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和古書と漢籍(「和装」「和本」「和書」(2))~ASで作成するデータについて~

こんにちは。データ部AS・伊藤です。主に和装本を担当しています(といっても、TRC MARCとして累積している現代書は担当外なのですが)。

さて前回、「和装」と「和本」「和書」の違いは何?というところでオシマイになりましたが、今回はまず、標題の順とは逆になりますが「和書」について取りあげてみましょう。

現代の図書館でも書店でも、「和書」というのはふつうに使われるタームかと思います。「和装」が「洋装」と対になる概念だったように、「和書」は「洋書」と対になる概念ですね。日本語で書かれたものが和書、外国語で書かれたものが洋書ということになりますが、中国語や韓国・朝鮮語で書かれたものは、大きく二分した場合は「洋書」ではなく「和書」のほうにカテゴライズするのが実際的かつ一般的かと思います。
ですが江戸時代以前の日本ですと、中国語(漢文)以外の外国語で書かれた図書などというもの自体、ほとんど存在しません。そうした状況では、「和書」「洋書」というカテゴライズ自体が意味が無く、意味があるのは日本語の図書か、中国語(漢文)の図書か、という区分です。その区分において、前者を「国書」、後者を「漢籍」と呼びます。

「国書」という言い方は最近ではあまり使われなくなってきているかもしれませんが、和漢古書を扱う際の基本的な工具書であるところの岩波書店刊の『国書総目録』『国書人名辞典』の「国書」ですね(もっとも、前者については今や、その内容を基本的にそのまま収録した『日本古典籍総合目録データベース』を使うことがほとんどですが)。
「国」と「漢」が対になるのは、「国学」と「漢学」、「国文」と「漢文」などという場合と同じです。「国籍」とか「漢書」とかにならないのは、「国籍」はNationalityと、「漢書」のほうは漢王朝の歴史を記した『漢書』というタイトルの作品と紛れないようにだと思いますが、「国書漢籍」と言っても「国漢書籍」と言っても意味は変わらない―こういう構造を「互文(ごぶん)」と言いますが、そういう具合になるように、ということなのかもしれません。

さて、「漢籍」といった場合、一番広い意味では中国語で書かれたもの全体を指してもいいのですが、やはり「国書」と「漢籍」しかなかった時代、すなわち江戸時代以前の図書という狭い意味で使い、現代中国書は含まないのがふつうです。
ただし注意が必要なのは、ここで「古い時代」とか「現代」とか言っているのは、あくまでその図書の内容そのものが成立した年代のことを言っているので、実際に出版された年代のことではありません。西暦紀元前に書かれた『史記』の原文そのものであれば、西暦2000年以降に刊行された洋装本でも、実は「漢籍」と言っていいのです。別の言い方をすると、失われていたものが発見されたという場合を除いて、漢籍の「タイトル」が増えることはもはや基本的に無いのですが、刊行物としては今後無限に増える可能性がある、ということであるわけです。

ということで、『○○図書館蔵漢籍目録』とあっても、収録されている図書の8割以上が戦後刊行の洋装本だった、などということも無くもないのですが、さすがにこうなるとちょっと詐欺に遭ったような気分にならなくもありません。
実際、利用者が専門家に限られる場合はまたちょっと別ですが、ふつうには、現物の管理の点というでも、目録作成という点でも、やはり物理的存在としての図書が作られた年代、すなわち出版年代というものでも区分したほうが、現実に適合しているかと思われます。
このことは「国書」でも同様で、日本語の本はすべて「国書」と言っていいのですが、やはり原則として江戸時代以前に成立かつ刊行あるいは書写されたものを、それ以降のものと区別して、狭い意味での「国書」あるいは「和古書」と言います(ちなみに中国・台湾では、日本で言う漢籍は「古籍」と称することが一般的です)。

「和古書」と「漢籍」というタームの意味するところは上記のとおりで、『日本目録規則』1987年版改訂3版の「用語解説」でも以下のように定義され、「和古書」「漢籍」については現代書と異なる規定を適用させる、としています。
漢籍 中国人の編著書で,かつ中国文で書かれたもの。主として1911年(辛亥革命)以前に刊行されたものをいう。日本等で刊行されたものをも含む。
和古書 日本人の編著書で,かつ日本文で書かれ,日本で書写・出版された和書のうち,主として江戸時代まで(1868年以前)に書写・刊行された図書をいう。
基本的にそういうことなのですが、ところがこの用語解説、実のところちょっと大きな問題を孕んでいます。それはどういった点でしょうか? つづきは次回で。

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