7月の雑記テーマは「舞台・ミュージカル」。
出演者やテーマに惹かれてときどき観に出かける程度ですが、役者さんの演技の凄みに観劇後しばらく座席から立ち上がれなかった作品があります。
それは寺山修司の戯曲「海王星」。作者が20代の頃手がけた作品で、あらゆる事情から劇作として世に出る機会を失ったまま半世紀以上が経ち、近年になって初めて音楽劇が上演されました。メインとなるのは、嵐で出航できない船上ホテルを舞台に繰り広げられる、父と息子、そして父の婚約者の愛をめぐる悲しい物語。それぞれの鬼気迫る演技や、その周りを彩る力強いバイプレイヤーたちから目を離すことができませんでした。
そしてもう一つの魅力は劇伴。舞台上でしっかり見える位置に楽隊のいる生演奏は、やはり鳥肌モノです。このときは青春時代によく聴いていた(そして後に解散した)バンド出身のアーティストが劇伴を手がけているとチケット購入後に気が付き、勝手に運命を感じたものでした。
TOOLiで検索してみたところ、単行本のない「海王星」を内容細目タイトルとして採用している古いMARCが1件だけありました。現代ではもう入手が困難な本作。観劇後、蔵書のある図書館へいそいそと足を運んだのでした。