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2020年3月 9日

頭を抬(もた)げる

AS 伊藤です。主に和漢古書を担当しています。

前回、「避諱」という皇帝の名を避ける中国の習慣について書きました。以前に、役割標示のところで注意が必要な文字として「同」という字のことを取り上げましたが、皇帝などに関連してもう一つ注意が必要な文字として「奉」という字があります。
これも「同」と同じく単独で用いられるのではなく、「奉勅撰」「奉敕輯」というぐあいに使われるもので、皇帝・天皇の勅命を奉じて著述・編纂したということです。あくまでも誰それが「勅を奉じて」撰したのであって、皇帝自身の著作(勅撰)ということではない、ということをしっかり理解しておかなければなりません。なお、仏書でもよく「奉詔譯」というのが出てきますし、皇族や朝鮮の国王などの場合は「奉命撰」「奉旨撰」というぐあいになります。

現物では、しばしば「奉」のあと改行して「勅撰」が次の行の行頭にあることがよくありますので、注意が必要です。なぜそんなことになっているかというと、皇帝に関係する文字-「勅」とか「皇」とか、あるいは歴代皇帝の諡号(しごう)・廟号(びょうごう)、当代の王朝名などを書く時には、敬慎の意を示すために、その字の上を1・2字分空けるとか、行を改めて書くとかする慣習があるのです。
空格を設けるのを「闕字(けつじ)」、改行するのを「平出(へいしゅつ)」と言い、後者のほうがより敬意を示すことになりますが、さらにさらに敬意を示そうとすると、改行したうえで該当字を他の行の先頭より上に飛び出させる「擡頭(たいとう)」という形式も用いられたります。
ということで、清代の書物に付されている上奏文などでは、改行だらけで上辺がでこぼこになっているものなどもときどき目にすることがありますが・・・まあ読みやすいものではないですね。

ちなみに皇帝の著作については、漢籍目録では「乾隆三年御定」というふうに、年代+皇帝のものであることを示す役割表示のかたちで書くという決まりごとがあります。現物には必ずしもそう書いてあるわけではないので、NCRに沿って記述するとなると、適宜補記することになりますが、そもそもほんとうに皇帝本人の編著なのかアヤシイことも多いです。ということで、そうしたものは、ちゃんと調査・確認して、「勅撰」ではなく「何某奉勅撰」と記述することになります(乾隆帝なぞはわりとご本人のものであることも多いですが)。

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