今月の雑記、テーマは「恋愛ものの本」です。
出会いは9年前の新聞記事でした。(※1)
取り上げられていたのは、とある書店で行われていた「ほんのまくら」フェア。本文の書きだしのみを印字したカバーで全体をくるんだ文庫本を陳列し、タイトルや作者名を伏せたまま、冒頭部分の印象のみで本を選んでもらうという企画です。
記事はこのような一文で結ばれていました。
「これまでに一番売れたのは「*****」で始まる詩集という。」
(*****は本ブログ執筆者による伏字です。記事本文には冒頭の二節が書かれていました。)
そこに書かれた冒頭二節がとても素敵で、「確かにこれは買いたくなるなぁ」と思った当時の私。が、本を探し出そうとすることもなく月日は流れ、私の頭にはその素敵な冒頭のみが残りました。
ところが昨年の4月。ひょんなことからその本の正体を知ります。ある歌人さんが、前述のフェアで購入したとTwitterでこの本を紹介していたのです。
「求愛瞳孔反射」
(河出文庫)
8年前に道で助けてくれたけど名前も言わず立ち去った紳士の正体を知った気分でした。
穂村弘さんのエッセイや歌集は読んだことがあるので「まぁあなただったのね!」という気持ちで購入。素敵な二節で始まる最初の一篇はやはり素敵でした。
しかしこちらの本。あえて言いますが、うっとりした気持ちで読もうとすると度肝を抜かれます。読み進めるうちに、思っていたのとは違う方向に連れていかれます。途中もはや狂気です。
手に入れるまでのちょっとしたドラマ性によるバイアスもあり、私の中では「恋愛もの」枠なのですが、
はたしてこの詩集は「恋愛もの」と言っていいのか。
また、私がどんな書き出しに心を動かされたのか。
気になる方はぜひお手にとって確認してみてください。(※2)
(※1)朝日新聞2012/8/22夕刊「「まくらカバー」文庫、大売れ」
(※2)単行本と文庫がありますが収録されている詩の並び順が違うらしいのでお気をつけください。