4月の雑記テーマは「大人になっても好きな児童書」。
お題を頂いて考えてみたのですが、小学生の頃から実家の本棚の挿絵のある本を引っ張り出して読んでいたので、あまり児童書を読んだ記憶がないことに気づきました。
そんな中ではっきり思い出せるのは、母の本棚にあった松谷みよ子さんの「モモちゃんとアカネちゃん」。多分、黒いつぶらな瞳の女の子の表紙に惹かれて手に取ったのだったと思います。
幼いモモちゃんとママとパパ、妹のアカネちゃん。成長する子どもたちの日常を柔らかい筆致で描いた短編集ですが、物語が進んで成長していく子供たちとはうらはらに、パパとママの間に不穏な空気が漂い始めます。
帰ってこないパパに悩み、幼い子どもたちがいながらも死にたいとまで思い詰めているママが森に行くと、魔女然とした森のおばあさんが、夫婦それぞれの本質を木に例えて「あるく木とそだつ木が、ちいさなうえ木ばちの中で、根っこがからまりあって、どっちもかれそうになるところへきているんだよ」とアドバイスします。アドバイスを受けて離婚を決めたママ。そこから小さな女の子二人とママの生活が始まります。
子どもながらに、このかなりシビアな状況を「そういうこともあるんだな」とストンと理解できたのを覚えています。
親の離婚を描く児童書は少なくはない(読み物キーワード「離婚-物語・絵本」は2023.4現在 362件)ですが、子供にとっての事件ではなくて、当事者の夫婦の心持や決断を描いたものはどれだけあるのでしょう。
この記事を書くにあたってもう一度読み直したのですが、読んだ印象はあまり変らず。ということは、小学生にも十二分に理解できるようにママの心情が描かれていたのでしょう。
離婚だけでなく、病気や死などシビアな話題も時々扱いながらも、全体的にユーモアと優しさにあふれる観点で語られる日常は、不思議に明るく思い出深い児童書です。