◆データぶー子の典拠クイズ◆
Q:一人で複数のペンネーム(別名)を持つ人名はどうしますか?
データぶー子です。
お昼休みにメンバーたちが歌舞伎の話で盛り上がってました。
ブログ記事でもたま~に話題に上がりますが、データ部には歌舞伎のほかに、能や落語など、古典芸能鑑賞を趣味とする人が多いのです。
ところで、世の中には、出世魚のように、何回も名前を変える人がいます。
その代表的な例が先のような古典芸能の人たちです。襲名のたびにがらっと名前が変わってしまったり。
あるいは、ビートたけしと北野武のように活躍するジャンルによって使い分けているケースもあります。
このように、本人が2つ以上の名前を持っている場合、人名典拠ファイルではどうするのでしょうか。
「日本目録規則」(NCR)では
同一著者が2以上の名称を用いるとき,次の場合には,それぞれの名称を標目とする。
ア)改姓改名した著者が,新旧の姓名で著作しているとき
イ)同一著者が著作の内容によって2以上の名称を使い分けているとき
(日本目録規則 1987年版 改訂3版 23.2.1.2)
とあります。
つまり ある人物について、統一標目はヒトツでなくてもよい、ということですね。
今日はもう冒頭の答えをいっちゃいましょう。
A:「それぞれの形で見出し(統一標目)を作る」
そして
「各々の見出しを関連付けることで、相互に検索可能にする」
です!
お互いに(相互)、参照しあう、このしくみのことを「相互参照」といいます。
どちらかに統一するのではなく、どちらも統一標目になるパターン。
直接参照を記号で表したときには、→や←を使いましたが、今回の相互参照は=。いわゆる「をも見よ」参照です。
例えば、9代目林家正蔵さん。
現在の名前でも、旧名の林家こぶ平でも著作を出されていました。
やはり、林家正蔵著、と書いてある本が、「林家こぶ平」ファイルの中に入っていると変ですよね。
なので、それぞれの形でファイルを作るのです。
しかし、このままではこぶ平さんと正蔵さん(9代目)が同じ人であると、人名典拠ファイルを見ただけではわからなくなってしまいます。
こういうとき、林家こぶ平のファイルには、『林家正蔵(9代目)も見てね』と、林家正蔵(9代目)のファイルには『林家こぶ平も見てね』、とそれぞれメッセージを入れておくのです。
メッセージってどういうこと?
それは、両者のファイルを見ればわかります。
■林家こぶ平
典拠ID 110001359030000
漢字形 林家/こぶ平
カナ形 ハヤシヤ,コブヘイ
参考生没年:1962~
職業・専門等 落語家,2005年3月9代目林家正蔵襲名,本名:海老名泰孝
相互参照ID 110004341800000 林家/正蔵(9代目)
110001250590000 海老名/泰孝
■林家正蔵(9代目)
典拠ID 110004341800000
漢字形 林家/正蔵
カナ形 ハヤシヤ,ショウゾウ
標目限定語(専門、世系等)9代目
参考生没年:1962~
職業・専門等 落語家,2005年3月9代目林家正蔵襲名,本名:海老名泰孝,前名:林家こぶ平
相互参照ID 110001359030000 林家/こぶ平
110001250590000 海老名/泰孝
上記のアンダーラインのある部分にご注目。これがメッセージです。
林家こぶ平のファイルに林家正蔵の典拠ID、林家正蔵のファイルに林家こぶ平の典拠IDを持たせることで、この二人が同一人物であることがわかるようになっています。
ところで、「海老名泰孝」の典拠IDもあるのをお気づきになりましたか?
全く別の名前を使い分けて著作をしていても、2つ(あるいは3つ以上でも)の名前を同一人としてリンクさせているのが、典拠ファイルの相互参照です。
それぞれのファイルに別名の相互参照IDを入れておかないと意味がありませんので、当然、海老名泰孝のファイルの相互参照ID欄にも同様に林家こぶ平と林家正蔵(9代目)の典拠IDを入れてあります。
海老名泰孝と林家正蔵が同一人とわからなかった人も、典拠ファイルを検索すれば一目瞭然!
相互参照とは、検索の幅が一気に広がる優れモノ。
これでどんな別名を使っても、その人の著作を全てまとめて検索することが可能となるわけです。
(2007年3月12日/12月21日掲載の記事より)
★データぶー子からの宿題★
「栗本薫」「林望」の別名はなんでしょうか?
相互参照をしている人名典拠はたくさんあります。
ぜひ、TOOLiなどで実際に典拠検索してみてください。