなりマニアックな件名があったりします。
特に、最近は「へんないきもの」ブームで、不思議な名前をもった動物名がたくさん新設されています。以下はその一例です。

「ぶんぶく」
「ごみむしだまし」
「てづるもづる」
「おおたるまわし」
「うしつつき」
「りゅうぐうのつかい」
「かつおのえぼし」

...何の動物かわかりますか?
全部わかったら動物博士の称号を差し上げます!


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博物館、図書館、文書館、公民館(MLAK)東日本大震災被災救援情報
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