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2019年3月15日 アーカイブ

2019年3月15日

篆書との格闘-アイテムレベルの注記(2)

こんにちは。AS 伊藤です。主に和漢古書を担当しています。

前回にひきつづき、蔵書印について書きます。
蔵書印は朱印か黒印がふつうですが、藍色や緑色のものもあります。かたちは正方形のものが多いですが、長方形や円形のものもしばしば見られます。凝ったものでは、鼎(かなえ)型や瓢箪型のもの、白澤(はくたく)という伝説上の生き物をかたどったものなどもあります。
また、蔵書印の印文は、基本的には前述のとおり誰の所蔵かということを示すだけのものですが、時には古人の詩句を引用したり文章になっていたりする「詞句成語印」もあり、このあたりは教養の見せどころになっています。
書体は篆書体が一般的で、したがって和漢古書の目録作業にあたっては篆刻字典が欠かせません。時として、古代の青銅器に刻まれた書体である金文や甲骨文字を用いているような、手強すぎるケースもあります。そのほか、図案化した糸印(いといん)や役所の印判ふうの關防印(かんぼういん)というようなものもあります(後者は書画の引首印の意味でも使われますがほんらい別もの)。

書誌記述にあたっては、複数の印が捺されている場合、「捺された年代順に記録する」のが原則です。重なって捺されているときなどはもちろんわかりやすいですが、そうでなくても、本文巻頭の右下から右上に、前に捺されたものや文字を避けながら捺していくのが基本的なルールですので、もちろん例外は多々あるとは言え、そのように記録していけばほぼ間違いないでしょう。
記述のしかたとしては「印記:「〇〇藏」、「〇〇圖書記」」のように書きますが、誰の蔵書印か判明していれば名前を括弧に入れてつづけて書くようにNCRでは規定されています。もっとも、図書の特定の場所に捺されている場合にその場所を括弧に入れて書くやり方も考えられたりもするので、理想的には「旧蔵者典拠」を作ってそれとリンクさせるのがもっともよいでしょう。国文学研究資料館が公開している「蔵書印データベース」は、その意味でもたいへん有益なデータベースになると言ってよいと思います。

このデータベースは非常に便利で、印文の一部が読めない場合など、印のかたちや大きさや色、陽刻(朱文)か陰刻(白文)かなどといった条件を加えて検索ができますし、4文字目がたとえば「學」とあることだけがわかるとき「4学」と入れれば該当するものを示してくれるなど、出現位置や文字の総数といったいろいろな条件で検索でき、国文研の電子資料館のなかで出色のものと思います。数年前までは、専門書の索引や篆刻字典をあたるしかありませんでしたので、インターネット環境でほんとうに便利になったものです。
といって、上記データベースなどに収録されていないものも多数ありますので、読めないものは「蔵書印2印あり」とか、「印記:「(糸印)」」のように記録しておけばよいでしょう。

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