しばらく暑さと涼しさが行ったり来たり...という日々でしたが、数日前にふと金木犀の香りがしてきて秋だなぁと実感しました。10月の木曜日は「思い出の一枚~美術編~」というテーマで、芸術の秋にちなんでアート作品(図画工作含む)についての話題でお届けします。
休日にふらりと展覧会に行くのはわりと好きで、行くとなにかしらグッズも買ってしまうのですが、カタログまでは買わずに済ませることが多いです。(お値段がそれなりにするのと、家の本棚にスペースがないため...)
なので、カタログを持っているものはその当時とりわけ気に入った展覧会であった。と言えます。どんなものがあったっけ?と見直してみたら懐かしいカタログが。
『谷中安規の夢-シネマとカフェと怪奇のまぼろし-』
このカタログにはMARCもあって、注記に「会期・会場:2003年12月9日-2004年2月1日ほか 渋谷区立松濤美術館ほか 主催:渋谷区立松濤美術館ほか」とあります。
そうか、そんなに前か...
谷中安規は、幻想と怪奇の版画家などとも呼ばれ、デカダンで映画的な独特の雰囲気のある作品を残しています。私は内田百閒のエッセイで知りました。百閒先生が「風船画伯」と呼んでかわいがり、百閒著の『王様の背中』や『居候匆々』では挿絵も担当しています。
『王様の背中』の方が挿絵満載で豪華なのですが、個人的には『居候匆々』の挿絵がとても好きです。『居候匆々』は新聞連載小説ですが、話の展開、というか、連載なので(予想通り)どんどん〆切に追いまくられる百閒先生と風船画伯の版画との掛け合いのような相乗効果が面白く、そして最後には予想外のメタ展開が...!
カタログに続いて久しぶりに文庫本を引っ張り出して読みふけってしまいました。やっぱり牛鍋の絵(版画)がとてもかわいい。