こんにちは。データ部AS・伊藤です。主に和装本を担当しています。
和装本のデータ作成の依頼を伺うとき、時々言われるのが「巻物がたくさんあるんですけど、だいじょうぶですか?」というご心配。
どうご懸念なのかお聞きしてみると、「何だかたいへんそうで」という、根拠のないような、でもわかるようなお返事。たしかに取り扱いはふつうの本のようにはいきませんが、データ作成については、じつはあまり苦労しません。というのは、経験から言えば、そうした案件で手にする巻物の90%以上が、20世紀以降に作られた複製資料だからです。ですので、書誌については、TRC MARCやネット上の書誌データベースのデータを参照できる場合が大半なのです。
もちろん、現代書であっても、たしかに巻物ならではたいへんさはあります。
奥付が付属資料のほうにあったり、巻物を入れた箱の内がわに貼られていたりすれば楽なのですが、やはりしばしば巻物の一番最後にあります。結果としてそこに情報があろうがなかろうがいずれにしろ、とにかくいったんは巻物を最後まで繰って巻末を見なければなりませんし、見終わった後はまた元に戻さなければなりません。
ひたすら巻物をくるくるくるくるしていると、それだけで時間がどんどん過ぎていきます・・・。
図書の歴史にかんする本で読んだ、巻子本(かんすぼん)から冊子(さっし)への移行ということの必然性を、強く強く実感せざるを得ません。
もっとも、洋の東西を問わず、最初の「本」は巻物のかたちで成立したわけで、書誌を記録するなどという蛇足は措いておいて、内容を読むということで言えば、巻物のほうが切れ目なくつづけて読み進めていけるのですから、生理的にずっと自然です。そのことを示しているものが、実はこの画面の右端にあります―そう、スクロールバー。
スクロールScroll、すなわち「巻物」です。別のページに移らずにスクローリングしながら切れ目なく読み進めていく感覚、これは巻物を手にした大昔の読者と共通しているはずなのです。
それを持っていなかったがために冊子に取って代わられた、「どこからでもアクセスできる」「どの部分も検索できる」という機能を与えられて、「巻物」がPCの画面のなかに再びよみがえってきているのです。