10月の木曜日は「思い出の一枚~美術編~」というテーマで、芸術の秋にちなんでアート作品についての話題をお届けします。
先週の記事に登場した徳島県の大塚国際美術館に行ったことがあります。実物大のシスティナ礼拝堂のレプリカ、鮮やかなものでした。おすすめします。
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紀元前3000年~2000年ころ、新石器時代でしょうか、エーゲ海キクラデス諸島のある島の人は、狩りや漁のあいまに、やわらかな白い石で小さな像をこしらえました。背もたれのない椅子に、ちょこんと腰かけ、右手にコップを持ち左の手は右ひじに軽く添えています。顔を少し上向きにして、ちょっと考えごとでもしているようです。
白い石をなめらかに削って仕上げたこの像を、家に飾ったのか、だれかに捧げたのか、あるいは子供に与えたのか。これを作った人、これを喜んだ人のことを自然と想像してしまう小像です。
鼻筋は見えますが、目や口はないというプリミティブな造形が、ミニマルな現代アートのようにも見えてしまう。洗練された雰囲気です。「cycladic art cup bearer」で検索すると、画像がみつかります。シンプルで品よく、愛らしい。
キクラデス諸島といえば、ミロのヴィーナスが出土しています。ヴィーナスのざっと2000年前はこんなアートがあったのでした。
おそらく初めて上野の西洋美術館へ行ったときに見たものです。当時小学5年生。大昔のギリシャの人が作ったのだということくらいしか理解できませんでした。でも、遠い昔の遠い場所の人がつくったものに、懐かしい親しみを感じたのです。
コップの飲み物を飲んで、一息つくような生活があり、それを形にして楽しむ余裕、つまり文化があったのかと。小さな像を介して、4000年前の人に「出会った」経験でした。図録は実家にまだあるはず、TRCマークにもあります。
ギリシャ美術の源流
-エーゲ海キュクラデス諸島出土 グーランドリス・コレクション-
国立西洋美術 監修
もう一度、見たい...いや、会いたい。ギリシャに行かないとだめかな。