今回のテーマは、ブログ初登場の「全集典拠ファイル」です。
「典拠」と聞けば、人名の典拠を思い浮かべる方が大半でしょうか。このブログの「MARC MANIAX 典拠」も、取り上げているのは人名典拠ファイルのみですね。ですが、実はTRCは人名のほかにも出版者、件名など、計7種の典拠ファイルを作成・提供しています。今回は、その中から「全集典拠ファイル」を取り上げます。
...ここまで読んで「なんかムズカシそう」と思われた方、私も以前そう思いました。MARCならば一冊の本のデータを凝縮したものなのでイメージが掴みやすいのですが、典拠は曖昧模糊としていて手強そう。そうは言っても苦手では済まないので、自分なりにイメトレをした結果、こう理解することにしました。典拠とは「関係のあるもの同士をつなげる」「無関係のもの同士を区別する」ための道具ではないかしら、と。...教科書的に正しいのかどうかは分かりませんが、典拠を使う分にはこれだけで十分ではという気もします。今回は、こんな我流の切り口をもとに、謎の「全集典拠ファイル」の使い方をご紹介したいと思います。
★関係のあるものをつなげる その1
「手元に「障害者自立支援六法」の平成19年版があるけれど、これの90年代に刊行されたものはないかしら」 こんな場合には典拠検索が便利です。「障害者自立支援六法」で検索すると、
障害者福祉六法 7005005-0000-0000
障害保健福祉六法 7005005-0000-0001
障害者自立支援六法 7005005-0000-0002
(見やすくするため、数字の間にハイフンを入れています)
が見つかります。各々のタイトルでMARCを検索してみると、「障害者福祉六法」は平成6年版から10年版まで計5件、「障害保健福祉六法」は平成11年版から17年版まで計7件、「障害者自立支援六法」は平成19年版1件が見つかりました。これならば、古い版年の本のタイトルを知らなくても、遡って探すことができますね。
上記の7から始まる数字を「典拠ID」と呼んでいます。つながりがある全集ならば、先頭部分は共通、末尾の数字のみ違う親子関係になっています。TRCは、タイトルが変更になっても一つの刊行物としてのまとまりが維持されている全集の1件1件のMARCに、このような数字を持たせて、本のまとまりを丸ごと探せるようにしています。
★関係のあるものをつなげる その2
全集は、刊行の途中で出版社が変更になることもあります。噂によれば、官公庁の白書や年鑑の出版社も、最近は入札で決めることがあるのだとか。そう言われてみると、最近、出版社がころころ変わる白書が多いような気がします。
青少年白書 7002836-0000-0000 (←大蔵省印刷局刊のもの)
青少年白書 7002836-0000-0001 (←財務省印刷局刊のもの)
青少年白書 7002836-0000-0002 (←国立印刷局刊のもの)
青少年白書 7002836-0000-0003 (←時事画報社刊のもの)
出版社が変わってもひとつながりとみなせる刊行物の場合も、このように親子関係にある数字を付与します。
★無関係のものを区別する
「中国年鑑」のタイトルで、MARCを検索してみましょう。最新の中国事情を扱ったもの(A)から、戦前戦中の本の復刻版(B)、さらには日本の中国地方の年鑑(C)まで入り混じって、ごちゃ~っと出てくるはずです。これらを整理するにも全集典拠ファイルは有効です。「中国年鑑」で典拠検索をしてみると、
(A)
中国年鑑 7003083-0000-0000 (←大修館書店刊のもの)
中国年鑑 7003083-0000-0001 (←新評論刊のもの)
中国年鑑 7003083-0000-0003 (←創土社刊のもの)
(B)
中国年鑑 7182869-0000-0000 (←日本図書センター刊のもの)
(C)
中国年鑑 7004021-0000-0000 (←中国新聞社刊のもの)
ほかが見つかりました。コードが親子関係のものは仲間、無関係のものは別物。これでかなりすっきりしたのではないでしょうか。
典拠IDを親子にするかしないかは、MARC作成時に、図書を繰りながら決めていきます。タイトルやその一部で検索し、前書きや刊行の挨拶文を読み、場合によっては出版社に問い合わせて、以前に仲間の本が刊行されていないかどうかを確認しての判断です。一見、無味乾燥な数字ですが、これを振るにも、しっかりと人の手はかかっているのでした。
次回は、このエントリーで乱発してきた「全集」という言葉について、もう少しきちんとご説明します。