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最後の手がかり-和漢古書の書名と情報源(8)

データ部AS・伊藤です。主に和装本を担当しています。

前回に引き続き、和漢古書のさまざまな情報源の書名で注意すべきことを書きます。

NCR87R3で和漢古書におけるタイトルの情報源の三番目のレベルに記されている「扉,見返し」(封面)については以前述べました。これらのものは、三行縦書きで中央に大きめの文字でタイトルが、右行に著者名が、左行に出版者が、そしてそれらを囲む枠の上部に出版年が横書きで書かれている、というのがもっとも標準的なスタイルです。
「新刻訂正○○」といった場合の書名部分の上部が二行書きになっていたり、右がわあるいは上部の記載がそうしたもので書名の一部となっていると解したほうがよい場合もあります。そうした書名に冠された副次的な部分のことを、角書(つのがき)、漢籍では冠称(かんしょう)と言います。
見返し・扉でなくても、巻頭や題簽でもそうしたものはよくあるのですが、本タイトルとしてはそれらを含んだかたちを採用してかまいません。ただ、注記をしたり異なったかたちでのアクセス・ポイントを記述したりして、そうした部分が角書であることを示しておく必要があります。長澤規矩也氏編纂の冊子目録では角書部分を括弧に入れるという方法を採っていますが、オンライン目録ではまた、簡潔かつ検索に便な方策を工夫する必要があるでしょう。
なお、唐本を翻刻した漢籍の場合、原本の封面をそのまま摸刻してつけていることが時々あります。もちろん、見返しまたは扉と言ってしまっていいのですが、厳密には原封面と呼ぶべきでしょう。
また、扉の前後にもう一枚そうしたものがあったりする場合は、それらは前扉とか中扉とか呼んでおけばいいかと思います。

同じレベルにある「版心」(はんしん)というのは、袋とじの本の場合折り目のところにくる、原稿用紙の真ん中の枠にあたる部分で、「柱」(はしら)とも言います。ここはある意味、本のもっとも内がわとも言え、そういう意味では安定度は高いのですが、ただここに記されている書名は得てして省略されたかたちだったりしますので、これをタイトルとして扱うかからしてが問題になります。たとえば、明和7年刊『風流茶人質氣』(ふうりゅうちゃじんかたぎ)という本だと、版心にあるのは「茶」一文字だったりします。
しかしながら、以前触れましたが、草双紙というジャンルの本の場合、書名に関する情報が題簽とここにしか無い、ということがしばしばあります。そして題簽というものはくりかえし言っているように剥落しやすいものですから、結果としてこの柱の書名しか手がかりがない、という事態になります。こうなると柱題(はしらだい)というのはやはり重要で、実際そうした事態が珍しくなかったというのは、つとに明治時代に『黄表紙外題索引』などといったツールブックが出ていることからもわかります。

なお、版心の書名と似たものに「のどの書名」というものがあります。「のど」というのは、袋とじの本の場合、とじ目のあたりの余白部分を言いますが、ここにやはり省略されたかたちの書名と丁付けが記されていることがあります。
しかし本文近くでなく紙のはしのほうにあると、しっかり綴じられていれば、とじ目にあたりますので当然ながら見ることができません。これはもともと、製本前の状態において作業用に記されたものですので、したがってここの丁付けは、時々インチキのある版心のものより正確だったりします。

以上見てきたような本の各部分に書名が無ければ、所蔵者が後からつけた書名、すなわち原帙でない場合の帙題簽や識語(しきご)、小口書(こぐちがき)といったところから書名を採用することになります。和装本はほんらい書棚に平積みにして置いておくものですので、小口書の機能としては、洋装本の背と同じく、並べて置いたときの検索や確認に便になるようにということであるわけですが、あくまで所有者が後からつけたものです(ただし民國以降の中国では刊行時に印刷している場合もあります)ので、原則情報源とはしません。
同様に、一番最初に書いたように、背の墨書も原則情報源とはしませんが、ほかのどこにも書名が無ければ、小口書と同じくそこから採用するということも無いわけではありません。

といった具合に、図書のさまざまな部分から適切なものを選んで本タイトルとして記述するわけですが、ほんとうにどうしても書名が見つからない場合もあります。その場合は何らかの参考書やデータベースから適切なものを採用するか、内容等から適宜書名をつけて補記括弧に入れて記述し、そうした旨を注記するということになります。
文書(もんじょ)であればそもそも標題というのは著録者がつけるのが原則ですが、しかし図書の場合、「書名は目録作成者による」という注記を入れることになると、何となく敗北感を感じてしまうのはわたしだけでしょうか・・・。

(次回はお盆休み明けになります)

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