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個人名典拠特別訂正(河鍋暁斎) ~典拠のはなし~

こんにちは、典拠班の木内です。
今週典拠班にとって、とても緊張感のあるメンテナンスがありました。
それは、個人名典拠特別訂正です。


Q:個人名典拠特別訂正とは?
A:個人名典拠ファイルの読みをより適切な読みへ訂正することです。
通常、典拠ファイルでは初めての著書や参考資料に表示された読みを採用しますが、まれに、その後の著書や参考資料に別の読みが表示されることがあります。別の読みの出現が顕著になったとき、すべての著書や参考資料の再調査を行います。その結果、現在流通している著書3分の2以上および最新の参考資料に多く表示されている読みが現行の典拠ファイルの統一形と異なることが判明した場合に、より適切な読みへ訂正を行います。


今回で10回目の実施となる個人名典拠特別訂正。
今週3件のカタカナ形(読み)の訂正を行いました。

・河鍋/暁斎
 カワナベ,ギョウサイ → カワナベ,キョウサイ

・河鍋/暁翠
 カワナベ,ギョウスイ → カワナベ,キョウスイ

・鈴木/其一
 スズキ,キイ → スズキ,キイ

※更新データは10/15(土)提供分に収録されます


◆今回の訂正に関するご案内は
・「週刊新刊全点案内」2276号(9/27発行)同封物
・TOOLiお知らせページの「2022年10月個人名典拠特別訂正のご案内」
詳しくご案内しておりますので、ぜひご覧ください。


◆これまで実施した特別訂正については
・TOOLiお知らせページ の「これまでの個人名典拠特別訂正 [訂正用データ]」
をご覧ください。


今回、特別訂正をした3件のうちで、大物はなんといっても河鍋暁斎です。
おどろおどろしい絵が多いためか、毎年夏近くなると美術展が開催され、関連図書が出版されます。そのたびに典拠班の心の声は...この本も!あの本も!キョウサイ!Kyosai!
MARCの著者の読みには、典拠ファイルの統一形(優先名称)である「カワナベ,ギョウサイ」とのみ記録されるため、図書との相違にジリジリとしたものです。
図書館からのお問合せもいただいておりました。


そもそも統一形に採用している「ギョウサイ」の根拠は?
見直しが必要では?
典拠班での意見が高まり、訂正へ向けた調査を開始しました。


まず、最新の参考資料(人名辞典等)はどちらの読みで掲載しているのか?
河鍋暁斎の典拠ファイルを作成した30年前から、どのような変化があるだろうか? またはないのか?
結果、「キョウサイ」の読みが優勢と判明。参考資料によっては「ギョウサイ」から「キョウサイ」へ訂正しているものもありました。
また、河鍋暁斎が元は「狂斎(キョウサイ)」を号とし、読みはそのままに「暁斎」へ変えたのだという説。子孫の方による「キョウサイ」が正しいとする情報を発見。もともとは「キョウサイ」だったが、大正時代に発明された「ルビ付き活字」により「ギョウサイ」が定着してしまったという興味深い記述にも出会いました。


次に、これまで刊行された図書にはどのような読みが表示されているのか?
個人名典拠ファイルにリンクするMARCだけではく、タイトルに暁斎を含む図書すべての調査開始!
公共図書館だけでは網羅できず、国立国会図書館へ調査に出かけること数度。国会図書館での調査は、来館の予約制限が緩和され、出納が3冊から5冊に増えたためかなりスピードアップできました。
しかし、美術展図録となると図書館にも蔵書されていないものもあり、未確認の図書は2冊...。それでも約70冊を確認し、「ギョウサイ」の読みはなんと4冊のみ! 1994年発行の図書を境に「ギョウサイ」の読みは見当たらなくなり、1995年以降は「キョウサイ」の読みのみが確認できました。
結果、読みが表示されている図書のうち3分の2以上が「キョウサイ」であることが判明。


この結果を踏まえて、今回の特別訂正をする運びとなりました。
「ギョウサイ」から「キョウサイ」へ訂正をしましたが、「ギョウサイ」の読みは典拠ファイルの参照形として提供しております。典拠ファイルを経由すれば「ギョウサイ」も「キョウサイ」も、どちらの読みでも検索できますのでご安心下さい。


今後も読み違いが顕著になった典拠ファイルには柔軟に対応し、より使いやすいデータの提供を目指します。
しかしながら、全データを見張るというのは難しいのが実状です。
図書館からの問合せがきっかけで、特別訂正を実施するケースがほとんどですので、この読みはどうなんだろう? というものがありましたら、お気軽にお問い合わせいただけると幸いです。

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