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2019年1月10日 アーカイブ

2019年1月10日

今、ここ 体験

  「平日半額ってことは、土、日、祝日は倍額ってことだよな......。
  ぼくは、ハンバーガーショップの入り口につけられた「平日半額!」ののぼりを見て思った。」
   (『都会のトム&ソーヤ 1』はやみねかおる著 講談社 2003年刊)


唐突な引用、失礼いたしました。1月の雑記、テーマは「本の書き出し」。年の始めと本の始めをかけて...ということです。
私にとって思い出深い書き出しが、冒頭にあげた一節です。

これを読んだ時、「主人公は、"今、この世界"にいるんだ!」と強烈な印象を受けたことを覚えています。
どういうこと?という方が多いかもしれないので少し補足説明をさせていただきますと、この図書の刊行年は2003年。
覚えていらっしゃらないかもしれませんが(あるいは「そんな時代知らない」という方もいらっしゃるかもしれませんが)、その少し前に、某ハンバーガーショップが現実にやっていて大きな話題になっていたのです、「平日半額」キャンペーン。

小・中学生だった頃の私が読んでいた本といえば、ファンタジーや世界の名作系、または、刊行からある程度時間が経っているものがほとんどで、その舞台は、別の世界や海外、ちょっと前の日本など、常に現実とは一定の距離があるものでした。
そんな時、この図書に出会い「現実社会とリンクした舞台設定」というものに衝撃を受けたのです。

おそらく今の小・中学生は、この書き出しに"今、この世界"という印象は受けないでしょう。百年後に復刊されたら「2000年頃、このようなセールをしている店が実際にあった」という注が入るかもしれません。
発売日を心待ちにしてシリーズを追うことを最近はしなくなってしまいましたが、こういう同時代感覚は新刊図書を手に取らないと味わえないものですね。

ちなみに、こちらの書き出しが思い出深い理由はもう一つありまして。
当時、すでに同じ作家さんのシリーズを二つ並行して読んでいたので、おこづかいと本棚の都合上、このシリーズが創刊されたと知った時も、手を出さないつもりでいたのです。
「買わないぞ!」と強く思っていたにも関わらず、最初の数ページを読んだところで、これは"今"読むべき本だ!と購入を決断。結果、私の本棚には同じ名前がずらりと並ぶことになったのでした。

書き出しってやっぱり大事ですね。

都会(まち)のトム&ソーヤ
(YA!entertainment)

はやみねかおる(著)
講談社
(2003.10)

2024年3月

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