著者のヨミが違う!? ~典拠のはなし~
個人名典拠ファイルを作成していると、しばしばヨミの違いに遭遇します。
同一人物ではあるものの、図書に記載されているヨミと典拠ファイルのヨミが違う。どちらかが誤りかもしれないが、確認がとれない。そんな状況が少なくありません。
一番多いのは、清濁の違い。
ヤマザキ、ヤマサキ等です。
姓に多く見られます。
どちらかが誤植なのか?どちらとも使用するのか?あまりこだわりがないのか?
調査しても判然としないことが多く悩ましいです。
二番目に多いのは、音訓の違い。
こちらは名が多い。
例えば、柳宗理の「ヤナギ,ムネミチ」「ヤナギ,ソウリ」。
本名と通称の関係(両方使用する)や改名(ヨミの変更)
というパターンがあるようです。
清濁に比べて音訓の場合は違いが目立ち気になります。なにより、検索が上手くできなくなると困る。
では、ヨミの違いが生じたとき、
・典拠ファイルはどのような対応をするのか?
・MARCはどのようになるのか?
をご紹介します。
今回例に上げるのは俳人、坪内稔典さん。
この方は「ツボウチ,トシノリ」「ツボウチ,ネンテン」の二通りのヨミ方を使用しています。「トシノリ」は本名、「ネンテン」は通称や愛称のようです。どちらのヨミも間違いではなく、改名でもない。
ヨミ違いを発見した場合の典拠ファイルの対応と、MARCの記録方法を見ていきたいと思います。
【図書の表示】
「一億人のための辞世の句」
坪内稔典 Tubouchi Nenten ← 「ネンテン」のヨミを発見!
典拠ファイルの統一形は「ツボウチ,トシノリ」。
このようなとき、まず図書の「ネンテン」のヨミが誤りでないかを確認をします。
誤りではないと確認できた場合、典拠ファイルに統一形とは異なるヨミの参照形を作成します。
●典拠ファイル
統一形:坪内/稔典 ツボウチ,トシノリ
参照形:坪内/稔典 ツボウチ,ネンテン ← 異なるヨミの参照形作成
MARCはどのようになるでしょうか。
●MARC
MARC No:15002644
タイトル:一億人のための辞世の句
タイトルヨミ:イチオクニン/ノ/タメ/ノ/ジセイ/ノ/ク
著者:坪内/稔典
著者ヨミ:ツボウチ,トシノリ ← MARCの著者ヨミには統一形のヨミを記録
図書には「ネンテン」のヨミがありますが、MARC上は「トシノリ」と記録。
図書とMARCを比べた時に、「MARCが間違っている!?」ように見えますが、これはMARCに個人名典拠ファイルの統一形のヨミのみを記録しているためです。
MARCの典拠形アクセスポイントが統一されている(統一形からのヨミを記録する)ことによって、図書記号や配架がばらつくことはありません。
検索については、典拠ファイルにヨミ違いの参照形を作成していますので、典拠ファイルを経由すればどちらのヨミでも検索可能です。
図書館現場で、このようなヨミ割れを起こしている著者の図書の受け入れしていると、MARCの著者ヨミが間違っている?と慌ててしまうことがあるかもしれません。そのような場合、TOOLiの典拠検索などで典拠ファイルを確認していただくと、実はヨミ割れを起こしている著者という可能性があります。
図書に表示されているヨミが典拠ファイルの統一形と異なり、その異なるヨミの参照形が無い場合、
・図書のヨミが誤植 ... 誤植の場合、参照形は作成しません
・データ部典拠班でヨミ違いが把握できていない
この2つの理由が考えられます。
ヨミ割れを起こしている著者に関して、典拠班では図書のヨミの出現状況をすべて記録し、統一形の適切なヨミはどれか?という検討を行っています。統一形のヨミを変更した方がよいと判断すると、個人名典拠特別訂正を行います。→ 前回の特別訂正はこちら「個人名典拠特別訂正(河鍋暁斎)」
現在、典拠班が把握しているヨミ割れの個人名典拠ファイルは約700件。そんなにあるのか!と毎回驚いてしまいます。
典拠班ですべての図書の情報を網羅することは難しいのが現状。そんなときはぜひ図書館現場の方のお力をお借りしたいと思っております。
何かしらデータ上の疑問があった場合は、お気軽にお問合せいただけると幸いです。