MARC MANIAX目録 第11回は「版」と「刷」のお話です。
★まず「刷」について
話題の本が発売されるときに「初版20万部!」などとニュースになりますが、これは本当に特別な場合です。出版社が新刊を出すとき最初に印刷しておくのは、ほとんどの場合は数千部とか数百部と言われています。そのあとは売れ行きを見ながら増刷します。よく売れる本、ロングセラーになるとこの増刷の回数が増えていきます。
近所の書店に並んでいる「蹴りたい背中」の奥付を見たら「225刷」とありました。
私が持っている「蹴りたい背中」は「7刷」。この両者は同じ本。
「刷」(刷次)は「同じもののコピー」という意味です。
★「版」は違いを示すもの
一方で「日本十進分類法(NDC)」を考えてみます。A図書館が所蔵しているのは新訂9版で、B図書館は新訂10版、というのは取り換えが効きません。「日本十進分類法(NDC)」の新訂9版と新訂10版では内容がそれぞれ違うからです。これが「版」(版表示)です。
第2版、改訂版、新訂版などがあります。改訂、増補など「版」が略されているケースもあります。
★「版」でも「内容は同じ」ケースもある
新装版、普及版、愛蔵版などがこれにあたり、内容は同じでも主として外装に差があるものです。
TRC MARCでは、この2種類の版表示について、場所(MARCタグ)を分けて入力しています。
265A01 に内容が変わっている意味の「版表示」
265B01 に内容は同じだが外装が違う「特殊な版表示」
なお年鑑などにみられる「2007年版」といった表示は版ではなく巻次として入力します。
実際には、出版者の「版」「刷」に対する考え方は様々なので、スッキリあてはまらないケースも多々あります。「2版」とあっても意味は「2刷」のこともありますし、「〇〇版」ならみな版表示かというとそうでもなく「カラー版」「決定版」など特色の宣伝として付いている語句もあります。
前に出たものとどう違うのか同じなのか?単なる宣伝文句なのか? 版表示は図書を選ぶポイントになるものですから、MARC作成の際には既刊MARCを検索し、図書の中身を確認しつつ、「265AかBか」適切な場所に入力していきます。
例えば手元にある「日本十進分類法(NDC)」新訂10版の奥付を見てみます。
1929年8月25日 初版発行
2014年12月25日 新訂10版第1刷発行
2021年12月10日 新訂10版第8刷発行
1929年はNDCの初版が世に出た記念すべき年。このあとご存知のように改訂を重ね、新訂10版が発行されたのが2014年12月25日。手元にあるのは2021年12月に発行されたものだけれど、これは増刷分であって版としては2014年12月25日に出たものと同じである。ということがわかります。
なお、第9回の復習になりますが、TRC MARCの出版年の記録は「対象図書の属する版が最初に刊行された出版年・月を入力」ですから、新訂10版の出版年は「2014.12」となります。(初版が出た1929年でも、新訂10版第8刷が出た2021年でもないことにご注意ください。)