典拠・望月です。
しばらく前から、来ているような気がします。韓国文学ブームが。韓国からの翻訳小説(ほかエッセイや人生訓風なものも)が増えるにしたがい、典拠班でも韓国の作家さんの典拠ファイルを作成することが増えてます。
いま中国のSF小説も人気なようですし、東アジア文学に注目が集まっているのでしょうか。
韓国や中国など漢字圏の国の人を、TRCでは「東洋人」というくくりにしています。そこで今回の典拠のはなしは、東洋人の典拠ファイルについてよもやま話をしてみたいと思います。
まずは、著者の名前の表記について。最近の本では、韓国出身の著者の表記をカタカナにしているのを多く見ます。この現象、典拠班的にはちょっと困る!となってしまうのです。なぜかというと、同姓同名が多くなってしまうから。
小説「82年生まれ、キム・ジヨン」の「キム・ジヨン」を例にしてみます。TRCの人名典拠ファイルで「キム,ジヨン」のヨミを持つ人名は
金/知栄
金/智栄
金/智英
キム/ジヨン
などなど。漢字で表記されるとパッと見て別人だというのがわかりますし、典拠ファイルにおいても漢字形ちがいの別ファイルとして作成すればよいのです。
しかしこれらがすべてカタカナで表記されるようになると、同姓同名のファイルが4件できてしまうことに。この本を書いたキム・ジヨンさんは、あの本の著者のキム・ジヨンさんと同じ人?それとも別人?
確認するのにとても手間がかかりますし、あやまって別の人のファイルにリンクさせてしまう危険性もあります。慎重さがより求められます。
つづいて名前の読み方について。
東洋人の名前には二通りの方法での読み方が想定されます。
①母国語のヨミ
②日本語のヨミ
①の母国語のヨミとは、その国の発音で読んだ読み方です。
例:郝景芳→ハオ.ジンファン
②の日本語のヨミとは、日本語の漢字の発音で読んだ読み方です。
例:郝景芳→カク,ケイホウ
MARCの著者のヨミが、仮に母国語のヨミだけだとすると検索で不便なことが出てきます。母国語のヨミは、その言語を知らない人には推測がむずかしいので、カタカナ形での検索ができなくなってしまうのです。そのため、著者表示が漢字で、統一形のカタカナ形が母国語のヨミの場合のときだけ、MARC上に母国語のヨミと日本語のヨミの両方を入力しています。
著者 郝/景芳//著
カタカナ形① ハオ.ジンファン
漢字形 郝/景芳
カタカナ形② カク,ケイホウ
東洋人の典拠ファイルの中には、母国語のヨミと日本語のヨミをMARCに持たせるため、一つの漢字形に対して二つのヨミを持つ特殊な例が存在するのです。
統一形 郝/景芳 ハオ.ジンファン
記述形 郝/景芳 カク,ケイホウ
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実をいうと、韓国文学ブームにも、中国SFブームにもすっかり乗り遅れていますので。
ゆっくり書店を訪れられるようになったら、気になる本を探して書架の前で迷いまくりたいものです。