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2012年6月 8日 アーカイブ

2012年6月 8日

名前じゃないもの ~典拠のはなし~

家で本棚を眺めていたら、オモシロそうな本が目にとまりました。
家のものが買ってきた本のようです。
その本の著者は アイルランドの作家「ロード・ダンセイニ(Lord Dunsany)」。

毎日 人名・団体名の典拠ファイルを作成している私、
本の内容もさることながら 著者の統一標目が気になってきました。
そこで さっそく典拠ファイルを検索。

「ダンセイニ」が姓、「ロード」が名前かな、と予想していたのですが、
検索の結果、統一標目は 意外なことに...

  Dunsany,Edward John Moreton Drax Plunkett

ダンセーニ,エドワード・ジョン・モアトン・ドラックス・プランケット

名前かな、と予想していた「ロード」がどこにも見当たりません。
確かに本には「ロード・ダンセイニ」と書いてあったのに...。 
 
そこで、文学事典を確認することに。
すると、「集英社世界文学大事典」に「ダンセイニ卿」という見出しでこの作家が載っていました。 

ん... 「卿」?

もしや、と思い 今度は「新英和中辞典(研究社)」にあたってみたところ、

 「Lord 〔敬称として〕卿(きょう)」

そうです、「ロード・ダンセイニ」とは「ダンセイニ卿」という意味。
「ロード」は名前だと思いこんでいましたが、これは敬称だったのです。

敬称は名前そのものではありませんから 統一標目からは除きます。
でも、本に書いてある形(今回の例でいうと敬称を含んだ形)でも検索出来たほうが便利です。
そこで本に書いてある形は、記述形として作成しておきます。


典拠ファイルでは こうなっています。

統一標目  12000008029-0000  
Dunsany,Edward John Moreton Drax Plunkett

ダンセーニ,エドワード・ジョン・モアトン・ドラックス・プランケット

記述形   12000008029-0001  ロード・ダンセイニ


「ロード」のように 名前の一部のようにみえて敬称や称号だった、ということ
実はよくあるのです。
 
 
先ほど「ロード」を調べた「新英和中辞典」には...

サー(Sir)         :~卿
コント(Count)      :伯爵
バロン(Baron)      :男爵
バロネス(Baroness)  :男爵夫人

ほかにも

ジェネラル(General)  :大将、将軍
  メイジャー(Major)    :少佐
  
宗教関係では

ラビ(Rabbi)     :主にユダヤ教指導者の敬称として使用
シスター(Sister)  :カトリック修道女の称号
  
などなど。


国が変われば、もちろん言葉も変わるわけで、
例えば「伯爵」をあらわす言葉も、ドイツなら「グラフ(Graf)」になります。
また、国によっては、その国特有の敬称や称号というものもあります。

典拠の部署のメンバーは「名前にみえるけど名前じゃないもの」を
経験を積みながら覚えていきます。
世界中の敬称・称号をまとめた参考書があったらなあ... 
典拠メンバーの切なる願いです。

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