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巻頭にあっても(承前)-和漢古書の書名と情報源(4)

データ部AS・伊藤です。主に和装本を担当しています。

前回、和漢古書で第1巻の巻頭第1行の書名をそのまま本タイトルとして採用できないケースについて列挙してきましたが、途中までで終わってしまいましたので、今日はそのつづきです。

7)巻頭の書名が巻次によって分離しているもの:書名と巻次はふつう、「某々抄第一巻」「某々抄第二巻」のように記載されていますが、時々「某々第一巻抄」「「某々第二巻抄」のようになっているものがあります。これを「某々」が書名で「第一巻抄」「第二巻抄」が巻次だなどと、苦し紛れに解してはなりません。巻次が途中に位置しているだけで、「某々抄」が書名になります。これはとくに、室町期から江戸前期にかけて多く作られた、講義の聞書のスタイルをとった「抄物(しょうもの)」と呼ばれる和漢の古典を注解・講釈した一群の和書にその例が多いです。

8)巻よりも大きなまとまりを示す単位が含まれているもの:巻頭の書名をそのまま本タイトルとするのではなく、各巻の巻頭の書名から本タイトルを抽出すべきというパターンが2つあり、これはその一つ目の場合です。たとえば、『杜律集解(とりつしっかい)』6巻という本は、実際には『杜律五言集解』4巻と『杜律七言集解』2巻から成っています。こういう場合、『杜律集解 五言4巻七言2巻』という具合に記録することができます(というか、合集とするよりはこのようにしたほうがスマートです)。巻頭の表記は、その他の書名としてもいいですが、内容著作とすることができるのであればそのようにしたほうがより適切かと思います。なお、このパターンでは巻次は全体で連続している場合と、まとまりごとに与えられている場合と両方あります。

9)書名と部編名が一体化しているもの:各巻の巻頭の書名から本タイトルを抽出すべきパターンの二つ目。たとえば北魏の楊衒之(よう・げんし)撰『洛陽伽藍記(らくようがらんき)』5巻を見てみると、各巻の巻頭は洛陽城内伽藍記(巻第1)・洛陽城東伽藍記(巻第2)・洛陽城南伽藍記(巻第3)・洛陽城西伽藍記(巻第4)・洛陽城北伽藍記(巻第5)となっています。むろん、5つの個別の著作の合綴などとしてはいけませんし、それぞれを内容著作とするのも不適切で、「城内・城東・城南・城西・城北」は各巻の部編名にすぎません。本タイトルとしては、これら以外の共通部分を抽出して書名として採用します。

10)各巻の巻頭の書名から本タイトルを合成すべきもの:これは上と逆のパターンですが、実例としては多くはありません。ただし一つ、非常に有名な本でこのパターンのものがあります。何という本かというと『老子』別名『道徳經』2巻なのですが、多くの刊本で、上巻の巻頭書名が『老子道經』、下巻が『老子徳經』となっています。これはお約束として、書誌としては『老子道徳經』2巻として記録します。これを『老子道經』『老子徳經』の合集などとして記録すると、かなり無知な印象を与えてしまいます。それぞれを内容著作とするのも適当ではありません。

ということで、和漢古書では「巻頭の書名」を本タイトルとして採用するとだけ覚えて機械的に適用すると、実作業ではかなり不適切なことになることがあります。規則があってそれに沿うように本があるわけではなく、その逆だということは、とくに和漢古書の場合いっそう当て嵌まるかと思います。

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