本日の典拠のはなし、典拠班的には壮大なテーマ「統一形」について書いてみます。典拠班がどんな点に悩みながら「統一形」について検討しているか...そのポイント(のごくわずか)を紹介させていただきます。なんとチャレンジング!
前提として「統一形」がなぜ大事なのかをご説明します。
図書や資料に現れる様々な名称をまとめ、区別するのが典拠ファイル。それを辞書に例えるなら見出しにあたるのが「統一形」です。また、複数の表記がひとつの典拠IDでまとめられていても、MARC自体に入るのは統一形、または統一形+記述形(図書に表記された形)のみ。最高でも2つの形しか入りません。そのため、最も適切かつ周知された形を見出しにし、MARCに入れ込むべく検討が重ねられるのです。
また、配架の問題もあります。図書館の背ラベルは名称の先頭の文字から採用されることが多いので、統一形の先頭の文字は重要です。
(以下に例示した名称は架空のものも含みます)
例えば日本人名。
日本人名では、「姓名」の形をとっているかどうかに留意します。姓名の形なら「山田/太郎 ヤマダ,タロウ」、姓名でないなら「山田さんちの猫 ヤマダ サンチ ノ ネコ」のように、漢字形の区切り記号の有無が違うからです。では以下のお名前はどうなるでしょう?「山田アルファ」は「山田/アルファ」、「アルファ花子」は「アルファ」という姓は辞典にないので「アルファ花子」。では「はるのみかん」さんは?「ハルノ」姓は辞典にあるので「はるの/みかん」でよさそうですが、コピーライトに「Haru no Mikan」とあると、果たして「はるの」で区切ってよいのかと悩むことになります。
例えば西洋人名。
西洋人の統一形は、図書の表記そのままではありません。原綴の姓を先に出して、「King,Stephen キング,スティーヴン」のように整形します。学生時代の図書館オリエンテーションで「外国の人は名前をひっくり返して探してね」と習ったのを思い出します。沢山の人名を峻別するには姓で探すのが有効なのですね。さて、その姓です。2語のお名前ならほぼ迷いませんが、3語以上だと迷いどころ。「Smith,John Maynard」 か「Maynard Smith,John」か?どこが姓かの根拠を探してVIAF(バーチャル国際典拠)などを探ることになります。採り方によって名前の先頭1文字目(図書記号)も変わってしまうので責任重大です。ミャンマー人などのように姓をもたない人名もあるので、国籍にも留意します。
例えば、団体名。
団体の場合には、表記のバリエーションの他に、統一形のもとにその内部組織をまとめるという上下関係が加わります。
京都大学 ← 京都大学農学部
のように、2層の階層構造で名称をまとめます。それでは「京都大学探検部」は?「京都大学」の下にまとめるのか?まとめません。学校名を冠していても、サークルは単独で統一形とすると内規を決めました。名前に京都大学が付く、というだけで判断せず、その団体の構成員や管轄を慎重に判断して上下関係の有無を決定します。
団体名ではときに、図書の責任表示に現れない名称を統一形に採用することがあります。例えば
呉市海事歴史科学館 ← 大和ミュージアム
図書や資料類から団体の正式名称を探ります。そして同じ性質の団体の名称ならば統一形のつくり方が同じになるよう、ルールに従い整えます。
以下は博物館の例。
市川歴史博物館(市川市立) ← 市立市川歴史博物館
府中町歴史民俗資料館(広島県府中町立)
※町立・村立は都道府県名を付記
福岡県立美術館
( )があったりなかったり。これは「(自治体名)立」を過不足なく盛り込んで設置団体を明確にしつつ実際の名称と擦り合わせるためで、細かな整形ルールが存在します。
上に「ルール」「内規」と書きましたが、常々細かいと言われるデータ部の中でも、典拠班は特に細かい独自ルールを整備しています。変わった名称が出現するたびにどんな形が適切かの検討を重ね、ルール化しての今があります。イメージは、道なき原野の踏み跡、正解のないところになんとか道を拓いてここまできたような。典拠班の膨大なマニュアルを見ていると、ときに先輩方の「え!?何これどうしよう!!」という検討の声が聞こえるような気がします。