4月木曜のブログのテーマは「古典」。
大人になってから誰もが一度は思うことに、「時間がたっぷりある十代に、もっとたくさん古典を読んでおけばよかった」というのがあるのではないでしょうか。
大人になってから読んだ古典より、頭が柔らかくて感受性の豊かな十代に読んだ古典の方が、自分の精神に息づいている気がします。
学校の図書館にあった岩波文庫コーナーで、気になるタイトルの本を抜き出してはパラパラとめくり、「これは難しすぎる」「これなら読めるかな」と吟味していたあの頃。背伸びして借りてはみたものの、数ページ読んだだけで放り投げた本も数知れず......。
そんな風に手にとった数々の古典のなかで、予想外に面白くて一気読みした作品に、中江兆民の「三酔人経綸問答」があります。
「三酔人経綸問答」
(岩波書店1979)
南海先生、洋学紳士、豪傑君という3人の男たちが酒を飲み交わしながら行う政治問答なのですが、まずこの設定がユニークですよね。
会話形式なのでとっつきやすく、現代語訳なら1時間程度でサクッと読めてしまうのですが、そこで彼らが議論しているのは、東洋の小国である日本がどうすれば独立発展していくことができるのかという壮大なテーマです。
書かれたのは明治20年ですが、いま読んでも気づかされることが多いのは、この作品で中江兆民が問題提起していることが、今の日本にも通じることだからでしょう。まさに、日本政治思想の古典といえる作品です。
そして、同じく十代の時に一気読みしたのが、福沢諭吉が自分の生涯と思想を綴った「福翁自伝」です。福沢の人となりがヴィヴィッドに伝わってくる、個人的にもっとも好きな自伝です。これを読み終えた時は、歴史上の人物だった福沢諭吉がぐっと身近な存在になりました。古典の素晴らしさは、時代を越えて作者とリアルに出会えることだと教えてくれた作品です。
「福翁自伝」
岩波書店(2008.12)
政治思想の本というと小難しそうですが、この2冊はとても読みやすく何より面白いので、機会があればぜひ手にとってみてください。