時間どろぼう
4月の雑記テーマは「大人になっても好きな児童書」。
好きかどうかは微妙ですが、心に残る児童書にしました。
子どもの頃に大切だった児童書といえば、ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」です。異世界往還と無私の友情の物語に「あかがね色の布張りの本」という装丁の魔法が加わり、これを本箱に置いていれば何とかなるのではとお守りのように思えた本でした。主人公と同じように学校に居場所を見つけられなかったころに大変お世話になりました。
が、大人になってエンデの本で心にくるのは「モモ」です。大人になってから読み返した記憶はないのですが、何かの拍子に思い出します。それも前半の時間どろぼうが暗躍する場面。「時間貯蓄銀行」の灰色の男たちが、様々な手を使って時間の貯蓄を勧めます。これは罠で、時間を奪われた人たちは、何のために時間を惜しむのかを考える暇なく、一分一秒を無駄にしないようイライラせかせか動きます。モモと遊んだり話したりゆたかな時間をともに過ごした友人たちも悲しげに仕事や子どもの家に吸い込まれてしまい、まともに話す暇もありません。今の時代、時間で給金をいただくサラリーマンで、また日々子供を急かして日常をおくる親で、このシチュエーションに心抉られない人はいないのではないでしょうか。これからもどこかで手に取った人の心を抉り警鐘を鳴らし続ける、ずっと残る本だと思います。