小学校に上がったばかりの私の娘が、お友達からお手紙をもらってきました。封筒に書かれた宛名は「もへちゃんへ」。「もへ」? なんだか全身の力が抜けていくような感覚に襲われました…。正しくは「へ」ではなく「え」。娘も「は」と「わ」、「へ」と「え」、「を」と「お」の使い分けがうまくできない状態です。お友達もまだ「へ」と「え」の区別ができず、「え」と読むものはすべて「へ」と書いてしまうのでしょうね。
もし、宛名が「もえちゃんえ」となっていたら、日々目録作成業務に当たっている母としてはそれほど脱力感を覚えなかったでしょう。なぜなら、目録の世界では助詞の「ヘ」は「エ」と読む規則(日本目録規則1987年版改訂版、標目付則 1 「片かな表記法」)になっているからです。片かな表記については、国会図書館のホームページで公開されている書誌データ作成ツールでも確認できます。そこから抜粋しますと、
助詞「ハ」「ヘ」「ヲ」は「ワ」「エ」「オ」と表記する。
こんにちは コンニチワ
いずこへ イズコ エ
字を書く ジ オ カク
この規則、目録作成を始めたばかりの頃はまったくなじめませんでした。同様の規則に「2語の連合または同音の連呼によって生じた「ヂ」「ヅ」は「ジ」「ズ」と表記する」というものもあり、こちらもとても抵抗がありました。これらの片かな表記の規則は目録カード時代からの決まりごとのため、なかなかなじめない方は多いと思います。「いづみ」さんや「みさを」さんが「イズミ」「ミサオ」などとなっていたら、ご本人はあまり良い気がしないかもしれません。現に、「MARCに入力されている読みが間違っています」とお問い合わせを受けることもあります。
しかし、規則だからとは言え、「え」と「へ」の使い分けが難なくできるようになった子どもたちが図書館のOPACで「イズコヘ」と入力してヒットするMARCがなかったとしたら…? 子どものみならず、図書館の一般利用者で「イズコエ」と検索する方は少ないでしょう。この規則のせいで「ここの図書館には蔵書がないんだ」とがっかりさせないために、検索システムに「エ」と「ヘ」、「ズ」と「ヅ」などを同じものとみなして検索を実行させるしくみをもたせることができます。ためしに子どもたちが将来使うであろう区立図書館のWeb OPACで「ニホンジンヘ」とタイトルヨミで検索をしてみたところ、ちゃんとこちらのデータがヒットしました。
「お母さんが作ったデータのせいで、図書館で検索ができなかった」と娘に怒られることはなさそうです。