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松本幸四郎さんが2013年に書いた本について考える ~典拠のはなし~

「松本幸四郎さんが2013年に書いた本を読みたい」という方がいらしたとします。

TRC MARCを見てみると、2013年に刊行された図書で責任表示に松本幸四郎とある本は

「松本幸四郎」松本幸四郎(著)日本経済新聞出版社(2013.8)

のみのようです。
なので、こちらをお渡しすればOK。・・・でしょうか。

OKかもしれないし、OKではないかもしれません。
実は今回のテーマ、言ってしまうと設問不備でして、お探しの本を確実に見つけるには今のままでは情報が不十分です。

「松本幸四郎さんが2013年に書いた本を読みたい」と言われたら、本を探す前にその方に確認しなければいけないことがあります。それは、
(1)「2013年時点の松本幸四郎さんが2013年に書いた本」を探しているのか
それとも
(2)「今の松本幸四郎さんが2013年時点に書いた本」を探しているのか

どういうこと?と思われた方「松本幸四郎 襲名」でweb検索をしてみてください。
2018年1月に松本白鸚、松本幸四郎、市川染五郎の、三代同時襲名が行われたのです。

2021年現在の松本幸四郎さん(=松たか子さんのお兄さん)は、2018年1月に襲名した10代目。2013年時点ではその前のお名前、市川染五郎(7代目)でした。

なので冒頭のご要望があった場合、
(1)「2013年時点の松本幸四郎さんが2013年に書いた本」を探しているのであれば、最初に提示した1冊、現・二代目松本白鸚(=松たか子さんのお父さん)が九代目松本幸四郎時代に書いた本でよさそうですが、
(2)「今の松本幸四郎さんが2013年時点に書いた本」を探していた場合、2013年に出版された図書に記載されているのはその時のお名前「市川染五郎」なのでそちらで検索しないといけません。

いやそんな、いつ襲名したとか前のお名前とか何代目とか覚えていませんよ!と思われた方、こんな時に力になるのが典拠ファイルです!

(2)のパターンを、実際にTOOLiで検索してみましょう。
図書検索画面にて、典拠ファイルONの状態で著者名に「松本幸四郎」と入力すると
・松本幸四郎(7代目)
・松本幸四郎(9代目)
・松本幸四郎(10代目)
のファイルが出てきます。典拠ファイルの情報を見れば「2018年1月10代目松本幸四郎を襲名」とある「松本幸四郎(10代目)」が現在の松本幸四郎さんだとわかります。
(芸能ニュースを覚えていなくても大丈夫です!)
そして、
松本幸四郎(10代目)=市川染五郎(7代目)
と、襲名前後の名称が相互参照になっています。

つまり、現在の松本幸四郎さんが市川染五郎時代に書いた本を探したいときは、市川染五郎(7代目)のファイルにリンクしている図書を検索すればよいのです。

現在の松本幸四郎さん、2013年には市川染五郎(7代目)としてこちらの本を書かれていました。

「染五郎の超訳的歌舞伎」市川染五郎(著)小学館(2013.4)

(2)のパターンだった場合、こちらの本をお渡しすればよさそうです。

世系違いの同名の区別から相互参照まで。典拠ファイルの機能を活用してみました。

こちらの記事も併せてご覧ください。
世系のある人~典拠のはなし~
襲名披露とかけまして

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