私的秘境~分類・件名のおはなし・116~
新刊書籍の分類作業を担当していますが、これまで付与したことがなく、とても気になっている分類記号があります。
(付与したことがないのはもちろん経験の浅さもありますが)
未踏の地、それは「630 蚕糸業」。
日本の近代化において大きな役割を果たした同業。NDCの分類表上でも、610は農業、620は園芸、640は畜産業...と並べると、いかにこの産業が重視されているかがわかります。
ただ、日本の現状はというと、高齢化や後継者不足により養蚕農家の数は一桁になり、生糸生産量も減少の一途です(参考:農林水産省HP)。
さて、やや詳しく見てみましょう。
631 蚕糸経済・行政・経営
632 蚕糸業史・事情
ここまでは一般的。
続いて、
633 蚕学.蚕業基礎学
634 蚕種
あたりから知らない言葉が多くなり、どきどきしはじめます。「蚕種」はカイコの卵のこと。
「634.5 蚕卵の催青法と孵化」...催青法?なんだか魔術っぽいですが、カイコの孵化時期を揃える処置だそうです。孵化近くなった卵は青みを帯びることからこの名が付いているそう。
635 飼育法
.13 春蚕飼育
.14 夏秋蚕飼育
.15 秋蚕飼育
.16 初冬蚕飼育
カイコは育つ時期により春蚕(はるご)、夏蚕、秋蚕...と分けられますが、そのそれぞれの飼育法に分類記号が存在します。しかも「初冬蚕」とか、細かい。
次は「636 くわ.栽桑」。カイコの食物である桑についてです。この下は育種、施肥、病虫害、収穫などと細分されています。桑だけで第3次区分の1区画をまるっと占めるこの豪儀さ。
その後は「637 蚕室.蚕具」「638 まゆ」「639 製糸.生糸.蚕糸利用」と続きます。
NDCを見ているだけでも、ここに蓄積された知識や技術に思いが致されます。
いつか「新規就農者のための蚕糸業大全」とか、出ないかな。