こんにちは。データ部AS・伊藤です。主に和装本を担当しています。
「戦前の古い本」とか「明治時代の古い資料」とかいった表現は、日常の感覚で言えば
ごくふつうの表現かと思います。TRCでももちろん、ほとんどすべての者がそうした感覚を共有しています。
が、そうしたなかでただ一人だけ、どうも感覚がずれてきているようです。
以前書きましたが、「和装本」ということで資料をお預かりすると、江戸時代以前のものだけではなく、明治以降の出版物も混じっていることもしばしば。
そうしたものを手にしたり、持って来られて相談されたりすると、「ああ、これは明治のものだから新しいですよ」とか「幕末だからそんなに古くないですね」などということを、ごく天然に口にしてしまいます。
話している相手の、ちょっととまどったような苦笑気味の表情で、おのれのズレ具合を認識することになります。
実感としては、18世紀後半から19世紀前半、安永から天保といったあたりのものを目にすることが多いでしょうか。17世紀前半以前(中国のものでは明以前)となると、ちょっと「ほお~これはこれは」という感じになります。
ということで、部内でも浮き気味の(?)わたしですが、世の中には上には上がおられるものです。以前、稀覯本を多く所蔵していることで著名な某図書館の方に、館蔵資料を案内していただいたことがありますが、貴重な中世の写本を次々に見せていただくなかで、「ああ、これは江戸に入ってのものですから新しいです」とさらっと言われました。
何が古くて新しいかは相対的なもの、いずれは「平成の古い本」という感覚がふつうになる日もくるのでしょうね。