« 合刻そのほか-和漢古書の書誌作成単位(2) | メイン | 紙の方舟 »

いつまでつづく?-和漢古書の書誌作成単位(3)

こんにちは。AS 伊藤です。主に和漢古書を担当しています。

前回、「複数の図書がまとめて出版される」合刻本ほかについて見てきましたが、それと逆に、階層構造を持つセットもので、途中で出版事項が変わったり、下位の階層の書誌それぞれに個別の刊記があったりするものがあります。
これらについては、書誌作成単位としては、まとめて一書誌で作成しようが、親-子のかたちで複数書誌を作成しようが、どちらかが間違いということもありません。なので、どちらで処理しようとかまわないのですが、基本的には、それぞれの内容著作について、個別の刊記があるものが多かったり、本タイトルと異なる別タイトルがそれなりの数あったりして、一書誌で作成すると注記が非常に煩雑になる、などという場合には「親-子」のかたちで作成する、というような便宜主義的な対応方法でよいのではないかと思います。

また、階層構造を有するセットものというわけではない多巻物が、長い期間にわたって何回か出版される場合もあります。こうしたものには、途中で書名が変わるものと変わらないものがあり、書誌作成単位のとらえ方もそれによって異なってくることがあります。
「途中で書名が変わるもの」については、その前と後とでそれぞれに異なった見返しや刊記があるのであれば、当然別々に書誌を作成することになり、後のほうの書誌に「『○○』の續編」などと注記することになります。もっとも、出版事項が基本的に同じで、巻次が通しになっている場合などは、「第10~20巻の書名:××」などと注記して、1書誌としたほうが適切でしょう。
微妙なのは、書名もしくは巻次が途中から「續~」「~續編」「~後編」などとなっている場合です。和漢古書の場合、通常はそれで別書誌を作ったりせず「博物志 10巻續10巻」という具合にしたりしますが、出版事項ほかが異なっていて、1書誌にすると記述があまりにごちゃごちゃするような場合は、別書誌としておくほうが適切だろうと思います。そうした例として、たとえば、『道二翁道話』『道二翁道話續編』(中沢道二)、『文話』『續文話』(斎藤拙堂)、『農家益』『農家益後篇』『農家益續篇』(大蔵永常)、『(正)文章軌範』『續文章軌範』などといったものがあげられるかと思います。
なおもちろん、たとえば『續古今和歌集』『續高僧傳』のように、内容・成立から言って、最初からもとのものとは別の著作として扱うべきという場合もしばしばありはします。

上記に対し、「途中で書名が変わらないもの」のほうは、基本的に1書誌で作成し、途中で出版事項が変わる場合は、「第15~20巻の出版者:~」「3編(巻第7~9)の出版事項:~」などと出版の注記を行うことになります。
もっとも、後者の例のような、こうした「巻」より大きなまとまりを示す「~篇」「~輯」などの扱いも微妙なところがあり、通常は「和説假名論語 前編3巻後編3巻三編3巻」という具合に「巻数と連動する部編名」として巻次の一部を構成すると考えていいと思いますが、書名の一部になると見なしたほうがよい場合もあります。そうすると、「~編」まで含めて書名と考えるのであれば、「途中で書名が変わるもの」として考えるべき、ということになります。

そのように考えないにしても、読本などの大長編になると、巻より大きなまとまりとしての「編」が10編前後もあって、各編ごとに出版者の増減や変更がある、などということもよくあります。そうなってくると、その情報を1書誌で記述するというのはたいへんなわけで、むしろ「編」ごとに、あるいは刊記が変わるごとに別書誌にしてしまう、などというやり方もあるかもしれません。
ちなみに、有名な曲亭馬琴の『里見八犬伝』9輯98巻は、最初のうちは各輯5巻くらいのペースで発行されていますが、第8輯は上下に分けられた上でいくつかの巻も「第8輯巻之4上」「第8輯巻之4下」などという具合に分割されだし、第9輯に至っては、巻より大きなまとまりが「上套」「中套」「下套上」「下套中」「下帙下甲」「下帙下乙上」「下帙下乙中」「下帙下編上」「下帙下編中」「下帙下編下」という具合につづいていき、全106冊のうち半分以上が第9輯に入るという、何とも奇々怪々な構成になっています。「9輯」で完結させることにこだわったのでこうなってしまったということだそうで、もうちょっと最初から何とかならなかったのかいなと思わざるをえませんが、まあ人気作品というのは得てしてこんな具合になってしまいがちなのかもしれません。

コメントを投稿

(投稿されたコメントは、TRCデータ部の営業時間内にアップいたします。投稿から掲載までお待ちいただく場合がありますがご了承ください。なお、メールアドレスはTRCデータ部から直接ご連絡する場合にのみ使用いたします。第三者への公開・提供はいたしません。)

2024年7月

  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

アーカイブ

全てのエントリーの一覧

リンク