本日発行の『週刊新刊全点案内』は、巻頭に「新設件名標目のお知らせ」を掲載しています。新設件名はTRC MARCで件名標目を新たに採用したものという意味で用いていますので、NDLSHから採用したものも含まれています。
7月は3件の件名を新設しました。その中のひとつに「里海」があります。
里山に比べるとやや聞きなれませんが、人の手を加えることで環境と生産性が高められた沿岸海域を里海と呼びます。環境省のサイト「里海ネット」には、「健全な里海は、人の手で陸域と沿岸海域が一体的に総合管理されることによって、物質循環機能が適切に保たれ、豊かで多様な生態系と自然環境を保全することで、私たちに多くの恵みを与えてくれます」とあります。里海という概念は新しいものですが、人間は昔から、豊かな海の幸を手軽に得られる場所として里海を利用してきました。
里海と聞いてまず思い浮ぶのが、干潟です。河口付近に広がる干潟には、陸と海の両方の栄養が届くため多くの生物が生息しており、海産物の宝庫となっています。
最近、件名を新設した「とびはぜ」も干潟の生物です。えらだけでなく皮膚呼吸もできる水陸両生魚で、干潟の泥の上をぴょんぴょん飛びはねる姿を見たことのある方もいるのではないでしょうか。頭のてっぺんに突き出た目は、平面の干潟を見渡すためだとか。魚のようなカエルのような、なんとも形容しがたいユーモラスな顔です。
ですが、残念なことに、日本でのとびはぜの生息状況は悪化しており、環境省のレッドリストで準絶滅危惧種に指定されています。沿岸部の開発や埋め立てなどにより、とびはぜの居場所である干潟が減っているのが理由とのこと。とびはぜのようなユニークな魚が日本から姿を消すことのないよう、豊かな干潟環境を守っていきたいですね。
※TRCでは、子どもたちが生物多様性について楽しく学べる図書を展示する「生物多様性の本箱」の普及啓発プロジェクトを行っています。今年度は、全国70館以上のTRC運営受託図書館で実施しています。実際の展示の様子や実施館の一覧はこちらをご覧ください。