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だれのが一番?-和漢古書の書名と情報源(7)

データ部AS・伊藤です。主に和装本を担当しています。
前回まで、巻頭題簽、合巻の摺付表紙の書名などについて見てきました。今回は、それ以外の情報源の書名で、和漢古書で注意すべきものを見ていきましょう。

和漢古書の造本の構造からして、図書の内がわにあるものほど安定しており、外がわに行くほど不安定な情報源になる、ということは前述しました。その理屈で言うと、本文の巻頭のつぎに安定した情報源としては、本文の巻末ということになります。タイトルにかんして言う場合は、尾題(びだい)というタームもありますので、巻尾(かんび)と言ったほうがよいかもしれません。
とくに多巻ものの場合、最終巻の巻尾のことを「大尾」(たいび)と言い、優先順位としてはかなり高いものになります。このタイトルは巻頭に対応してちゃんと記載されていることがけっこう多く、きちんと確認しておく必要があります(なお、書名とはちょっと別に、各巻の巻次については巻尾を巻頭と同レベルの情報源として扱ってよいと、個人的には考えています)。

NCR87R3では「目首(もくしゅ)」というのも、巻末と同じくタイトルの優先順位の2番目のレベルの情報源としています。たいてい本文直前にある総目次の冒頭のタイトルのことで、目次の末尾にあるものは「目尾(もくび)」と言います。図書によっては、各巻ごとに巻頭の前に巻の目次がついていることもあり、これらを総目と区別して言う場合は「巻目(かんもく)」と言ったりします。ただし、名所図会(めいしょずえ)などでよくあるのですが、巻の目次と本文がつながっていて本文巻頭のタイトルが無いような場合は、巻目を巻頭と見なしてよい(ある種お約束のスタイルなので、むしろそのほうがよい)と思います。

本文の前後には序跋の類がついていることがしばしばあります。序・叙・凡例・例言・前言・題言・題辭・題詞・提要・まえがき・はしがき、あるいは跋・識後・書後・後語・あとがきといった、とにかくいろいろな性格のものがあります。ちなみに、序と言ったら本文の前にあるものというわけのものではなく、本文の後に序があったりすること(後序)はごくふつうにあります。
ちょっと注意が必要なのは「提要」で、清中葉以降の漢籍の刊本では『四庫全書』所収の書籍の解題である『四庫全書總目提要』の該当条をそのまま冒頭に付している場合があります。このとき間違って、「序の書名:四庫全書總目提要」などとしては絶対にいけませんし、内容著作としたりするのももちろん不適切です。

なお、「新刻○○序」と言ったら、「新刻○○」というタイトルの図書の序と解してよいですが、「刻○○序」とあったら、それは基本的に「○○を刻するの序」ということですから、序の書名としては「○○」だけ、ということになります。
また、「御製○○序」というのは、皇帝の編著であれば「御製○○」を序の書名としてよいですが、そうでない場合は「○○」という著作に対して皇帝が書いた「御製の序文」ということになりますので、「御製○○」をその他の書名として採用するのはあまり適切ではありません。

序跋の中で著者・編者自身による自序・自跋を優先するのは当然理解できますが、「著者・編者以外の序跋」(他序・他跋)については、それらが複数あった場合どの優先順位で見ていけばよいでしょう。複数の人の序跋がいくつも付いている、というのは実際よくある情況で、大部のものになると序文だけで1冊になったりするくらいです。
やり方としては3通りほど考えられ、一つ目はもう単純に、先頭から出てくる順番に見ていく、というものです。何も考えないでいいので気楽なのですが、「内がわほど安定しており、外がわに行くほど不安定」という原則からすると本文の前に置かれているものの場合いかがかということになります。事実、他序と自序とがあった場合、自序のほうが本文に近いほう、すなわち後のほうにあるケースが圧倒的に多いですし、一番最初にあるのは題詞といったわりとどうでもいいような内容のものであることが多いようです。こうしたことからすると、むしろ本文に近いほうから外がわにという順番で見ていく、というほうが妥当であるかもしれません。あるいは、序跋それぞれの書かれた年代の古い方から、という考え方もあるかもしれません(年代不明のものがあった場合が弱点ですが)。
なお、その図書が以前に刊行された時点での序文(原序)が収載されているケースもありますが、これらの書名をその他の書名として採用するか、ちょっと微妙な場合もあります。

序跋の類の書名はそれぞれの冒頭に記されているものを(末尾に書名が記されていることはほとんどありません)「序の書名:○○」といった具合に記録すればよいですが、時々序跋の文章中に「その他の書名」として採用すべき異形のタイトルがあったりしますし、時とするとそこにしかタイトルらしきものが存在しなかったりすることもあります。そういう場合は本タイトルをそこから採用し、「書名は序文中による」といった具合に記録することになります。
もちろん、引用著作の書名など図書本体と関係ないものなどではないか、よくよく確認しなければいけませんが、図書をどうひっくりかえしてもタイトルらしきものが見当たらず、序文を読み進めていって「これだ!」というものが見つかったりすると、かなりヤッターという気分になります。

今日はここまでとし、「見返し,扉,版心」などについては次回に書きたいと思います。

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