小説~分類/件名のおはなし・31~
何の気なしに分類件名作業をしていたら、複数の作家さんの短編小説を集めた本に出くわしました。
分類913.68、件名は「小説(日本)-小説集」...っと。
ここでふと気になってしまったのです。そういえば分類だと文学って言語別だけど、件名だと国名だ...
分類と件名が住み分けをしている好例ですね。
日本の言語にはもちろんアイヌ語もありますが、小説となるとほぼ日本語(琉球語は分類上では津軽方言などと同じく日本語の方言扱いです)で出ているので、日本語の小説集を表す分類913.68と件名「小説(日本)-小説集」はほぼ1対1対応といえます。
しかし、諸外国の言語事情は複雑なため、分類と件名の関係ももっと複雑になっています。
分類933は英語の小説を表しますが、英語を使用している国は多いので、この分類に対応する件名は「小説(アメリカ)」や「小説(イギリス)」の他にも「小説(ニュージーランド)」「小説(カナダ)」「小説(インド)」など多数挙げられます。結果原著が英語の小説集の場合、どこの国の小説が収録されているのか、本の中を探し回る羽目に...
同様にフランス語の小説を表す分類953やスペイン語の小説の分類963など、ヨーロッパ諸国の言語の小説の分類は、多くの対応する件名を持っています。これはかつて多くの植民地を持ち、旧植民地に広く言語が普及したからですね。
逆のパターン、件名と分類の関係も複雑なものになっています。
「小説(アイルランド)」の場合ですと、アイルランドにはアイルランド語があるので、件名「小説(アイルランド)」に対応している分類はアイルランド語の小説を表す分類993.23がメインだと考えがちです。しかし実際は、英語の933がメインになっています。アイルランド語が復興してきたとはいえ、日常的には英語が用いられているアイルランドならではの現象です。
また、カナダは英語とフランス語の2言語が公用語です。そのため、「小説(カナダ)」は分類933と分類953の2つの分類と対応しています。
他にメジャーな言語が並立している国としてはスイスなどが挙げられます。
小説だけではなく、分類9類の文学は言語と国の関係が複雑なのですが、分類と件名を合わせて、何とか表現出来ているのではないかと思っています。