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豊穣なる翻訳文化を支えます ~典拠のはなし~

こんにちは、典拠班の原田です。

典拠に異動してきて9カ月、いやはや...驚くことがいっぱいでした。
目録の中の一部分だった「人名」について、深く深く掘ってゆくなかで、「名前」というものの奥深さに感嘆することしきり。

そして、今年1月のある日、ついにこの方と仕事しました!
ロバート・L.スティーヴンソン 著 「ジキルとハイド」 新潮文庫

どうしてこれが典拠班に?
こんな有名人について新たに典拠作業が必要なの?

はい、必要なのでした。
Stevenson,Robert Louis 120000284940000 (統一形)
には、それまでに70個もの記述形(図書に表記されている形)がありましたが、この時、71個目が出現したのです。

外国語の名前を日本語の発音に移そうとすると、いろいろな表記の可能性があります。スティーブンソン,スティーヴンスン,スチーブンソン,スチイブンソン...。
それに加えて、ファーストネームやミドルネームがイニシャルになっていたり、ミドルネームがなかったり、それらの順列組み合わせで、大量の記述形ができてしまいます。

目録は、図書の表記の通りに記録しますが、そのままでは71種類のStevensonは同一人物なのかわかりません。
そこで「典拠ファイル」が大事な役目を果たします。
71個のバリエーションに、統一形の「Stevenson,Robert Louis」を必ず紐づけしておいて、同一人物だとわかるようにしています。

今のところ、記述形の数ナンバーワンは、スティーヴンソンのようです。
ドストエフスキー 33個
チャイコフスキー 33個
シェークスピア 36個
も、壮観です。ぜひ一度、典拠ファイルをご覧ください。

こんなに大変なことになっているのも、せっせと翻訳に励んできたからなのですね。
「The strange case of Dr.Jekyll and Mr.Hyde」がイギリスで出版されたのが1886年、TRC MARCで一番古い「ジーキル博士とハイド氏」は1937年刊です。国会図書館には1932年刊の「ドクタ・ヂーキル・アンド・ミスタ・ハイド講義」という本があるようです。(タイトルにも名前を日本語の音にする苦心が見て取れます)

スティーヴンソンの沢山の作品が訳され、一つの作品を何人もの翻訳者が手掛けてきました。そして、2015年になって、また新たな翻訳が行われている。
日本の豊かな翻訳文化を、ありがたく誇らしく思います。

記述形については「記述形その1:漢字が違えば」「記述形その3:子だくさん」なども参考になさってください。


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