こんにちは、典拠班の木内です。
4月に入社した新入社員が各部署研修のため、先週までデータ部で研修を受けていました。初々しい、まぶしい。
ふと、自分がこの仕事をはじめた頃のことを思い出しました。
正確に、迅速にデータを作成する。その他に人名典拠ならでは(?)の気をつけていることがあります。
それは「先入観を持たない」ということです。
例えば日本人名
角田という姓、なんと読みますか?
角田には「スミダ」「ツノダ」「カクタ」など、いろいろな読み方があります。
名の読み方もしかり。
剛ならば「ゴウ」「ツヨシ」「タケシ」など、さまざま。
人によっては同じ漢字で幾通りかの読み方を使用する、という場合もあります(統一形にどの読み方を採用するか悩ましいところです)。すぐ思いつくのは、俳人の坪内稔典氏。「トシノリ」と「ネンテン」の両方のヨミを使われていますね。
読み方が不明の場合、推測できないような難読名、難読姓に出会うと、毎回「なんて読むの!?」と心の中で叫んでいます...
外国人名となると
姓と名の要素はどれか、もしかしたら姓が無い国の人かもしれない、ペンネームかも? そして「なんて読むの!?」再び...
典拠をはじめたころは、姓の概念がない国があるなんて思いもしませんでした。作業を進めていると、人名からその国の文化や歴史がすけて見えてくることもあり、とても興味深いです。
「先入観を持たない」、いつも頭のどこかにあります。
参考図書で人名を調べているときに、この「先入観を持たない」に出会うこともあります。
どんな参考図書かというと、こちらです。
『明治人名辞典』日本図書センター
『大正人名辞典』日本図書センター
これらは大正時代、明治時代に発行された辞典の復刻版です。明治・大正時代の人名を調査する際に参考としています。あまり登場する機会は少ない参考図書ですが、この辞典を開くと、必ず「先入観を持たない」こと、初心忘るべからず、と自分自身にコールされる気分。
なぜ、この辞典がその注意喚起をしてくれるのかというと、「いろは順」配列なのです。
おそらく、大正時代の復刻のためなのでしょう。「五十音順」(あいうえお順)ではなく、「いろは順」。かつての日本では広く「いろは順」が用いられ、古くは江戸町火消しのいろは四十七組は有名ですし、地名や番地がいろは順の地域もあります。その例にもれず当時の辞書配列も「いろは順」だったのですね。
最初この辞典を見た時はびっくり! 五十音順以外の配列なんて想像したこともなかったからです。おろおろして全然辞典が引けませんでした。今でもいろは歌をあやしげに暗唱しながらこの辞典を引いています...笑
ちなみに日本図書センターからは『昭和人名辞典』の復刻版も発行されていますが、こちらは五十音順(あいうえお順)です。
初心忘るべからず
先入観を持たず、人名典拠に勤しみたいと思います。