さてMARC MANIAX典拠ファイル6回目は直接参照その2です。
前回図書にあるかなヨミと統一標目のヨミガナが違っていた場合を説明しましたが、今回は漢字形が違っていた場合のお話です。
漢字が違っていたら図書にあるまま記述して、統一標目を対で入力するのだから、漢字が違う場合の参照形ってあるの?と思われる方、あるんです。
いくつかパターンがあるのですが、ここでは代表的な例でご説明しましょう。
今回のタイトルに使った、吉良上野介。
この人物はMARC上では著者としてではなく、個人件名として出てきます。実は著作がなかったわけではなく、「禁中式目」という本を著しているようです。
ただこれまでのところ、TRC MARCにはこの本のデータはなく、やはり忠臣蔵の被害者(?)ということで扱われてばかりです。
TVドラマや映画では、一般的には吉良上野介と呼ばれているこの人物、TRC MARCでの統一標目は、吉良上野介ではなく吉良義央です。
それはなぜか?
「日本目録規則」(NCR)で
著名な,あるいは著作の多い著者については,統一標目は次の優先順位による。
ア)参考資料等において多く用いられている形
イ)多くの著作で一致している形 (1987年版 改訂3版 23.2.1.1)
となっているのですが、これは著者だけでなく、個人件名にも当てはめています。
ここまで読んではた!と気が付いた方、正解です。
吉良上野介は、人名事典等では吉良上野介ではなく吉良義央で出ているのでした。
上野介は通称で名は義央、人名事典では通称ではなく本名で項目を立てているということですね。そして、個人件名では、図書にある形と統一標目を対で入力することは出来ないので、MARCには(個人件名としては)吉良上野介では出てきません。
しかし、自分の不勉強を棚に上げて言わせていただければ、あれだけ吉良上野介、上野介と赤穂浪士たちが叫んでくれると、赤穂藩の敵それは吉良上野介なんだ!とインプットされてしまいます。だいたい吉良義央ってどう読むのか?
ここでまたまたお助けアイテム、直接参照の登場です。
MARC上には個人件名として決して出てこない、このあまりにも有名な吉良上野介で検索したとき、吉良義央が統一標目だとわかるように、典拠ファイルに吉良上野介を参照形で作成してあります。
11000034540-0000 吉良/義央 キラ,ヨシナカ
11000034540-4001 吉良/上野介 キラ,コウズケノスケ
こうすることで、たとえ本名の義央を知らなくても、また漢字で義央と書くのは知っていてもどう読むのかわからなくても、無事に吉良義央の名前で検索することができるというわけです。(典拠ファイルとMARCの検索を連動させるようなシステムなら、吉良上野介で検索しても吉良義央の図書がヒットします。ただし、この吉良上野介と吉良義央の関係を知らないと、検索値で入力したものと違うものがなぜ出てくるか、ちょっと?な気がするかもしれません。)
え、最初から吉良上野介で統一標目にしてくれればいいのに?
ごもっともですが、人名事典では見事に吉良義央に揃っていて、吉良上野介で項目にしている事典は、あるのかもしれませんが確認できませんでした。
吉良上野介
→吉良義央
となっているものはありましたが。
図書のタイトル中に吉良上野介とあれば、書名で検索すればいいと思う方もいらっしゃるでしょう。確かに書名中には圧倒的に吉良上野介が多いようです。
しかし、書名中に必ずしも吉良上野介と入っているとは限りません。
具体的には
「元禄快挙別録」(1910年刊)
これも個人件名として吉良義央がMARC上にはありますが、書名はこの通りなので、書名で吉良上野介と検索しても、この図書は検索できません。
ちなみに吉良義央で掲載されていた人名事典は次の通りです。
コンサイス日本人名事典 三省堂刊
日本人名大事典 平凡社刊
平凡社大百科事典 平凡社刊
国書人名辞典 岩波書店
ところで、義央の読み方ですが、上記の事典では全てヨシナカとなってはいるのですが、ヨシヒサとも読む、と書いてある事典もあります。そこで、吉良上野介の典拠ファイルの最終形態はこのようになります。
11000034540-0000 吉良/義央 キラ,ヨシナカ
11000034540-4001 吉良/上野介 キラ,コウズケノスケ
11000034540-4002 吉良/義央 キラ,ヨシヒサ
参照形は漢字でも働き者。
通称しか知らなくてもきちんと検索できるように導いてくれます。(ただしこの人に限って言えば、吉良上野介だよなあという、時代劇に刷り込みをされた自分がいますね、確かに。)