こんにちは、図書館蔵書 小松です。
軟派なタイトルで申し訳ありません。前回、前々回と古い、壊れそうな本の話だったので、今日はきれいな装丁の本のお話をしようと思います。
実は小松は大学時代は書道サークルなんてものに入っていまして、筆をもつ機会が冠婚葬祭と年1回の展覧会のみになってしまった今も、書道の作品を見るのはとても好きです。
一つの作品を見るのにも、いろいろな楽しみ方があると思いますが、そのひとつに料紙といわれる紙の美しさがあります。写経によくある紺紙紫紙、切紙や砂子から、「本願寺本三十六人家集」のような切り継ぎ、植物染料の優しい色の染め、マーブル模様の墨流し・・・。いろいろあってそれぞれに綺麗なのですが・・・。
午前中仕事をしていたらみつけてしまいました。
特に小松が好きなのがこの模様紙(唐紙)!銀や金で摺られて浮き上がる模様、雲母の輝きの優美さにはため息が出ます。写真では残念ながら細かなところまでは写っていませんけれども・・・。
写真の本は古い個人歌集ですが、いろいろな模様紙や絵の刷られた紙が白紙と交互に綴じられています。紙の種類も触った感じ少しずつ違うようです。和綴でもないし、本棚に並んでいたらほとんど気づかないような地味な背、表紙の本。
この造りは江戸時代初期の嵯峨本(光悦本、角倉本とも)の造りを模したもののようです。嵯峨本は、京都・嵯峨で出版されたことからそう呼ばれています。京都の水運業者角倉家の財力と本阿弥光悦の美的センスから生まれた、装丁、内容、手跡まで贅をこらした豪奢な書物の総称です。その豪奢な工芸的意匠の第一の特徴が、色変わり(丁ごとに違う色の紙を使う)で、雲母で模様を刷った装飾料紙。当然ながら、そんなにたくさんの部数は印刷できません。写真の本も活版で印刷された本ですが、もちろん私家版、たくさん刷っていてもおそらく数百部程度でしょう。
図書館蔵書では珍しい本に触れる機会がたまにありますが、このような凝った造りを発見したときは、装丁をした人の「どうだ!」という満足げな顔が見えるようで、ちょっと幸せな気持ちになります。