前回の「典拠のはなし」では近代以降の人名で別の名前(ペンネーム)が出てきたら、別のファイルを作ると紹介しました。では、世襲の名前の場合はどうなるでしょう。
歌舞伎座では5、6月に8代目尾上菊五郎、6代目尾上菊之助の襲名披露公演が行われました。「弁天娘女男白浪」では新菊五郎丈の弁天小僧菊之助が名台詞を言えば場内の盛り上がりはいつも以上に、稲瀬川の新菊之助丈の成長が著しく私は次の襲名まで生きていられるのかしらとウルウル。今月は大阪松竹座で髪結新三をやっています。東京ではなかった演目なのでうらやましいです、いいなぁ。
話が大幅にそれました、元に戻します。
同名異人が出現した場合、人名に専門世系等を付加し区別をしています、これを標目限定語といいます。ただし代々襲名される名前には1人目から〇代目など世系を標目限定語にしています。歌舞伎俳優だけでなく落語家や能楽師などもこれに該当します。
新しく菊之助になった6代目尾上菊之助の典拠ファイルを作る場合
優先名称(統一形):尾上/菊之助
に
標目限定語(専門、世系等):6代目
を付記して
尾上/菊之助(6代目)
とします。
新しく菊五郎になった8代目尾上菊五郎さんは前名の尾上菊之助でファイルがありますので8代目尾上菊五郎のファイルを作り、さらに5代目尾上菊之助のファイルと関連をさせます
尾上/菊五郎(8代目)⇔ 尾上/菊之助(5代目)
さて8代目尾上菊五郎の父は7代目尾上菊五郎(富司純子さんの夫、寺島しのぶさんの父)です。7代目は終生この名跡を全うするそうです。
というわけで現在は存命の尾上菊五郎が2人いる大変珍しい状況になっています。
ちなみに7代目尾上菊五郎も前名の4代目尾上菊之助と関連しています。
尾上/菊五郎(7代目)⇔ 尾上/菊之助(4代目)