MARC MANIAX典拠、再び始まりました。第13回は東洋人名の読み方についてです。(東洋人名とは中国人名および朝鮮人名のことをさします。)
最初に読んだときにはその良さがわからなかったけれど、大人になったある日、ふと、あの作品もう一度読みかえしてみたい、と思う...。そんな小説って、ありませんか?
私の場合は、中国の作家・魯迅の「故郷」がそうです。
では、魯迅を人名典拠ファイルで検索してみましょう。
<人名典拠ファイル>
11000109045‐0000
漢字形 魯迅
カタカナ形 ルーシュン
ここでカタカナ形にご注目。
私はこの作家を「ろじん」と覚えていましたが、TRCの統一形のカタカナ形は「ルーシュン」となっています。これはどうしてかというと、中国人名の統一形のカタカナ形を決定するにあたっては、次の規定にのっとっているからなのです。
漢字に母国語読みが併記された形で表示されている中国人名および朝鮮人名は、漢字の母国語読みで記載する。
漢字のみで表示されているものは、漢字の日本語読みで記載する。
「日本目録規則新版予備版追録および修正(版)」
3.4.3.2.2.の4 抜粋
母国語読みとは、もとの言語での発音に近い読み方、といったらよいでしょうか。中国人の人名であれば、より中国語の発音に近づけた読み方をしているものを母国語読みといいます。統一形の「ルーシュン」という読み方は母国語読み、というわけです。
一方、「ろじん」という読み方は、漢字の日本語での音読み(以下、日本語読みとします)です。上記の規定により、統一形には母国語読みを採用しましたので、「ろじん」は統一形のカタカナ形としては採用できません。ですが、日本語読みで広く知られている人の場合、そちらの名前でも検索できたほうが便利です。それに、読みかたから検索しようとした場合、漢字で書いてある名前をみて、母国語でどうよむかを想定して検索するのは、その言語に詳しくないと難しいものがあります。
そこで 図書の記述が漢字表記してあるものに対しては、記述形のカタカナ形に日本語読みを入力しています。
人名典拠ファイルではこうなっています。
統一形 11000109045‐0000
漢字形 魯迅
カタカナ形 ルーシュン
記述形 11000109045‐0001
漢字形 魯迅
カタカナ形 ロジン
これによって、漢字でどう書くか思い出せない、母国語読みもわからない...という状況でも、日本語読みから検索することができるようになっているのです。
「故郷」を最初に読んだのは、中学生の時。その当時は、登場人物の「楊おばさん」の強烈なイメージしか残らずじまいでした。今、この作品を読みたいと思うのは、魯迅がこの作品を発表した年齢と、自分の年齢が同じになったからでしょうか...。