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2019年3月22日 アーカイブ

2019年3月22日

付ける/貼る/挟む-アイテムレベルの注記(4)

こんにちは。AS 伊藤です。主に和漢古書を担当しています。

前回にひきつづき、書き入れについて、以下いくつか補足します。前述のように、注釈やルビ、振り仮名や送り仮名などを本文に書き入れているケースが多く、その場合は「書き入れあり」と注記するということで問題ないと思いますが、本文に朱引きや句読点が施されているだけの場合は、注記するかは微妙なものがあるように思います。
朱引きというのは、基本的に漢文において、固有名詞を示すために字の上に朱線を引いておくもので、中央に一本線は人名、二本線は書名、右がわに一本線は場所、二本線は国名、左がわに一本線は官職、二本線は年号というルールが一般的とされます。ただ、こうした朱引きや句読点が施されていること自体は、読み手による「読書」という行為がなされたことを示しているだけと言え、注釈が書かれているのとは、その図書へのかかわりかたの度合いが一段違っていると言ってよいかと思います。
いずれにしろ実際によく目にするのは、朱引きにしろ注や訓点にしろ、最初の数丁はくわしく書き入れがなされていても、それ以降は何もされていないきれいなままという状態の本です。多くの人の身に覚えのあるところでしょうが、昔のひとも明きらかに途中で「力尽きて」しまったのでしょうね...。

書き入れは基本的に本文の欄外や行間になされますが、付箋や貼紙(専門用語としては「押紙(おうし)」とも言います)に書かれている場合もあります。これらについては「付箋あり」とか「貼紙あり」とか注記しておけばよいかと思いますが、「付箋」については現代のポストイットのようなものと区別して書き分けておいたほうがよいかもしれません。
なお後者については、表紙などに「春」とか「ぬ弐百七」とか、所蔵者の函架番号と思われる情報が書かれた四角や八角形の紙が貼られていることもよくありますが、こうしたものについては、記述する重要度としてはあまり高くはありません(こうしたものが直書きされている場合や表紙や見返しに「全十冊」などとセットの冊数が墨書されているようなケースも、通常のレベルの書誌記述であれば無視してよいかと思います)。

付箋や貼紙が剥がれた場合であることもままありますが、メモや覚(おぼえ)などが挟まっていることもよくあります。内容的にまったく無関係なものである場合も多いですが、記録する必要がある場合は「付:「○○」とある書付1枚」とか「挟みもの:甲より乙宛書簡1通」とかしておけばよいでしょうし、とくに詳しく記しておく必要がなければ「挿紙あり」「挟紙あり」といった注記でとどめておくのでよいでしょう。
なお、貼り込みにしろ挟み込みにしろ、詳細に記録する場合は数を数えたほうがよいかもしれませんが、時にものすごく多い場合もあるので、まあ無理はしないでよいでしょう。

いずれにしろ、書き入れや貼紙・挟み込みについては、和漢古書においては基本的に存在して当然のものですので、そう目を皿にして絶対に見逃さないようにするほどのことはなく、そこそこ目立つ場合に記録するくらいの意識でよいかと思います。

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