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和本と唐本(「和装」「和本」「和書」(4))~ASで作成するデータについて~

こんにちは。データ部AS・伊藤です。主に和装本を(和古書・漢籍を、というほうが正確ですが)を担当しています。

前回、『日本目録規則』1987年版改訂3版の「用語解説」の定義においての、明治期の和刻本漢籍の扱いの問題について書いてみました。要するに、内容(言語)だけではなく製作年もカテゴライズの要素とするならば、製作地がそれにともなって問題になってくる、ということです。
漢籍であろうと国書(和古書)であろうと、日本で書写・出版されたものと中国で書写・出版されたものとを区別する言い方はあるのでしょうか。NCR等には残念ながら載っていないようですが、ちゃんと存在します。それが「和本」と「唐本(とうほん)」というタームです。
橋口侯之助著『和本入門』(平凡社刊)という本では「有史以来、明治の初め頃までに日本で書かれたか、印刷された書物の総称」というのを「和本」の定義とし、これであれば「仏書・漢籍から庶民向けの本まで、古い書物の類を全般的にあらわす用語になる」としています。目録作成の現場に即して言えば、「出版地コード」に対応するのが「和本」「唐本」の区別、「言語コード」に対応するのが「和古書」「漢籍」の区別だと言えば、理解しやすいでしょう。
ちなみに、江戸時代以前の「和装本」はみな「和本」ですが、逆は必ずしも成り立ちません。一枚物の地図などは、「和本」ではありますが、「和装本」とは言いがたいです。折本や巻物なども、広い意味では「和装」に含まれますが、狭い意味では「和装本」というとやはり綴じられた冊子のものを指すことが多いかと思われます。

ということで、「書写地・出版地」によって図書をカテゴライズするのが「和本」と「唐本」の区分です。NCRの「和古書」と「漢籍」の規定は、「言語による区分」と「書写年・出版年による区分」との両方を含んでいますが、「書写年・出版年による区分」は当然、「書写地・出版地による区分」と対応するわけで、「言語による区分」とは直接には無関係です。「言語による区分」と「書写地・出版地による区分」とが事実上一致するのならば問題ないのですが、そうでないことは今まで見てきたとおりです。
このことが先に指摘したNCRの用語解説の問題につながるわけで、したがってこの解説は
漢籍 中国人の編著書で,かつ中国文で書かれたもの。日本等で書写・刊行されたものをも含む。唐本は主として1911年(辛亥革命)以前に書写・刊行されたもの、和本は主として江戸時代まで(1868年以前)に書写・刊行された図書をいう。
としたほうが適切なのでは、という見解もじゅうぶんありうるかと思います(もっとも、こう書くのであれば「唐本」「和本」というタームをしっかり定義づけしておかないといけませんが)。
なお、「和本」の「漢籍」は「和刻本漢籍」を主として多数ありますが、「唐本」の「国書」というのは、ほとんどありません(きわめてまれにですが、無いわけではありません)。

ちなみに、この「用語解説」でもう一個、「小さな問題」を指摘しておきましょう。
和古書が「主として江戸時代まで(1868年以前)に書写・刊行された図書をいう」とあるのに、漢籍が「主として1911年(辛亥革命)以前に刊行されたものをいう」とあるのを見て、「漢籍の場合は、書写されたものは刊行されたものと違う扱いになるんですか?」と聞かれたことがあります。いえ、そんなことはない・・・はずだと思いますが、それとも何か理由があるのでしょうか。ご存知の方には、ぜひご教示いただきたいと思います。
まあ実際、日本国内で、中国で書写されたものに触れることは圧倒的に少ないです。でも、念のため書いておきますが、漢籍の写本(鈔本)はたくさん見ます。この違いは・・・もう大丈夫でしょうか?

以上見てきたように、「和装」と「線装」、「和古書(国書)」と「漢籍」、「和本」と「唐本」は、それぞれ「装丁による区分」、「言語(および製作年)による区分」、「製作地による区分」による、それぞれ異なった対になる概念ですので、きちんと理解して使い分けなければなりません。
もっとも、「和装本」「和古書」「和本」というのを、ほぼ同じ内容を指すものとして使っても、実態としてはそんなに実害はないことは多く、仕様書などではっきり認識されないまま何となく使われていることが多いです。でも、
和装本であるが、和古書ではない    ・・・和装現代書
和古書ではないが、和本である    ・・・和刻本漢籍
和本であるが、和装本ではない    ・・・一枚物(・巻物・折本)
といったことも多々ありますので、やはりちゃんとわかっていたほうがよいですね。
ところで、「和装本であるが、和古書ではない」パターンなどに関連して、出版年代の問題を後回しにしていました。では具体的にどのように処理すればよいのか、それは次回で。

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