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巻頭にあっても-和漢古書の書名と情報源(3)

データ部AS・伊藤です。主に和装本を担当しています。

前回、和漢古書の書名として内題と外題どちらを採用すべきかという問題について書きました。巻頭の書名が存在する場合、多くの場合内題主義でそこからタイトルを採用するということでおおむね問題ありません。ちなみに多巻物の場合、巻ごとに巻頭の書名が異なっていたりすることもしばしばあるのですが、たんに「巻頭の書名」と言ったら第1巻の巻頭の書名のことです。第2巻以降の巻頭の書名は、必要があればその他の書名として注記します。
ということでふつうは、第1巻の巻頭第1行の上部に「○○巻第一」とあれば、とくにことわりなく「○○」を本タイトルとして採用すればよいのですが、そうは単純にはいかないというイレギュラーなパターンもいくつかあります。以下列挙してみましょう。

1)巻頭に内容著作の書名があるもの:これはとくに特別なことではなく、総合書名がなければ複数著作の合綴として、巻頭の書名を合綴の一つ目の著作の書名として採用すればよいでしょうが、総合書名が別にある場合はやはりそちらを本タイトルとして採用すべきでしょう。総合書名は目次や序跋、見返し・扉や題簽などにある場合が多いですので、見落とさないようにしなければいけません。

2)巻頭にシリーズ名があるもの:これはある種1)の逆パターンで、第1行にはシリーズやセットの書名があり、単行図書のタイトルにすべきものは責任表示の後の行にあったりするもの。もちろん、捉え方によっては、上位階層の書名を本タイトルとして採用し、下位のものは内容著作とすればよいということも多いですが、抽刻本(抜き刷り)や抄録本の場合、巻頭にある上位階層の書名はシリーズとするか、あるいは注記しておくのが適切ということもままあります。

3)巻頭に篇名があるもの:これは『論語』『書経』などの経典や『史記』『漢書』などの古い歴史書に多いのですが、通常は本タイトルがある巻頭第1行上部に「學而第一」とか「高帝紀第一」とかいった篇名が記されているパターンです。この場合、書名はその行の一番下に記されています。篇名を書名と勘違いして合綴本のように書誌を作成してしまうと、基本的な古典であることが多いだけにちょっとみっともないものがあります(ちなみに漢籍のタームとして、このパターンで第一行上部にある篇名を「小題(しょうだい)」、下部にある書名を「大題(だいだい)」と呼ぶことがあります)。

4)第1巻の巻頭の書名のみが他と違っているもの:その他の巻の巻頭や巻尾、目次、見返し・扉、題簽などがみな同じ書名で、第1巻の巻頭だけが違うという、アマノジャクなパターン。たとえば貞享5年刊の井原西鶴著『日本永代藏』5巻では、第1巻の巻頭のみ『本朝永代藏』となっています。こうしたケースでは、もちろん内題主義を押し通してあくまで第1巻巻頭の書名を採用し、「巻第2-8の巻頭、目首、序、見返し及び題簽の書名:○○」などといった具合に注記してもよいのですが、あまりに煩わしい場合は、多数派の書名を採用し、「巻第1の巻頭の書名:○○」と注記する(つまりこう書けば「第1巻の巻頭の書名のみが他と違っている」パターンだなとわかる)というのも手かと思います。

5)注釈本で、巻頭にテキスト自体の書名があるもの:前回ちょっと触れましたが、たとえば江戸後期の香川景樹著「土左日記創見」という書物は「土佐日記」の注釈書ですが、巻頭の書名は「土佐日記」で、「土左日記創見」は題簽に記載されている書名です。こういう場合は、巻頭のテキスト自体の書名を採用すると内容も誤解を招きやすいですし、同名異書がたくさんできてしまいますから、やはり注釈のタイトルのほうを採用すべきと思われます。

6)改訂本で、巻頭に原本の書名があるもの:これも上と同じく前回触れたパターンで、題簽や表紙の書名のみ改め、巻頭の書名はもとのまま(「外題換え(げだいがえ)」)ということがあります。もっとも、この「外題換え」というタームの意味内容も微妙なところがあり、前掲の長澤氏『図解古書目録法』では「改題本とは、むしろ全部改刻したものを言い、同版の後修である場合は外題換と言わねばならない」(p25)として、巻頭の書名のみ改刻された例をあげていますが、通常は巻頭の書名を改めたものは含まず、改題本のうち題簽や表紙の書名(外題)のみを取り替えたものを言うように思います。また、「外題換え」があったからと言って、前回書いたように、必ずしも本タイトルとして改められた書名のほうを採らなければならないということでもありません(オンライン目録と冊子目録とでは標目書名の重みも自ずと違ってくるという要素もあるかと思います)。

このほか、まだ4つほどパターンがあるのですが、長くなりましたので以下は次回としましょう。

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