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存巻と欠巻―和漢古書の書誌的巻数(続)

こんにちは。AS 伊藤です。主に和漢古書を担当しています。

前回、和漢古書のタイトルの一部として記録する「書誌的巻数」についてひととおり見てきましたが、巻単位で欠失がある場合、そのことも「書誌的巻数」の位置で表現します。なお、巻単位ではなく単に欠損があるという場合は、注記にのみ記録することになります。

NCR87R3の2.1.1.1A(古)を見てみると「欠本の場合は、完本の巻数を記録し、続いて記述対象の現存巻数を丸がっこに入れて「存」字を先立てて付記する。完本の巻数が不明な場合は、現存巻数のみを丸がっこに入れ、「存」字を先立てて付記する。存巻ないし欠巻の内容や残欠の状況については、注記する。(2.7.4.8参照)」とあります。
基本的にこれでよいのですが、欠巻がある場合、つねに書誌的巻数のところで記録するかというと、冊子目録等では、全体の半分もしくは1/3程度以上が欠けている場合のみ「~巻(存○巻)」と記録し、欠巻の割合が少ない場合は注記するにとどめていることも多く、実質それで問題ないだろうと思います。すなわち「大倭本草 16巻附録2巻諸品圖3巻 (存12巻附録2巻諸品圖3巻)」などという書きかたはいささかくどすぎるのであって、こういう場合タイトルは「大倭本草 16巻附録2巻諸品圖3巻」とだけして、欠巻の内容を注記するのみでじゅうぶんとする、というのがむしろ伝統的なやり方です。
また、NCRの例示も、注記で使用している記号などあまり適切なものとも言いがたいような気がしますし、「存巻」「闕巻」というのは漢籍では使いますが、和古書の場合は「~を欠く」「~を存す」といった書き方のほうがよいかと思います。ちなみに漢籍の冊子目録などで目にする「闕巻第2第4至第6」といった書きかたは「第2, 4~6巻を欠く」ということを意味します。
なお、一部の巻しか残っていないものを翻刻したとか、成立時や刊行時から一部の巻が欠けていたとかいう場合は、「原闕巻~」と注記します。

さて、存巻の記録にあたって注意したいのは、タイトルのところで書誌的巻数として記録するのは、あくまで「何巻分がある」「何巻分が残っている」ということであって、「第○巻が残っている」ということではない、ということです。たとえば、全5巻の図書で、残っているのが第1巻だった場合も第2巻だった場合も、書誌的巻数の記録はどちらも「5巻(存1巻)」ということになり、「第1巻を存す」「存巻第2」といったことは注記に記録することになるわけです。
逆に言えば「5巻(存2巻)」とあったら、それは第2巻が残っているということではなく、第1と2、あるいは第3と4、その他どういう組み合わせでもよいのですが、「2巻分が残っている」ということを意味します。時々そのことを明きらかに勘違いして記録している書誌を見かけますが、「巻次」と「巻数」とを混同しないように、よくよく注意しましょう。

以上、書誌的巻数につきいろいろ述べてきましたが、いくつか補足しておきたいと思います。
図書によってはもちろん、「巻」というかたちで中身が分かれていないようなものもあり、そうした巻立てがないような本の場合、NCRでは巻数は記録しなくてもよいことになっています。ただし、漢籍の場合は、そうしたものも「1巻」もしくは「不分巻」と記録するのが伝統的なやり方であり、冊子目録などではそうなっていることが多いです(おおむね本体が50丁を超える場合に「不分巻」とします)。
なお、巻立てされていない本体と附録等から構成される場合は、「1巻附録1巻」のように記録することができます。こうしたものを「朱子訓子帖 1巻附録1巻」という具合に記録したほうが、「朱子訓子帖」と「訓子帖附録」の合集、といったようなかたちで記録するより、はるかにスマートです。

巻数をカウントする場合、たいていは巻次が各巻の首尾に記されているのがふつうですので、そこを数えて記録します。巻首・巻尾に明記されていない場合も、版心やのどに記載があることが多いです(ちなみに草双紙類の場合、5丁ごとに柱の上段・中段・下段が黒塗りされているなどしていて、それが巻次を示していることになります)。それらに記載がなくても、目次から判明・採用する場合もあります。だたし、それぞれ虚偽の巻次・巻数を記している場合もありますので、注意が必要です。
基本的に、1巻のなかでは丁数は原則として連続しており、巻が改まると丁付けも改まるのがふつうです。ただし、丁付けが連続していても、本文等に巻が改まっていることが明示されていれば、そこから巻が改まったものと見なすことができます。とは言っても、内容が変わっただけでは巻が改まったとは見なしません。
逆に、本文に巻が改まっていることが示されていなくても、丁付けが改まっていれば、そこから巻が改まったものと見なすことができます。
なお、1つの巻がさらに「上下」や「乾坤」に分かれている場合もありますが、そうした場合は複数巻としてカウントせず、あくまで1巻分としてカウントするのが原則です。

多巻ものの古典で1巻だけ残っているようなもの(零本)などの場合は、「源氏物語若紫巻」「大般若波羅密多経巻三百八十二」のように、巻次を含めて本タイトルとして記録することができます。この場合、数字はアラビア数字に置き換えることはせず、情報源に表示されているままに記録します。あるいは、巻次にあたる部分はタイトル関連情報として記録するのでもよいかもしれません。

なお、題簽や見返しに「全」「単」「完本」などとあるものは、図書の構成状態を示すものですので、書名の不可分の構成部分と見なされないかぎり、記録する必要はないかと思います。

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