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2016年11月18日

日本人が書いたアーサー王 ~分類・件名のはなし・70~

ここ最近、立て続けにある本の分類についてお問い合わせをいただいたので、今日はそれについてご紹介したいと思います。
 

 Q.『週刊新刊全点案内』1984号に掲載されていた、斉藤洋作の「アーサー王の世界」の分類が、K933となっているのはなぜですか?


なるほど、なるほど。疑問に思われるのもよくわかります。
この本は、児童文学者の斉藤洋さんが、アーサー王伝説として知られる物語を子ども向けに描いたファンタジーです。分類記号、K933の最初の「K」は、児童書を表す別置記号なのでこれはよいとして、問題となるのはそのあとの「933」ですね? 
日本人の斉藤洋さんが日本語で書いたのだから、日本の近代小説、物語を表す913.6になるのではないかしら? 現に、『週刊新刊全点案内』の次の号、1985号に掲載されている斉藤洋作の「サバンナのいちにち」はK913.6になっているし...。という疑問だと思います。ごもっとも。

さて、種明かしです。これは、TRC MARCにおける分類のルールとして、「子ども向きに翻案改作された民話・伝説・神話は、原話の国の文学として各言語の文学の下に収める」というものがあるためです。「子ども向き」というところがポイントです。

もう一点。アーサー王の原話ってなに? トマス・マロリーが書いた「アーサー王物語」のこと?? それなら、933.4と中世の英米文学の分類になるんじゃないの?? と思われた方はいませんか?
もちろん、トマス・マロリーの「アーサー王物語」を使って翻案改作した、ということがはっきりとわかれば、K933.4となるところですが、アーサー王伝説というものは、トマス・マロリーの「アーサー王物語」が完成する前、古くから語り継がれてきたものであると言われています。そういった成立年代のはっきりしない伝説が原話、ということになりますので、今回の斉藤洋作「アーサー王の世界」はK933という時代区分をしない分類になった、というわけです。


ご納得いただけましたか? いろいろと深い分類の世界、また疑問に思われることがありましたら、お気軽にデータ部までお問い合わせください。

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