« 2015年7月 | メイン | 2015年9月 »

2015年8月 アーカイブ

2015年8月31日

GDPって何の略? ~新設件名のお知らせ2015年8月分~

 明日発行の『週刊新刊全点案内』は、巻頭に「新設件名標目のお知らせ」を掲載しています。
新設件名は、TRC MARCで件名標目を新たに採用したものという意味で用いていますので、NDLSHから採用したものも含まれています。

8月は6件の件名を新設しました。その中に「国内総生産」という件名があります。

GDP

ダイアン・コイル(著)
高橋 璃子(訳)
みすず書房(2015.8)

 GDPって何のことだっけ...恥ずかしながら、まず思い浮かんだことでした。内閣府のHPによると「国内で一定期間内に生産されたモノやサービスの付加価値の合計額」とあります。GDPはGross Domestic Productの略であり、新設の際に「国内総生産」の参照語としています。

上記の本は歴史について書かれているので、件名は「国内総生産-歴史」となっています。先日発表された戦後70年談話にも経済の繁栄の大切さが述べられていました。新設をきっかけにして、もう少し経済に関心を持つようにしようと思いました。

2015年8月27日

体感型は苦手

8月の雑記のテーマは「映画」です。


と書いたものの、今年映画館で観たのは
友人に誘われていった「ムーミン」だけ。
近所に映画館がなく、図書館は現在改装中。
なので映画鑑賞はもっぱら自宅でレンタル派です。

今月は夏休みだったので飛行機内のプログラム
なんて手段もありました。
ただ飛行機の中だけに少々難儀なことも。

早速やってしまったのが
映画が終わる前に目的地に到着してしまい結末がわからない!
仕方がないので、帰りの便で続きを観ようと思ったら
楽しみにしていた作品に限ってやってなかったりでガッカリ。

そして何故か重要なシーンやクライマックスのところで
気流の悪いところを通過することになり
機体が揺れる→アナウンスが頻繁に入って
映画がその都度強制的にストップするので消化不良に陥りました。


結局は静かなところで全編を観たくなって、借りに行ってしまいました。
座って視聴できると考えれば
映画の出会いとして、機内はなかなか良い場所だと思います。

縦揺れしなければ、の話ですが。

2015年8月26日

きょうのデータ部☆(8/26)

150826_150819.jpg

おくすり...ではありません。
眠気覚まし用のタブレット。
最近これを食べ過ぎて、ミントもレモンも効き目が薄れてきたので恐ろしいです。

2015年8月28日

背ラベルの図書記号~MARCや検索のはなし~

こんにちは、新刊目録の望月です。
夏休み、甥っ子ちゃんと近所の図書館に行ってきました。久しぶりの児童書コーナーであれもこれもと懐かしい本を抜き出して楽しんでいたわたしに対し、飽きちゃったのか「もう帰ろうよ~」を連発する甥っ子ちゃん。しまいには机の上の本を勝手にそのへんの棚に戻しはじめました。
...しょうがない、帰るか。
本をきちんと元の場所に返すのは、甥っ子ちゃんにやってもらうことにしました。
「ほら、本の背に「マ」ってあるでしょ。この本は「マ」の棚に戻してね」
なんだかんだと文句を言いつつも、棚を探して本を戻す甥っ子ちゃん。背ラベルが本の置かれる場所の目印だって気付いてもらえたかな?

というわけで今回「MARCと検索のはなし」は、この背ラベルとMARCについて。
背ラベルには、分類記号と図書記号、巻冊記号などが書かれています。この図書記号の指示についてTRC MARCではMARC上に入力しているのです。
簡単に言うと、図書記号を著者から採るか、タイトルから採るか、という指示をMARCに持たせているということ。

いくつか例をあげますと
著者(個人)ひとりの著作ならその著者
著者(個人)が2人までならひとりめの著者
著者(個人)が3人以上ならタイトル
グループの著作ならタイトル
個人の著者でも、役割が編集、監修ならタイトル
などなど。
※主たる著者がだれか、ということは「日本目録規則」の標目付則2「単一記入制目録のための標目選定表」を参考にしながら判断しています。


図書記号をどう表示するかについては、図書館独自の決まりを設けているところも多いです。TRCでは上記以外にも、仕様書をもとにスペックを組んでMARCの項目などから背ラベルの図書記号を編集するしくみも備えています。
詳しくはこちらの記事をごらんください
「TRC MARCと装備の関係 その1その2その3

○図書記号でよくいただくご質問
ネルソン・デミルの図書記号が「ド」なのはなぜ?

答え:統一形のカナ形が「ドミル,ネルソン」だからです。初出の図書では「ネルソン・ドミル」という表記だったため統一形がこのカナ形になり、図書記号は統一形のカナから採用するため「ド」となるのです。
図書に「デミル」とあるのに「ド」なのはふしぎな感じがしてしまいますが、図書に書いてある通りにすると「ネルソン・ドミル」→「ド」、「ネルソン・デミル」→「デ」となり分かれて配架されるという不便が生じてしまうのです。

2015年8月25日

カブトムシを持つところ

今日は「週刊新刊全点案内」1927号の発行日です。
掲載件数は1697件でした。

*こんな本がありました*

生きものの持ちかた その道のプロに聞く

松橋利光(著)
大和書房(2015.8)


私、間違えていました。カブトムシを持つところ。
この夏もわが家のペットはカブトムシで、お世話のときに手に載せたりしていたのですが、どうも足の爪がひっかかって困る...と思っていたところ、この本が「正しい持ちかた」を教えてくれました。
そうか、そこを持てばよかったのか!...と1人納得。

自分の身の安全を保ちながら、生きものを少しも傷つけることにスマートに持つ、をコンセプトに、野外で出会う身近な生きものから、イヌやウサギなどのペット、触る機会はないことを願いたいサソリやタランチュラなど、さまざまな生きものの持ちかたをその道のプロが伝授してくれる本です。半分実用的で、半分は見て楽しむだけ...でしょうか。

イチオシのかわいい持ちかたは、獣医さんが教えてくれる、オオコノハズクの持ちかた。
ストレスを与えないように、タオルで包んで安心させる...とあるのですが、その格好、どこかで見たことあると思ったら、息子が生まれたあと通っていたベビーマッサージの教室で教わった、赤ちゃんを泣きやませるためにバスタオルでくるんであげましょう、の姿と同じでした。
野生生物も人間もくるまれると安心するのは一緒なんですね。

いつか今まで持ったこともない生きものを持つ必要に迫られる場面に遭遇するかも。
そんなときが来たら、この本で教えてもらった持ちかたでぜひトライしてみたいものです。

2015年8月24日

「写本」の誤解

こんにちは。AS 伊藤です。主に和漢古書を担当しています。

前回最後のところで、刊行物と書写資料とのことにすこし触れましたが、昨年度、『日本目録規則』1987年版改訂3版の用語解説にかんして、「漢籍の場合は、書写されたものは刊行されたものと違う扱いになるのか?」という疑問をとりあげたことがありました。たぶんそんなことはないと思う、ということではあるのですが、今回この「書写されたもの」の基本的用語について書きたいと思います。

NCRでは第3章で「書写資料」が扱われていますが、この章の冒頭には「この章では,写本,手稿などの書写資料の記述について規定する」とあります。この書き方ですが、実のところ、ちょっと誤解を招くような気がするのですが、どうでしょうか?
この文だと、書写資料の具体例として、「写本」というのと「手稿」というのとが並置されています。NCRの「用語解説」を見てみると、「手稿 著者自身が書いた原稿。自筆稿本。」とあります。となると、この文脈では、「写本」というのは、「手稿」と対比されるところの、著者自身の自筆ではなく、別の人の書いたものを「書き写したもの」ととらえるのが自然なように思われますし、実際一般的にも、「写本」といったら、何かオリジナルがあってそれから書き写したもの、とイメージするのがふつうでしょう。

ところが、書誌学では「写本」は実はその意味ではないのです。この場合の「写」は「写した」ではなく「書いた」という意味で(現代中国語でも「文字を書く」ことを「写字 xiezi」と言いますが)、刊行物と対比して「手で書かれたもの」すなわち書写資料全般のことを指して「写本」と言うのです。
ふたたび「用語解説」を見てみると、「写本 手書き,またはタイプライターによって書いた本。写本には著者自らが書いた本(自筆稿本)と,他の人が写しとった本(影写本,横写本)がある。」とあり、この説明自体は確かに正しいのです。ですが、上述のように「写本,手稿などの」云々と書かれているのを読んだ場合、この「手稿=自筆稿本」が「写本」に含まれる下位概念だと認識されることはまず無いように思われるのです。
ちなみにさらに細かいことを言うと、「影写本」はオリジナルを忠実に模した写本のことですので、「用語解説」で、自筆本と対照される転写本一般を示すタームのようにあげられるのはちょっと適切でないようにも思います。

ということで、書誌学での「写本」はあくまで「写本か刊本か」という意味あいで使われ、一般的な「自筆か転写か」という意味での用語ではありません。実際、歴史学などでは確実に後者の意味で使われますので、日本史を勉強していた方に手伝ってもらったりすると、ここのところで引っかかって話が噛み合わなくなることがしばしばあったりします。書誌学では「転写」の意味でとると間違いなんですよ、と説明するのですが、でも世の常識は相手のがわにあるような・・・。

この「写本」ですが、漢籍ではふつう「鈔本(しょうほん)」と言います。ほんとうは「和古書」「漢籍」の区別によって使い分けるのではなく、「和本」「唐本」の区別に対応して使い分けたほうがいいのではという気もしなくはありませんが、まあ漢籍目録等で「日本鈔本」という言い方もしばしばされますので、「和古書」「漢籍」の区別に対応させるということでいいのでしょう。
「鈔」と「抄」は同義で使われ、「鈔本」はまた「抄本」と書いても別にいいのですが、「抄本」というと「抄録したもの」「抜粋したもの」と間違われる可能性がありますので、あえては使わないほうがいいかと思われます。なお、「抄物(しょうもの)」というと、以前触れましたが、「○○抄」といった書名になっていたりする、和漢の古典を注解・講釈した一群の和書を指します。

なお、書誌学での「写本」は「刊本」と対になる概念であるわけですが、この「刊本」もちょっと注意が必要です。「刊本」はやはり広い意味と狭い意味とがあり、広い意味では「刊行されたもの」全般を指しますが、狭い意味では版木を使って印刷されたもの、すなわち整版(せいはん)の書物の事だけを指します。
活字本も石版本(石印本)も謄写版印本(「謄写版」は印刷方法の種類であってeditionではありません)も、広い意味では刊本となりますが、古典籍の世界では「刊本」はやはり狭いほうの意味で使われることが多いです。ちなみに、打字印本(タイプライター印本)や鈐本(けんぽん。ハンコを押捺したものを本にしたもの)などは、広い意味のほうでも「刊本」にはならないものと思われます。

6月から和装本について書いてきましたが、いったんしばらくお休みします。いずれまた書かせていただくつもりですので、よろしくお願いします。


2015年8月21日

ADEAC夏の公開情報

夏休みももうすぐ終わりですが、みなさんのお宅では宿題はもう終わりましたか?
私は得意な宿題はさっさと終わらせて苦手な宿題は残しておくタイプだったので、毎年最後の最後まで手つかずで残っていたのが「自由研究」でした。
まだ手つかずの自由研究に歴史探索・地域研究というのもひとつのアイデア、そんなときに参考になるADEACからこの夏の新規公開情報をお届けいたします。

大東市/北河内 飯盛 ウォーキングコース
まずは6月11日に公開となった『北河内 飯盛ウォーキングコース』をご紹介します。
大阪府大東市飯盛山近辺の郷土の歴史や民話・物語を紐解きながら
歩くためにつくられたガイド冊子をデジタル化しました。
地図上の気になる名所をクリックすると解説を読むことができたり、
名所の解説から航空写真・地図上の名所の場所が表示されたり、
デジタルならではの楽しみ方ができますので、ぜひお試しください。

松阪市/デジタルアーカイブ
次は6月17日に公開となった「北蝦夷山川地理取調図(樺太地図)」と「松坂町図」です。
「北蝦夷山川地理取調図(樺太地図)」は重要文化財「松浦武四郎関係資料」のうちの一点で、全6回の蝦夷地探査による当時の樺太の地名や地形が精密に記されています。
なかなか本物を見るのは難しいですしなにより実物は南北それぞれで縦2メートルのとても大きな地図なのですが、高精細ビューアで地図の隅々まで拡大して閲覧できます。
安永8年(1779)の松坂城や城下町などの様子を描いた「松坂町図」もデジタル化し公開しています。

大府市郷土資料デジタルアーカイブ
続いて6月18日公開されました、主に天保12年(1841)頃に作成された現・大府市域「大府市地域 近世村絵図16枚」をご紹介します。
「大府市史 近世村絵図集」として刊行された村絵図の複製をデジタル化し、現在の大府市の地図から位置関係もわかるように公開しています。
大府市が近世にはどのような村々から成っていたのか、また絵図からは当時の山や川などの地形もうかがえます。

清須市地域資料アーカイブ
6月23日公開の『濃尾大地震 写真帳 西春日井郡被害の實情』は
明治25年(1891)10月28日に濃尾地方で発生した濃尾地震の様子を記録した写真帳です。
濃尾地震は日本の内陸地殻内地震では観測史上最大の地震とされており、地震の規模はマグニチュード8.0と推定されます。
被害の様子をとらえた写真24枚とともに、震災当時の被害の状況がうかがえる史料です。

五條市教育委員会/中家文書調査報告書
最後は6月26日公開の『中家文書調査報告書』の紹介です。
奈良県五條市の五條・新町地域は城下町・宿場町・陣屋町の要素から形作られた地域で、「五條市五條新町伝統的建造物群保存地区」の選定を受けています。
中家文書はその中から伝馬所(馬借運営)に関する文書を多く含んでおり、それらの調査をまとめた報告書をデジタル化し公開しています。
当時の五條市域の人々が地域振興の命運を懸けて奔走した様子を今に生き生きと伝えています。

ここでは紹介しきれませんが、ほかにも追加公開されている史料もあります。
さらに9月1日からはADEACホームページのデザインが新しくなり、より見やすい画面で貴重な史料を閲覧していただけます。
新しい資料の公開準備も進んでおりますので今後ともADEACにご注目ください。

またADEACで公開しています『賀茂県主同族会(上賀茂神社)/賀茂祢宜神主系図ほか』の系図データベース拡大について、8月27日までクラウドファンディングを募集中です。
こちらも大変貴重な史料ですので、この機会にもう一度『賀茂県主同族会(上賀茂神社)/賀茂祢宜神主系図ほか』もご覧ください。
残り一週間ほどですがご興味のある方はぜひともご検討をお願いします。

それではまた次回、秋の公開情報(仮)にてお会いしましょう。

2015年8月20日

ジョリィ

8月の雑記のテーマは「映画」です。

あの「名犬ジョリィ」が映画になりました。
「走れジョリィ トゥルルルルルー♪」のジョリィです。
「ジョリィと僕とで半分こ♪」のジョリィです。

といっても、ある年代以上の方にしか分からないですよね。
「名犬ジョリィ」は1981~82年に放送されたテレビアニメ。
少年セバスチャンと愛犬ジョリイが、さまざまな冒険をするお話です。

このアニメの原作小説「Belle et Sebastien」(セシル・オーブリー作)が、本国フランスで「ベル&セバスチャン」という実写映画になったのです。

大きくて真っ白ふわふわのあの犬は、グレート・ピレニーズだったようですね。
実写映画でも、あの大きさはそのまま。セバスチャンの倍以上はありそうです。
小さな男の子と大きな犬の組み合わせが、なんとも可愛らしい。
(映画の公式サイトで写真が見られます)

小説の方は、1975年に学研から「アルプスの村の犬と少年」というタイトルで出版されて以来、刊行されていないようです。
この機会に新訳が出版されるといいな。

2015年8月19日

きょうのデータ部☆(8/19)

p20150819.JPG
同期とのランチ帰りの一枚。
暦の上ではもう秋ですが、日差しの強さに衰えが見えません。

2015年8月18日

JAPAN

今日は「週刊新刊全点案内」1926号の発行日です。
掲載件数は1378件でした。

*こんな本がありました*

JAPAN ロバート・ブルーム画集

ロバート・ブルーム(画)
芸術新聞社(2015.8)

はじめて名前を聞く画家、ロバート・ブルームの作品集です。
江戸の色濃い明治時代に、日本に数年滞在した人だそうです。

表紙が目を引きます。
髷を結った、着物姿の花売りの絵です。
言葉で説明するのは難しいですが、色鮮やかな明るい画面に
江戸の姿の人たちが動きだしそうに描かれていて、
一枚の絵でドラマを感じます。
パステル画の評価が高かった人だそうで、
色が流れるような、光を放つ画面にはっとさせられます。

最近の「外国人が日本のことをこう言った」ブームは
食傷気味なのですが、
この本は、素直に、
「外国の人が、私も知らない日本を
こんなに鮮やかに描いてくれて嬉しいな」
という気にさせられました。

知らない文化を知る、好きになる喜びを、
ストレートに伝えてくれる絵のように思います。
いつか実物も見てみたいです。

2015年8月17日

無いものはないので

データ部AS・伊藤です。主に和装本を担当しています。

前回まで見てきたとおり、和漢古書におけるタイトルと責任表示の情報源は、「標題紙、奥付、背、表紙」の4情報源ではなく、「巻頭,題簽,表紙」をもっとも優先される順位とする図書のさまざまな箇所ということになります。
ということで、明治以降の和装本でも和漢古書扱いするものはそのように処理すればいいのですが、しかし和漢古書扱いせず現代書として扱う場合、では情報源とするのはいわゆる「標題紙、奥付、背、表紙」の4情報源だ、ということでほんとうにいいのか、ちょっとここであえて考えてみたいと思います(なお、以下はすべてあくまで個人的な見解です)。

現代書の和装本の場合、4情報源にあたるものがどうなっているか考えると、以前書いたように厳密に学問的にはさておき、扉・見返しを標題紙と、題簽・表紙を表紙として扱って問題ないように思います。奥付も明治以降は現在のものに近くなり、書名が記されていることがスタンダードになってきます。
ということでこの3つについてはほぼ問題ないのですが、「背」についてはどうでしょう。以前書いたとおり、和装本の場合は造本としてそもそも「背」が存在しないのですから、「4情報源」と言われても最初から3情報源しか現実にはないわけです(背をくるんで綴じたものが無いわけではないのですが、その場合もそこに書名があることはほとんどありません)。
この3つより情報量の豊富で確実な情報源が無いのであればそれで仕方ないのですが、和装本の場合は多くの場合そんなことはありません。和漢古書以来の伝統を引き継いで、巻頭にしっかりと書名と著者が書かれていることが多いのです。そしてそれらが存在する場合、往々にして、その記述がタイトルや責任表示としてもっとも適切なかたちであったりします。さらには、印刷方法が現代のものであっても、巻頭にしかタイトルと責任表示がないという図書も決して珍しくはありません。

そういう実態があるわけなのですが、NCRでは現代書のタイトルと責任表示の情報源は「4情報源」に限定されてしまっています。結果、オンラインで見られるいろいろなデータベース等を見てみると、こうした和装現代書については作成者によって非常に対応が割れてしまっているようです。
巻頭にどんなに豊富で確実な情報があってもそれを無視して「3情報源」のほうから記述しているものもあれば、適切なものと判断されればやはり巻頭からタイトルや責任表示を採用しているものもあります。後者の場合やそもそも4情報源がない場合は、該当するもの全部に補記括弧をつけているものもあれば、補記括弧は使わずに「書名及び責任表示は巻頭による」と注記しているものもあり、また和装ということを記述していればある意味当然ということでとくに注記はしていないものもあるようです。

こうした状況については、日本の目録規則の規定において、現代書のタイトルと責任表示の情報源として、「標題紙(標題紙裏を含む)、奥付、背、表紙」としたあとに、「ただし、和装本など背の無いものについては背の代わりに巻頭を情報源とする」といった「ただし書き」があれば、それですべて問題なくおさまったのに、と思わないではありません。和装本は、何しろ背はそもそも存在しないのですから、こうした発想はきわめて自然なはずだと思うのですが。

現在、目録規則というもの自体が大きな転換期にあるものと思いますが、和装本をメインに扱ってきた者の視点からすると、正直、現行のNCRにはまだいくつか引っかかる点があるのは事実です。
上記のほかにも、たとえばそもそも刊行物と書写資料とで章が分かれているのも、AACRの構成を踏襲したものだとは思いますが、現実に存在している和漢古書の情況からすれば、両者はある種渾然一体としていますので、いささか使いにくいものである気がしています。刊行物と書写資料とで規定を別にするよりは、やはり現代書と和漢古書とで規定を別にするほうがむしろわかりよいように思われ、実際中国においては、大陸の『中国文献編目規則』(2005年第2版)でも「第4章:古籍」を「第2章:普通図書」と、台湾の『中國編目規則(1995年修訂)でも「第4章:善本」を「第2章:圖書」と別にして規定しています。
中世以来現在に至るまで基本的に同じスタイルで造本がなされてきている欧米に対し、日本も含まれる漢字文化圏においては、欧米とは別個に独自の書物の造りかたが発展してきていたという歴史的経緯があるわけですので、そうした和漢古書の扱いを考える上では、やはりこの方面への目配りも不可欠であろうかと思われます。

2015年8月 7日

八月の姓 ~典拠のはなし~

以前、「著者名の読みかたが図書や人名辞典からわからないときには、
姓名の読みかたの事典類を参考にしながら決めていきます」
というお話をしたことがあります。


本日は、そのようなときに私たちが頼りにしている
参考資料をご紹介しましょう。


まずはこちら。

「日本姓名よみふり辞典 姓の部」(日本アソシエーツ 1990.10)
「日本姓名よみふり辞典 名の部」(日本アソシエーツ 1990.10)


古代から現代までの実在の人物、約50万人のデータを元に作成された資料です。
凡例によりますと、姓の部では姓の表記42,000件(その読み56,000件)、
名の部では名の表記72,000件(その読み90,000件)が収載されているとのこと。
難読姓や本名以外の名称(芸名、雅号等)も含めた内容になっています。

名の読み方については、

「角川大字源」(角川書店 1992.2)


も参考にしています。

「角川大字源」は漢和辞典なのですが、
人名としての読みに使われる読み方が掲載されています。
たとえば「淑」という字には、人名読みとして

きみ・きよ・きよし・すえ・すみ・とし・ひで・ふかし・よ・よし
 
と10通りも挙げられています。


姓の読み方についてはこちら。

「日本姓氏大辞典」(丹羽基二著 角川書店 1985.3)

表音編・表記編・解説編からなる資料です。凡例によると約13万件を集録。
これだけの数をおさめているので、
毎日たくさんの人名に触れている私たちでもめったにみかけない姓が満載。
ぱらぱらめくって眺めてみると、なかなか楽しいのです。


8月にちなんで 「八」がつく姓をみてみると

 八月一日 八月朔日 

 八月十五日

 八月三十一日

こう書くと日付の羅列のようにみえますが、これらはみな姓なのです。

皆さま、なんと読むかおわかりでしょうか。


 八月一日 八月朔日 

それぞれに複数の読み方がありますが、
共通しているのは「ハッサク」「ホツミ」「ホズミ」「ホソミチ」など。
「ワタヌキ」という読み方もあります。


 八月十五日

「アキナカ」「ナカアキ」「ナカツキ」とよむそうです。


 八月三十一日

「ホズノミヤ」。

音から来ているのではないと思われる読み方揃いです。

この辞典では姓の由来を「地名型」「信仰型」「事象型」「当て字型」など33種に分類し、
それを各姓の後ろに記号で示しています。

たとえば 八月三十一日 ホズノミヤ は「信仰型」「当て字型」とのこと。

姓の由来も探求してみると面白そうですね。
いま、私が小学生だったなら夏休みの自由研究にするところなのですが...。


今回は日本人の読み方を調べるときに使っている参考資料をご紹介しました。
日本人以外の資料は、またの機会に。


~データ部ログ更新お休みのお知らせ~

TRCデータ部は、8月10日(月)から14日(金)まで、夏季休業となります。
ブログの更新もお休みさせていただきます。

2015年8月 6日

行きつけの映画館

8月の雑記のテーマは「映画」です。
私は映画を、出来るだけ映画館で見たいタイプ。
それぞれ特色のある行きつけの映画館をちょっとだけご紹介しましょう。

A館: 自宅の駅前にあるシネマコンプレックス(シネコン)。
その日の最終上映でも、歩いて帰れるので時間を気にせず楽しめる。
いつでも気軽に行ける私にとってのメイン・シアター。

B館: 自宅と会社のちょうど真ん中の位置にあるシネコン。
平日の会社帰りに突然映画を見たくなったときに利用できるシアター。
画質・音質・座席の座り心地、ともにお気に入り。

C館: 自宅近くのショッピングモール内に併設されたシネコン。
シーンに合わせて座席が動くシアターを備えているのですが、乗り物酔いしやすい私は、まだその体験はしていません。
ですが、映画を見たい、買い物もしたいというときの、とてもありがたいシアター。

次にご紹介するのは、1年に1度行くか行かないかですが、
D館: 実家の近くにあるシネコン。
IMAXデジタルシアターを備えており、大迫力で見たい作品があって、しかも、実家に帰省している時に限り見に行くことのできる、私にとってはスペシャルなシアター。

2015夏の映画は、洋画の名作の最新作が勢揃い。
「ターミネーター:新起動/ジェニシス」「ジュラシック・ワールド」「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」。洋画好きにはたまりません。

先月、早速「ターミネーター:新起動/ジェニシス」をA館で見てきました。
しかも、映画公開日に。
公開日に映画を見にいくなんて、何年ぶりのことでしょう。
ブログで、映画をテーマに書かなければならないからと思って、少し張り切りすぎました(笑)。

ターミネーター・シリーズの、この最新作については、1作目、2作目を知っているターミネーター・ファンにはナットクできるのではと思います。

さて、できれば次は「ジュラシック・ワールド」。
スティーブン・スピルバーグ製作による、その世界観と恐竜たちを、ぜひ、D館で体感してみたいものです。
でも帰省すると何だかんだで忙しく、映画を見にいく余裕なんてなかなか無いんですよね...。

「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」。この作品も押さえておかなければ。
トム・クルーズの無茶ぶりと、どんな最新のスパイグッズが出てくるのか楽しみです。

9月には「ピクセル」が公開されるし...。
困りました。夏バテしている暇はありませんね。

2015年8月 5日

きょうのデータ部☆(8/5)

p20150805.jpg

今朝は出社の際、玄関に打ち水がされていました。
太陽に向かって伸びるテラスの木々にもならい、シャキッとした気持ちで暑さを乗り越えたいですね。

2015年8月 4日

こんなこいるんだ。

今日は「週刊新刊全点案内」1925号の発行日です。
掲載件数は1377件でした。

8月の表紙はこちら

p20150804.jpg

気分が明るくなります。

*こんな本がありました*
「へんな生きもの へんな生きざま」

早川いくを〔著〕
エクスナレッジ(2015.8)


ヨウカイカマキリ、サーカスティック・フリンジヘッド、ハープ・スポンジ...
目次を見ても形態が全く浮かんできません。
そんなあまり知られていない、ちょっと"へんな"生きものたちの生きざまを写真で紹介している本です。

カードゲームに出てくるモンスターのような生物が続々登場。
このような生きものが本当にいるのか...。という驚きをもってページをめくりました。
生命力が高いとは聞いていたクマムシ。画像をはじめて見ました。衝撃でした。
よく見る生物の意外な一面も。空飛ぶカエル・空飛ぶヘビの写真、躍動的で素敵です。

残念ながら書影では見られませんが、帯にいたニュウドウカジカ。英国「醜い動物保存協会」で、世界で最も醜い動物認定されたそうですが...私は結構かわいいと思います。

この世の中にはいろんな生きものがいる、たくましく生きている。
その生きざまを垣間見ることで、なんだか少し元気づけられるのです。

2015年8月 3日

多様な生物を育む里海~新設件名のお知らせ2015年7月分~

本日発行の『週刊新刊全点案内』は、巻頭に「新設件名標目のお知らせ」を掲載しています。新設件名はTRC MARCで件名標目を新たに採用したものという意味で用いていますので、NDLSHから採用したものも含まれています。


7月は3件の件名を新設しました。その中のひとつに「里海」があります。

里山に比べるとやや聞きなれませんが、人の手を加えることで環境と生産性が高められた沿岸海域を里海と呼びます。環境省のサイト「里海ネット」には、「健全な里海は、人の手で陸域と沿岸海域が一体的に総合管理されることによって、物質循環機能が適切に保たれ、豊かで多様な生態系と自然環境を保全することで、私たちに多くの恵みを与えてくれます」とあります。里海という概念は新しいものですが、人間は昔から、豊かな海の幸を手軽に得られる場所として里海を利用してきました。

里海と聞いてまず思い浮ぶのが、干潟です。河口付近に広がる干潟には、陸と海の両方の栄養が届くため多くの生物が生息しており、海産物の宝庫となっています。

最近、件名を新設した「とびはぜ」も干潟の生物です。えらだけでなく皮膚呼吸もできる水陸両生魚で、干潟の泥の上をぴょんぴょん飛びはねる姿を見たことのある方もいるのではないでしょうか。頭のてっぺんに突き出た目は、平面の干潟を見渡すためだとか。魚のようなカエルのような、なんとも形容しがたいユーモラスな顔です。

ですが、残念なことに、日本でのとびはぜの生息状況は悪化しており、環境省のレッドリストで準絶滅危惧種に指定されています。沿岸部の開発や埋め立てなどにより、とびはぜの居場所である干潟が減っているのが理由とのこと。とびはぜのようなユニークな魚が日本から姿を消すことのないよう、豊かな干潟環境を守っていきたいですね。


※TRCでは、子どもたちが生物多様性について楽しく学べる図書を展示する「生物多様性の本箱」の普及啓発プロジェクトを行っています。今年度は、全国70館以上のTRC運営受託図書館で実施しています。実際の展示の様子や実施館の一覧はこちらをご覧ください。

2024年7月

  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

アーカイブ

全てのエントリーの一覧

リンク