本日は「週刊新刊全点案内」1989号の発行日です。
掲載件数は1124件でした。
*こんな本がありました*
「パリの福澤諭吉」
中央公論新社(2016.11)
福澤諭吉が文久遣欧使節団の一員としてパリに滞在した時に撮影された、一枚の肖像写真があります。あまり知られていないその写真を軸に、福澤が過ごしたパリでの日々を追った本です。
私たちが良く知っている福澤諭吉の顔といえば、やはり一万円札の肖像画ですよね。福澤といえば、誰もが知っている明治を代表する思想家。壮年期の貫禄たっぷりのあの顔を見るたびに、畏れ多い心持ちになります(それが一万円札であることも影響していそうですが)。
ですが、この本の表紙に載っている福澤はなんと、涼しげな目元の凛々しい青年武士。「福澤諭吉=一万円札の肖像画」と完全にインプットされているので、「このしょうゆ顔のイケメン武士が??」とびっくり。
さらに印象的なのがその表情。パリで撮影された写真にも関わらず、まるで自宅にいるかのようなリラックスした面持ち。遠い異国に来ている不安や緊張をみじんも感じさせないところが、うーん、さすがです。
本のなかで紹介されているエピソードはどれも興味深いのですが、特に目を引いたのが、福澤がフランスの「書庫(国立図書館)」を見学した話。ヨーロッパの旅で西洋文明の根源がどこにあるかを知りたかった福澤にとって、蔵書150万を有するヨーロッパ最大規模のフランスの「書庫」との出会いはどれほどの衝撃だったことでしょう。
帰国後に福澤諭吉が著した「西洋事情」には、ヨーロッパの図書館について、次のように書かれています。
「西洋諸国の都府には文庫あり。『ビブリオテーキ』と云う。日用の書籍図画等より古書珍書に至るまで万国の書皆備り、衆人来りて随意に之を読むべし」
福澤がパリの図書館を見学してから150年ほどたった現在。
もし、福澤が今の日本の図書館を見たら、果たしてどんな感想を抱くのでしょうか。