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2025年4月 アーカイブ

2025年4月30日

立ち読みの魔力

昨日は「週刊新刊全点案内」2404号の発行日でした。
掲載件数は1099件でした。

*こんな本がありました*

思えば物心ついたときから、「漫画が立ち読みできる本屋はどこか」「どうすれば立ち読みできるか」ということの探究に、心血を注いできたと言っても過言ではありません。
実家から一番近くにあった本屋の漫画が、ある日突然すべてシュリンクに包まれたときの衝撃は今だに鮮明です。その日以来、もっぱらシュリンクのかかっていない古本屋が立ち読みのターゲットとなったのですが、古本なんぞ買いそうにない小学生が店内に居座っていたら、それは邪魔に決まっています。「本当にはたきで追い払われることもあるんだな」と学習したのもその頃です。

最近はさすがにそこまで漫画の立ち読みにこだわることもなくなりましたが、疲れがたまってくると、本屋にいってぶらぶらいろんな本を物色するのが、何よりのストレス解消になっています。
これほど立ち読みに執着しているのは、世の中で私くらいなものかと思っていたのですが、どうやら歴史的に見ても、日本人にとって立ち読みという文化は非常に重要なようです。

「立ち読みの歴史」

小林昌樹(著)
早川書房(2025.4)

こちらの本では、立ち読みがどのように日本の大衆に根付いていったのか、書店の歴史や読書習慣の進化などとともに詳細に追っています。立ち読みというなかなかニッチなテーマを深く掘り下げていて、非常に興味深いです。
本書の中でも触れられていますが、最近ではネット書店で簡単に試し読みができるようになっています。しかし、それは立ち読みとは似て非なるもの。たくさんの本が並んでいる本屋で、「これ面白そうだな」と何気なく手にとってパラパラめくる、その醍醐味はネット書店では決して味わえません。
町の本屋が次々と消えていき、冒頭に書いた近所の本屋もなくなってずいぶん経ちますが、立ち読みができるということがリアル書店の強みでもあると思うので、これからもぜひ存続していってほしいものです。

2025年4月25日

ADEAC2025春の公開情報その3

先週・先々週に続き、年度の境目に新規更新された機関をご紹介します。

◇『坂出市/坂出市デジタルアーカイブ』(3月31日新規公開)
瀬戸大橋の四国側玄関口にあたる香川県坂出市のデジタルアーカイブです。
この地域は古代から製塩や交通の要として栄え、市内に文化財や見どころがたくさんあります。
そんな各地の写真・紹介をドローン空撮パノラマやオンライン地図から探したり、すごろくゲームを通じて坂出市の偉人ゆかりの地を巡ったりといったコンテンツを通して、坂出市の魅力に触れることのできるページです。
興味を持ったら「文化史坂出」シリーズや「坂出市史」の刊本を読んでより深く理解することもできるようになっています。

◇『近畿大学/貴重資料デジタルアーカイブ』(4月1日新規公開)
近畿大学中央図書館が所蔵する「貴重書」「準貴重書」「特別コレクション」の一部をデジタル化・公開しています。
和書・洋書の区分で資料を探すことが可能です。
欧米人による日本関係古地図をまとめた「西洋古版日本関係地図集成」や江戸時代の地誌資料を集めた「島本文庫」等の5つある特別コレクションはいずれも内容が非常に充実しています。
さらに、「教科書に載る世界の有名な書物」「おおさかむかし案内」等の魅力的なテーマでも資料を探すことができて、見ているだけであっという間に時間が流れるデジタルアーカイブです。

◇『東京都立大学図書館/東京都立大学図書館デジタルアーカイブ』(4月1日新規公開)
東京都立大学図書館本館に所蔵されている9つの文書群からなる貴重資料のうち、幕末に二人の老中を輩出した水野家の資料を一部公開しています。
当時の蝦夷地や江戸市街・台場・島しょ部を描いた絵図など、当時を研究するうえで貴重な資料がIIIF形式で公開されています。

◇『西宮市/にしのみやデジタルアーカイブ』(4月1日新規公開)
2025年4月1日に市制施行100周年を迎えた兵庫県西宮市のデジタルアーカイブです。
市が所有するさまざまな歴史資料(写真・古文書・貴重書など)が公開されていて、資料のカテゴリーや西宮ゆかりのテーマから探すことはもちろん、ランダム表示のフォトギャラリーや考古資料や史跡の3D・パノラマなど特集コンテンツも充実しています。
特集の中の「子どものページ」ではにしのみやデジタルアーカイブの使い方を説明する動画や、西宮で有名なお酒づくりの産業が発展してきた歴史が紹介されています。
どこからページを見たらいいかわからないという方は、ぜひこのページからご覧ください。

◇『桜川市/桜川市デジタルアーカイブ』(4月1日本公開)
茨城県西部に位置する桜川市の歴史や文化を紹介するデジタルアーカイブです。
桜川市の桜と桜を守る人々の活動」のページでは、歌枕の地とされ「桜川」という名前の由来となったヤマザクラとそれを守る人々の歴史について、掲載された地域資料等を引きながら紹介しています。
ほかにも桜川に伝わる伝統芸能の動画や、翻刻付きの古文書、考古資料、国史跡・真壁城跡のバーチャルツアーなど、魅力的なコンテンツが満載です。

◇『文教大学/文教大学ミュージアム』(4月1日新規公開)
文教大学付属図書館や学部・学科が所蔵する貴重資料を公開するデジタルミュージアムです。
文教大学の歴史や越谷・湘南・東京あだちにある3つのキャンパスの紹介のほか、付属図書館(越谷図書館)が所蔵する「史記」を中心とする漢籍コレクションフランス教育史料の一部が掲載されています。
今後、更なる貴重資料や、大学の歴史を知る写真や資料が順次追加公開されていくので、更新をお楽しみに!

以上、3週に分けて年明け以降の新規公開機関を紹介しました。
この他にも、リニューアル機関や追加公開された魅力的な資料・ページがたくさんあります。
今回紹介しきれなかった分の機関もADEACのお知らせページから探せますので、ぜひ気になる機関を探してみてください。

気になるその先を原作本で!~MARCや検索のはなし~

ごく個人的なことなのですが、映画「ウィキッド ふたりの魔女」の公開を心待ちにしていました。
ウィキッド(悪い魔女)として忌み嫌われた緑の肌を持つ魔法使いエルファバと善い魔女として慕われたグリンダをめぐるミュージカル映画で、オズの魔法使いの前日譚となるお話しです。
キャッチーな音楽と美しい映像、世界観を際立たせる面白い機構、どれをとっても素晴らしいので、機会がありましたら見てみてください。

注意点としては、前後編に分けて公開されるため現時点では映画館で結末を知ることができないことです。
結末を知る方法としては、ミュージカル版を観劇すること、そして原作本を読むことの2つ。


原作本の日本語版初版は「オズの魔女記」のタイトルで1996年に刊行されました。
映画タイトルと共通するキーワードは「魔女」だけですから、この本にたどり着くのは少し難しいかもしれません。
しかし、TRC MARCでは、映画やTVドラマなどの原作になった図書に対して、そのタイトルを「メディア化タイトル」として入力しています。

オズの魔女記
グレゴリー・マグワイア(著) 広本和枝(訳)
大栄出版(1996.10)

メディア化タイトル:ウィキッド ふたりの魔女

この項目を活用することで、映画「ウィキッド ふたりの魔女」から原作本「オズの魔女記」へたどり着くことができるのです!


2007年、2024年にそれぞれ新たに訳しおろされたものが「ウィキッド」というタイトルで刊行されており、もちろんこちらにも「メディア化タイトル:ウィキッド ふたりの魔女」が記録されています。

ウィキッド 上
グレゴリー・マグワイア(著) 服部千佳子(訳)
ソフトバンククリエイティブ(2007.10)

メディア化タイトル:ウィキッド ふたりの魔女
(下巻、早川書房 2024年刊の図書にも同様に記録されています。)


映画以外にも続きがどうしても気になるドラマやアニメのその先を、一足お先に読んでみるのもよいかもしれません!

2025年4月24日

まるごと推せる

今月の雑記は「わたしの推し作家」。

そこそこ長く生きているので、好きだった作家は追いきれず、漫画家は連載が終わると切れてしまい...一人の人を推し続ける情熱はあまりないようです、と書くつもりでいたのですが、先週の金曜ロードショー予告を見て気づきました。「君たちはどう生きるか」GWに地上波初放送!宮﨑駿ならまるごと推せそうです。

家人はラピュタが至高・トトロより後は劣化だなどと言うのですが、私はハウルもポニョも大好きで、君たちは~ではよくわからないけどすごいものを見たという不思議な感動でジブリ映画史上最多量の涙がでました。ストーリーやモチーフはとっ散らかり先の見えない展開の中で、自分が生きてきてずっととらわれてきたり持っていた動きやシーン、感情のストックを衒いなく出しているところに感動したのだと思います。自分の中身をだすとなると、作家性にとらわれたりぐじゃぐじゃしたりしがちだと思うのですが、子どもが胸をはるように堂々と出している作風が好きです。虚飾や忖度の言葉があふれる中、とても清々しく感じます。ただ、ご本人は世の評価は気にしない~とみせつつ観客動員数はとても気にするという話もあり、そんなところもチャーミングと思えるくらいにまるごと推せていると思います。GWの金曜ロードショーが楽しみです!

2025年4月23日

きょうのデータ部☆(4/23)


p20250423.jpg

しばらく晴れが続いたと思ったら午後からずっと雨でした。
桜は終わってしまったけれど、公園の樹木の葉が茂ってきて、緑色が雨に濡れて美しい。

2025年4月22日

コーヒーと仲良くなろう!

本日は週刊新刊全点案内2403号の発行日です。
掲載件数は1002件でした。
 
*こんな本がありました*
コーヒー語辞典 第2版

山本加奈子(著)
誠文堂新光社(2025.4)

 
みなさんはコーヒー、お好きですか?
...お恥ずかしながら、わたしはあまり得意ではありません。
ちょっぴり口に含んだだけでも、舌にいつまでも残る苦味。目覚ましにはぴったりかもしれませんが、好みの飲料ではなく...
 
そんなわたしなので、「コーヒー語」なんていう言葉があることも、またコーヒーにまつわる様々な用語があることも全く知らず、この本を手に取った時にはちょっとした衝撃でした。
辞典にできるほどのたくさんの用語が、コーヒーの世界にあるなんて!!
(しかもこれ第2版です。版を重ねるほどのパワーがコーヒーにあるのです!)
 
「スマトラ式」「フラットビーン」「コーヒーベルト」etc.
カラフルなイラストたっぷりに各種用語が解説されているので、目で見ても楽しく、読み物としても面白く...
ふふ、コーヒーとちょっぴり仲良くなれた気がしました。
 
MAXコーヒーしか飲まないわたしですが、
この本を片手に、自分に合った(飲める)コーヒー探しをするのも楽しそうです。

2025年4月21日

ADEAC2025春の公開情報その2

先週に続き年度末にADEACで公開された機関をご紹介します。
今回は3月下旬~月末にかけての新規公開機関を取り上げます。

◇『にかほ市/デジタルミュージアム』(3月24日新規公開)
秋田県にかほ市にある4つ博物館系施設の所蔵資料や、市にゆかりのある各種資料を掲載しています。
にかほ市の魅力を広く知ってもらうために、地元企業と連携して製作された「にかほのキセキ」というにかほ市の歩みや偉人を紹介するページや、子供向けの地域学習ページ他自治体との連携コンテンツを含めた特集ページなどを数多くそろえています。
その他にも、ドローンによる空撮画像を市内の貴重資料とリンクさせたり、メタバースの世界で資料の展示を行ったりと、新しい試みを含めて非常にたくさんのコンテンツが公開されています。
各館の紹介ページもそろっているので、このデジタルミュージアムからにかほ市の歴史や魅力を知り、現地を訪れるきっかけにしていただきたいです。

◇『高知大学/高知大学デジタルコレクション』(3月25日新規公開)
高知大学学術情報基盤図書館が所蔵する貴重資料、郷土資料の一部をデジタル化し、公開しています。
郷土資料として、土佐藩の法令集である「憲章簿」、地理歴史が記された「南路志」、ジョン万次郎(中濱万次郎)が訳した本邦初の英会話入門書「英米対話捷径」などが公開されています。
また、高知県出身で京都帝国大学初代人文科学研究所長を務めた故小島祐馬博士の中国学研究に関する和漢洋の文献、フランス社会経済思想史等の文献が体系的に集められた蔵書(小島文庫)や、19世紀以前の貴重な洋書など、幅広い資料が掲載されています。

◇『旭川市/旭川のあゆみ』(3月25日新規公開)
旭川の年表や写真・地図などの歴史資料をデジタルデータ化し、だれもがいつでもどこでも歴史に親しめるようインターネットで公開するものです。
現在は直近の『新旭川市史』で編纂された昭和20年までの内容が「年表でふりかえる旭川」「地図で比べる旭川」「書籍で調べる旭川」など様々な形で公開されています。
「書籍で調べる旭川」では国立国会図書館が開発したOCR処理プログラム「NDLOCR ver.2」を利用して、画像から全文テキストデータを検索閲覧できるようになっています。
自治体による公開としては初の試みです。

令和6年度(2024)に事業が再開されるにあたり、より多くの人たちに伝わるデジタルアーカイブのかたちで公開が始まりました。
今後は戦後から現在までの内容が充実していき、幅広い世代が歴史を身近に感じられるコンテンツの整備も進められています。


◇『宮崎県立図書館/デジタル宮崎県史』(3月28日新規公開)
宮崎県の長い歴史や豊かな文化について、数多くの専門家による調査と記録資料をもとにまとめられた『宮崎県史』のうち、学びや研究に適した資料となる巻冊がデジタル・公開されています。
『旭川市/旭川のあゆみ』と同じく、国立国会図書館が開発した「NDLOCR」の仕組みを使って画像内のテキストを検索することができるため、宮崎県に関する調べものにはぜひご利用いただければと思います。
公開されている内容も通史編(原始・古代~近・現代)・資料編(民俗1、民俗2)・別編(民俗、年表)と非常に充実しているので、宮崎県に関する歴史や情報がぎゅっと詰まっています。


◇『都城市/みやこのじょうデジタルアーカイブ』(3月28日新規公開)
宮崎県都城市が所蔵・保管する都城の歴史や文化を示す貴重な資料をデジタル化して公開しています。
主なコレクションとしては、領主であった都城島津家が明治以降に居住した邸宅である都城島津邸(現在は博物館施設として整備)に保管されている史料を、伝来した家ごとに分類し紹介しています。
スペシャルコンテンツとして、都城地域について理解を深めることができる「都城を知る・学ぶ」や、都城島津邸の内観・外観のバーチャルツアーを楽しんだり所蔵資料を閲覧したりできる「都城と都城島津邸」、貴重史料の一部を翻刻して紹介している「貴重資料を翻刻で読む」などの画面も用意されています。

今回の紹介は以上です。次回の更新では3月末~4月初めに公開された新規機関を中心にご紹介します。

2025年4月17日

遊び心のあるうつわ

今月の雑記のテーマは「わたしの推し作家」です。


私の推し作家は、というより厳密には推し窯元になってしまうのですが、「よしざわ窯」です。益子焼の窯元で、ネットショップも運営されています。

きっかけは2年前、ふらっと京都の道具屋さんに立ち寄ったときのこと。私はそこで首長竜のシルエットをした美しいお皿に出会いました。
なめらかで深みのあるダークグリーンの釉薬と、遊び心のあるかわいらしい造形。しかも意外にお手頃価格!

欲しい! という気持ちが湧いたものの、旅行中の身の上。
キャリーバッグでは首長竜の繊細な首を破損せずにうちまで連れ帰れる自信が持てず、お店からの発送もしていないと聞き、そのときは購入を断念したのでした。

後日、あの日見た首長竜をGoogle検索で探し求め、よしざわ窯のネットショップを発見。
あなた、プレシオサウルスっていうのね!

よしざわ窯では他にも様々なデザインのうつわを製作・販売しているようです。
動物をかたどったユーモラスなものからアンティーク風の洋皿まで、眺めていると時間が溶けていってしまいます。トリケラトプスのお皿もいいな......。

2025年4月16日

きょうのデータ部☆(4/16)

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裏の公園のハナミズキが咲き始めました。
ピンク色の方が高価だとどこかで読んだことがあるけれど、白色の花の清々しさが良いのです。
満開まであと少し。

2025年4月15日

めくるめく頭足類の世界

4/15は週刊新刊全点案内2402号の発行日です。
掲載件数は1103件でした。

「タコ・イカが見ている世界」

吉田真明(著)
創元社
(2025.4)

食べると美味しい。賢いらしい。目の大きさの穴があれば通れてしまうらしい。(これはタコだけ?)
私がタコやイカについて知っていることといえばこれくらいで、そんな私のようなズブの素人でも楽しく読めそうなタコ・イカ入門書がこちらの本。
動物としての生態はもちろん、タコやイカの精神世界にまで思いを馳せることができる一冊です。
第一章はそもそもタコやイカに自我があるのか?という点から論じ始められており、各章のトピックがどれも興味深いです。

「恋するタコ・イカ」「9つの脳を持つタコ」「タコは痛みを覚えている」「タコの知性の秘密をゲノムから探る」――

最新研究が解き明かすタコ・イカの世界を覗いてみませんか?

2025年4月14日

ADEAC2025春の公開情報その1

今年2~4月にかけてADEACで新規公開されたデジタルアーカイブを、今日・4/21・4/28の3回に分けてご紹介します。
今回は2月から3月半ばの新規公開機関をご紹介します。

◇『曹洞宗大本山總持寺デジタルアーカイブ』(2月26日新規公開)
曹洞宗大本山總持寺が継承してきた禅・曹洞宗の教えや貴重な文化財・寺宝に触れることができるデジタルアーカイブです。
令和6年に大本山總持寺の開創者・瑩山禅師の700回大遠忌を迎えることを機縁として公開されました。

總持寺がどんな寺院か、どのような資料があるかを知りたい場合は「總持寺の歴史」のページで所蔵史資料を軸に總持寺の歴史を時系列に沿って学べます。
こどもむけに作られた「日本文化と禅」では、總持寺で修行しているソウジくんが總持寺や仏教に関するさまざまな疑問にわかりやすい解説や参考資料を見せて答えてくれる「教えて!ソウジくん」があります。
このページで修行して總持寺に詳しくなったら、「クイズ めざせ、總持寺マスター!」に挑戦してみてください。
内容が充実していて大人でも楽しめます。

◇『平塚市図書館/ひらつかデジタルアーカイブ』(3月11日新規公開)
神奈川県平塚市内の図書館をはじめとする公共施設の所蔵資料を閲覧できるデジタルアーカイブです。
様々な資料がありますが、その中でも「七夕まつりコレクション」「平塚大空襲」に関する資料がピックアップされています。

七夕まつりコレクション」では日本三大七夕祭りの1つに数えられる平塚の七夕まつりに関連する資料を種類別・年代別に分け、時代ごとの雰囲気を感じることのできるページです。
平塚大空襲」の特集ページでは、空襲の様子や当時の市民生活を伝える資料のほか、実際に空襲を体験された方による証言のインタビュー動画が公開されています。
平塚について学べる貴重な資料がたくさん公開されているので是非ご覧ください。

◇『神奈川大学日本常民文化研究所/漁場図デジタルコレクション~描かれた海~』(3月14日新規公開)
神奈川大学日本常民文化研究所が日本全国の海村から収集した約700点の漁場図のうち約100点を公開しています。
多くは江戸時代から戦前にかけて作成されたもので、各地域の文化や経済活動を知るうえで非常に価値のある資料です。

資料名・地域名・作成年代等の基本的な情報で探せるのはもちろん、漁場図に描かれた「磯」「根」「山」「魚付林」「ヤマアテ線」「漁具」などの景観情報をキーに資料を探して高精細画像をご覧いただけます。
さらに、漁場図の絵図面に書き込まれた文字情報(くずし字)を翻刻して、現代の文字で閲覧できます。
一部の資料では絵図にくずし字を重ねて表示できるようになっています。

今後も順次公開数が増えていく見込みです。

◇『鈴鹿市文化財課/みんなの郷土資料室デジタルアーカイブ』(3月14日新規公開)
三重県の北中部に位置する鈴鹿市の郷土資料を公開するデジタルアーカイブです。
様々な資料がある中で「鈴鹿の伝統技術・伊勢型紙をみる」「鈴鹿の記憶」という2つの特集ページがあります。

鈴鹿の伝統技術・伊勢型紙をみる」の特集ページでは、日本の染色史に大きな影響を与え国の重要無形文化財に指定された伊勢型紙の技術やコレクションを紹介しています。
人間国宝に指定された職人が作成した精緻な型紙の画像を見たり、技法・文様から型紙を探して閲覧できます。
ページの最後には伊勢型紙の用語集も掲載されているので、事前知識がない方も楽しく型紙を鑑賞できます。

鈴鹿の記憶」では、昭和17年に軍都として誕生した鈴鹿市の戦中・戦後の歩みを振り返ることができます。
鈴鹿市が市制70周年記念事業として75歳以上の市民から戦中・戦後の証言を集めた『鈴鹿の記憶-戦中・戦後の証言と資料-』の刊本画像や、そこに掲載された写真および伊勢新聞のデータベース、昭和13年以降の鈴鹿市の主な出来事を取り上げた略年表から、現在に至るまでの鈴鹿市の歩みをご覧いただけます。

◇『岡山市立図書館/岡山市立図書館デジタルアーカイブ』(3月21日新規公開)
大正7年(1918)に開館した岡山市立図書館が「岡山のことなら何でもわかる図書館」を目標にかかげ収集してきた多様な資料の一部が収録されています。

特集コンテンツとして、弘化4年(1847)岡山城下に架けられた京橋の渡り初め式を描いた「備前岡山京橋渡り初図」に動きを付けて町の賑わいを示したアニメーションや、城下の豪商・国富家に伝わった古文書を翻刻を見ながら読み解けるページが用意されています。

また、岡山城・後楽園・京橋など市内の有名な場所・人や、身近なテーマをもとに資料を探すことができます。
「岡山について調べものがしたい」という方にぜひ使っていただきたいデジタルアーカイブです。

今回の紹介は以上です。次回の更新では3月末に公開された新規機関をご紹介します。

2025年4月 9日

きょうのデータ部☆(4/9)

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ショールームにも春が来ました!
会議中にお花見ができて素敵...
(もちろん採ってきたのではありませんよ)

2025年4月11日

漢字表記のありがたみ ~典拠のはなし~

今シーズンの連続テレビ小説は、アンパンマンの作者の「やなせたかし」さんが主人公のモデルになっていますね。やなせたかしさんのご本名は「柳瀬嵩」とのこと。

やなせ氏に限らず、児童書や絵本の著者は、ひらがな、カタカナ表記が多いものです。文字を覚えたばかりのこどもが読むには嬉しい配慮ですが、個人名の典拠の仕事をしているとやや緊張するポイントです。

先日、幼児向けのたべもの絵本の典拠作業に入りました。


「トマト」
いまいまみ(文)かどかわようこ(絵)

福音館書店(2025.4)


図書の責任表示は「いまい まみ」。

TRCの典拠ファイルには「いまい まみ」のファイルはなし。

初めて出現した著者として新規で典拠ファイルを作成しますか? いいえ。ここで一呼吸おいて...。

今度は「イマイマミ」と読みで検索すると、料理研究家の「今井真実」がヒット。「たべもの絵本」であることから、同一人の可能性が高いと考えられますが、本体やスリップには漢字表記がないため、確信が持てません。

Web検索すると、福音館書店さんの公式ウェブマガジン「ふくふく本棚」に、こちらの本の新刊紹介と出版にまつわる特別エッセイ(もちろん今井真実さんの著者紹介もあり)あり。
ご本人のSNSにも「見本が出来上がりました」として、こちらの本の紹介が投稿されていました。

ここまで作業して、ようやく今井真実さんが新たに「いまい まみ」の表記で絵本を出版されるという裏付けがとれたので記述形を作成します。

統一形 今井/真実
記述形 いまい/まみ

これで一安心。

ひらがなやカタカナの表記は、パッと見簡単そうですが、典拠作業をする場合は、漢字表記と比較すると情報量が減ります。上の例のように、漢字表記の姓名に対してひらがな表記が出現した場合以外にも、「わたなべゆうこ」と責任表示があった場合、その著者がすでに典拠ファイルのある「わたなべゆうこ」なのか、新しく出現した「わたなべゆうこ」なのか(はたまた今回のように漢字表記の誰かの別表記なのか)判別することが難しくなります。

それでも、大人向けの図書であれば著者紹介に漢字表記や本名が記載されていることが多いのですが、特に絵本は著者紹介がないことがとても多い。

それではどうするかというと、まず図書のまわり、図書に挟まっているスリップや解説に漢字表記がないか、よくよく確認します。そして、そこになければ、今回の例のように出版社のホームページの新刊情報や、著者のHPやSNSに情報が載っていないか確認。最終的に、どうしても同一人(あるいは別人)とする根拠がみつからず、確信が持てない場合、出版社に確認することもあります。場合によっては過去作を確認するために図書館で本を借りてきたり、調査に出向くこともあります。

かわいらしい絵本を見つめてうーんと考え込んでいる姿は、事情を知らない人からしたら不思議かもしれませんが、「異なる表記の同一人をまとめて検索できる」「同じ表記の別人を分けて検索できる」という、典拠ファイルの2つの大きな役割に関わってくる業務なので、ここは悩んで悩みすぎることはありません。じっくり調査します。

ぱっと見難しそうな漢字表記よりも、簡単に見えるひらがな表記の方が神経をつかう。むしろ文字数や画数が少なければ少ないほど、ドキッとする、という典拠作成チームの心理でした。

これは欧文表記でもしばしば起こる問題です。漢字には時に苦労もさせられますが、こういうときには漢字表記のありがたみを感じます。

2025年4月10日

園芸

今月の雑記のテーマは「わたしの推し作家」です。


わたしの推し作家はカレル・チャペック。

特に「園芸家12カ月」が好きです。

「1月の園芸家は〜」「2月の園芸家は〜」というふうに12カ月を綴っていくものですが、これは園芸にはまってしまった人の生態を書いたもの。

暴れまわったあげく決して期待通りのところからは水を出さない「陰険な」ホースと格闘し、
最高級の芝生の種を植えたのに生えるのは雑草ばかりで「いっそのこと雑草の種をまくべきかもしれぬ」と諦念の観にかられ、
人間の脚が昆虫のようだったらどれほど便利に花を踏まずに作業できることかと嘆きます。

それでもやっぱり、考えるのは庭のことばかり。

冬には次の春に買う苗を選ぶためにカタログを読みあさり、
春には新しい苗を植えるスペースがわずかでも残っていないかと庭中を探しまわって、
ちょうどいいだけの量の雨と、暑すぎず寒すぎない気温とを授けてくださいますようにと神さまにお祈りします。

そうそう、好きなものができると、こうなるのよね。
国や時代が違っても、のめりこんでしまう気持ちは同じ。
うまくいってもいかなくても、好きなものは好き。夢中になれることがあるだけで幸せ。
読んでいて楽しくなる作品です。

2025年4月 8日

いざ中世ヨーロッパへ

本日は「週刊新刊全点案内」2401号の発行日です。
掲載件数は1152件でした。

*こんな本がありました*

「史料と旅する中世ヨーロッパ」

図師宣忠、中村敦子、西岡健司(編著)
ミネルヴァ書房(2025.4)


きちんと調べたわけではないのですが、ここ数年、中世ヨーロッパに関連した書籍の刊行が以前より増えているように感じます。
いわゆる時代史や事件史だけでなく、女性史、修道院、動植物などテーマを絞ったものもありますし、文書だけでなく写本の挿画などからアプローチしたものも。

ファンタジー系の小説、漫画など、創作の設定の参考にしてみようと手にとって、歴史好きになる方もいそうですね。

今週の一冊は、歴史本を読んでいるうちに、歴史研究にも興味がでてきた方向けかと思います。
中世ヨーロッパの史料というと「まさかラテン語とか...」と一瞬手をひっこめそうですが、ご安心ください、日本語訳を用いて史料の読み解き方が解説されています。
新学年がはじまる4月、学生さんもそうでない方も、歴史学の道への一歩を踏み出してみてはいかがでしょう。

2025年4月 7日

正義の見方 ― 和漢古書の書名の漢字:「疏」

こんにちは。AS 伊藤です。主に和漢古書を担当しています。

前々回、「注」について見ましたが、その「注」にさらに注釈をつける場合もあります。こうした「注釈の注釈」のことを「疏」と言います。「琵琶湖疏水」とかの「疏」の字ですが、『説文』には「疏、通也」とあり、地に注がれた水を、地をきりひらいて通していく、といったイメージになります。
前回まで見てきたように、上古の聖人による「経」に対して、春秋戦国から漢代にかけて賢人によってつけられた注釈が「伝」、漢代以降につけられた注釈が「注」ということで、それにまたつけられた「疏」は、だいたい南北朝時代以降に作られています。とくにこの時代(5~6世紀)前後に作られた、儒教・仏教・道教の経典の文義・語義に対する「疏」は「義疏(ぎそ)」と称され、魏の何晏(か・あん)の『論語集解(ろんごしっかい)』への疏である皇侃(おう・がん)の『論語義疏(ろんごぎそ)』や、日本に孤本の残巻を存する『孝経述議(こうきょうじゅつぎ)』などが代表的です。聖徳太子の撰と伝えられる『法華義疏(ほっけぎしょ)』もそうしたひとつということになります。

つづく唐の時代になると、二代太宗の命により、孔子三十二世の子孫という孔穎達(こう・えいたつ(読みぐせで「くようだつ」とも))によって、南北朝時代の儒教の義疏を集大成した『五経正義』が編纂されました。「正義」というのはjusticeではなく、「義(意味)」を正す」という書名です。この『五経正義』は、宋代には経・注と合刻されて『十三経注疏』に収録され、経伝の注釈のスタンダートとしての位置を占めていますが、逆にそれがためにそれ以外の義疏の多くが亡佚したという副作用も生じています。
もちろん、それ以後も経書の注釈というのはとぎれずに作られつづけ、とくに清朝の考証学者によって『尚書今古文注疏』(孫星衍)『周礼正義』(孫詒譲)『論語正義』(劉宝楠)『孝経鄭注疏』(皮錫瑞)『孟子正義』(焦循)『爾雅義疏』(郝懿行)といったすぐれた注疏の書物が数多く書かれています。

「正義」のように「ただす」という動詞の意味の「正」を用いたタイトルとしては、「~正誤」というものがあります。これは「正誤表」のように正しいのと誤っているのとを並べているのではなく、あくまで「誤りを正した」のが「正誤」です。「正譌(せいか)」「正訛(せいか)」といったのも同様です。「正」の字のかわりに、「訂誤」「刊誤」「校譌」といった語を用いている書物もあり、これらの一文字目はみな「校正する」という動詞句であるわけですね。
「~糾謬(きゅうびゅう)」「~匡謬(きょうびゅう)」といったタイトルのものもあります。「誤謬をただした」という意味で、単なる文字校正をしているだけのものもありますが、それ以前の論述の内容を誤りだと決めつけてしりぞけているという、かなりきびしいニュアンスが感じられる場合もあります。
これらのタームを用いたものは和書でももちろんあり、香川景樹の『古今和歌集正義』、文雄(もんのう)の『三音正譌(さんおんせいか)』、太宰春台の『倭楷正訛(わかいせいか)』、日尾省斎の『詩格刊誤(しかくかんご)』、清水浜臣の『歌辞要解糾謬(かじようかいきゅうびゅう)』(伴資規(ばん・すけのり) の『歌辞要解』を補訂したもの)といったタイトルの書物が作られています。

2025年4月 3日

推しの器

4月のブログ雑記のテーマは「わたしの推し作家」です。
最近「推し活」という言葉が一般的になっています。そしてまた、作家が自分の作品をインターネット上で公開することもわりと一般的です。それは、今までよりも作り手との距離が近くなってるということ。そこで、"あなたの推しの作り手さんを教えてください。ジャンル問わず"ということでこのテーマを設定してみました。

わたしの推し作家は陶芸家さんです。数年前、金沢に旅行に行ったとき、たまたま入った陶芸屋さんの九谷焼の器にひとめぼれしました。
もともとカラフルなイメージの九谷焼。呉須と呼ばれる黒色の線と五彩と呼ばれる五色の絵の具(紺青・赤・紫・緑・黄)で着色されているそうなんですが、伝統的な色遣いと図案に今風のかわいらしさがミックスされた器がとっても素敵で。旅先で買ってもいいのかな、荷物になるし...と店頭でひたすら迷っていたのを覚えています。
結局、一期一会の誘惑に負けて購入してしまったのですが、家で眺めてもやっぱりかわいい!
お店で作家さんのお名前をうかがったので、また出会う機会があったら別の器も買ってみたいと思ってます。

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2025年4月 2日

きょうのデータ部☆(4/2)

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先週の暑いぐらいの天気であっという間に桜が咲きましたが、その後は雨ばかり。曇り空の下、もう散り始めている姿を収めました。

2025年4月 1日

知恵の結集

本日は「週刊新刊全点案内」2400号の発行日です。
掲載件数は1372件でした。
今月の表紙はこちら。

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4月といったら桜(最近は温暖化で満開が3月下旬なんて事もあるけれど...)
で、
桜の季節の和菓子代表、さくら餅
小麦粉の生地を焼いた物でこしあんを巻いた関東風
粒あんを餅米で包む関西風

ちらほら花びらが舞い散る桜の木の下で
お酒ではなく、美味しいお茶で桜餅を頂く
そんな穏やかでほっこりとしたお花見をイメージしながら描いてみました。

(Juri)


*こんな本がありました*

「民具のミカタ博覧会」

日高真吾 加藤幸治(編)
誠文堂新光社(2025.3)

1970年の大阪万国博覧会のために世界各地から収集された民具と、その同時代の日本で収集された民具のうち、選りすぐりのものを紹介しています。
ぱっと見これはいったい何...?という民具も説明文を読むとなるほど~っと感心します。
こちらは展覧会図録なので、実物が見たい!という方は国立民族学博物館で見ることができます。(2025年3月~6月開催)

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