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「同」に注意!(和装本の責任表示(2))~ASで作成するデータについて~

こんにちは。データ部AS・伊藤です。主に和装本を担当しています。

前回
の最後に、名前そのものが「~著」「~撰」というひとの著作をあげてみましたが、実はもっとよく名前に使われる字で、しかもややこしいことになる文字があります。「同」という文字です。

「同」なんて役割表示がある? いえ、そういうものはないのですが、「同撰」「同輯」「同校」というように、役割表示の前につくかたちでよく登場します(「仝~」とも書きます)。どういう意味かというと、「一緒に~した」という意味です。

現代書で言えば、「共著」といった場合と同じような意味ですが、実はもっと厳密な使われ方をします。「同~」とあったら、それはここからここまでは誰が、ここからここまでは誰がという具合に分担が明確では「ない」場合に使われます。分担が明確な場合は、「同」をつけないか、あるいは「合~」と書きます。複数巻から成る著作で、校訂者がたとえば三人いた場合、どの巻も三人で校訂したなら「甲、乙、丙同校」となりますが、巻ごとに担当を分けているならば、「甲、乙、丙校」となるわけです。
ですから、現物に「同~」とあったら、著作全体にかかわるのであれば、必ずそのように転記しなければなりません。「同」の字を省いてしまうと、そのひとが著作に果たしている役割を正確に示せなくなることになってしまいます(ただし逆に、現物には「同~」とついてなくても、実際には分担なしに関与しているということはしばしばあります)。

なお、「同~」とあるのは基本的に複数のひとが一緒に何々したということですが、一人に対して「同」が使われている場合も例外的にあります。たとえば、『農政全書』という本では「徐光啓纂輯 張國維鑒定 方岳貢同鑒」という責任表示になっています。この場合は、「鑒定(かんてい)」については「張國維」のほうがメインで、「方岳貢」のほうは、「同(とも)に鑒(かん)す」ということで、「一緒に」ということではあるにしろ、サブ的に関与した、ということを示しているように思われます。

ともあれ、譚嗣同さんやら張堯同さんやら萬斯同さんやらいろいろいますので、名前の一部なのか役割表示の一部なのか、間違えないように注意が必要です。

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