11月の雑記テーマは「箱もの」。
芸術の秋、企画展など足を運びたい場所は数あれど、今月は建物そのものに注目してみます。
美術作品がキーとなる小説が好きで、物語中に出てきた作品を実際に観るために旅することがしばしばあります(ここ数年はめっきり足が遠のきましたが...)。
これまで訪れた中で建築として特に記憶に焼き付いているのは、パリの「オランジュリー美術館」です。元々はチュイルリー宮殿のオレンジを育てるための温室だったそうですが、モネが描いた連作「睡蓮」を展示するために整備されたのだとか。近隣の美術館に比べると小規模ですが、建物の中は実に見事でした。
楕円形の特別展示室には計算され尽くしたベストな量の太陽光が入り、まさしく絵を描くうえで「光」を大切にしたモネのために考えられたものと言えます。ゆるやかにカーブする壁には360度どこを見ても「睡蓮」が目に入るよう飾られていて、まるで自分がモネ自慢の庭に招かれたような感動で胸がいっぱいになりました。
原田マハさんの「ジヴェルニーの食卓 」を読んで訪れたオランジュリー美術館。いつかもう一度、あの光あふれる空間に立つ日を夢見ています。